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「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」と監査責任者

はじめての内部監査責任者

「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」とは、品質マネジメントシステム(QMS)を含むマネジメントシステムの監査のための指針に関するJIS規格です。

これまでの内部監査責任者としてやってきたことを振り返ってみると、

  • 内部監査をやった形(記録、エビデンス)を作る。
  • 計画、実施、報告のパターン(ルーティーン)ができてくる。
  • (必要に迫られ)内部監査員の育成をはじめる。

ようになってきました。

そして、自分が内部監査責任者の仕事から離れる(配分を減らす)ために、

  • 内部監査を担当する部署を減らしていくようになる。
  • 次の内部監査責任者を育てる。

ことが必要になってきました。

そこで、「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」を利用して、内部監査責任者はどんなことするのかについて、説明していきたいと考えています。

ここでは、「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」の概要について説明します。

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「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」とは

「JISQ19011:2019マネジメントシステム監査のための指針」は、ISO9001品質マネジメントシステム(QMS)などのマネジメントシステム規格についての監査についての指針です。(タイトル通りです。)

監査のタイプは、下表の通り3つありますが、第一者監査(内部監査)と第二者監査(外部提供者や外部利害関係者)を対象にしています。

表1 監査のタイプ

第一者監査 第二者監査 第三者監査
内部監査

外部提供者監査

他の外部利害関係者による監査

認証審査/又は認定審査

法令、規制及び類似の監査

 

また、「JISQ19011:2019マネジメントシステム監査のための指針」は、以下の手引きとして使うことができます。

  • 監査プログラムのマネジメント
  • マネジメントシステム監査の計画及び実施
  • 監査員及び監査チ-ムの力量及び評価

適用範囲(適用する業務内容と対象者)

「JISQ19011:2019マネジメントシステム監査のための指針」は、QMSなどのマネジメントシステムの内部監査や外部監査(第二者監査)に適用できます。

以下のことについて、監査の手引きとして適用できます。

  • 監査の原則
  • 監査プログラムのマネジメント
  • マネジメントシステム監査の実施並びに監査プロセスに関わる人の力量の評価

監査の手引きを使う人として、

  • 監査プログラムをマネジメントする人
  • 監査員
  • 監査チ-ム

を含んでいます。

このブログで公開している品質マニュアルの対象である、20名規模のモノづくりメーカーであれば、

  • 内部監査責任者(品質管理責任者が兼務したり、内部監査員からリーダーを指名する場合もある。)
  • 内部監査員
  • 内部監査チーム(主担当者と副担当者の2名。工場などで対象部署の人数が多い場合には3名とすることもある。)

のイメージになります。

「JISQ19011:2019マネジメントシステム監査のための指針」の構成

「JISQ19011:2019マネジメントシステム監査のための指針」の規格構成について、説明します。

4 監査の原則

以下の、7つの原則について書かれていますが、各原則の説明は自社で使っている言葉を使ったり、具体的な例を加えるなどの工夫が必要です。

  • 高潔さ:専門家であることの基礎
  • 公正な報告:ありのままに、かつ、正確に報告する義務
  • 専門家としての正当な注意:監査の際の広範な注意及び判断
  • 機密保持:情報のセキュリティ
  • 独立性:監査の公平性及び監査結論の客観性の基礎
  • 証拠に基づくアプロ-チ:リスク及び機会を考慮する監査アプロ-チ
  • リスクに基づくアプロ-チ:リスク及び機会を考慮する監査アプロ-チ

内部監査は、被監査部署とのコミュニケーションがとれることが前提になりますので、コミュニケーションをとるために、各原則では何をしたらよいのか考えてみるとよいと思います。

品質マネジメントの7原則を合わせて検討してもよいと考えています。

5 監査プログラムのマネジメント(内部監査の計画)

内部監査の計画を作成・実施するために必要なことについて書かれています。

内部監査を回せるようになったら、3年程度のスパンで、内部監査をどの様に実施するか、そのために何を準備するか、実施に当たり計画に何を反映するかを事前に検討していくとよいと考えています。

「5 監査プログラムのマネジメント(内部監査の計画)」のポイントを列挙します。

5.2 監査プログラムの目的の確立(内部監査の目的)

  • 内部監査は、業務改善が主たる目的となると考えています。
  • 部署によるレベル差(例えば、目標設定、PDCAをまわせるかなど)が大きくなってくると内部監査の実施や監査結果を横並びで評価するのが難しくなってきます。

5.3 監査プログラムのリスク及び機会の決定及び評価(全社的な考慮事項)

  • 品質マニュアルや各業務規程の改訂内容と実施状況、大きな不具合などは、現状について確認(ヒアリング)するよう内部監査員に指示することもあります。
  • ISO審査(更新審査やサーベイランス)の結果も考慮します。
  • 力量不足(特にコミュニケーション、会話に問題がある場合)の内部監査員であって、内部監査を担当させざる得ないこともあります。この様な場合は、リスクとしてとらえるようにしています。

5.4 監査プログラムの確立(内部監査計画の作成)

  • 具体的には、内部監査責任者が内部監査計画を立てることになります。
  • 内部監査実施時期は、毎年同じ頃ですが、内部監査チームメンバーや課題や問題がある場所の内部監査をどのようにするかなど、前回の内部監査後からの状況を考慮するようにしています。

5.5 監査プログラムの実施(内部監査の実施)

  • 内部監査員には、各部署共通の監査ポイントと部署限定の監査ポイントを具体的に指示するようにしています。(内部監査員の力量も考慮します。)
  • 内部監査員の人数が少ない場合には、内部監査員の力量と負担(特に監査後の工数)を考慮し、内部監査責任者も内部監査を担当します。
  • 内部監査員の力量不足(特にコミュニケーション、会話に問題がある場合)でも、内部監査を担当させざる得ないこともあります。この様な場合は、リスクとしてとらえるようにしています。
  • 監査スケジュールの変更は、発生する前提で内部監査員に調整させています。
  • 最終的な内部監査のエビデンスとして、内部監査報告書とチェックリストを残すようにしています。この際、チェックリストは、次回以降の内部監査のヒントになるよう、できるだけありのままに記載するようにしています。
  • チェックリストを内部監査報告書と一緒に渡すことで、被監査部署の業務改善のヒントになればよいと考えています。

5.6 監査プログラムの監視(内部監査の進捗管理)

  • 不適合(軽微)は、監査中に監査責任者に連絡させ、被監査部署の同意を得ていることを確認しています。
  • 部署長によっては、必ず改善(是正)するために、観察事項や不適合として指摘するよう求めてくる場合もあります。
  • 残念ながら、ISO外部審査や内部監査で指摘されたことでも改善(是正)しない部署もあります。この場合、改善(是正)させることはできませんので、継続観察することにして記録には残すようにしています。

5.7 監査プログラムのレビュ-及び改善(内部監査の振り返り)

  • ある程度内部監査員同士でコミュニケーションがとれるようになると、反省会や困ったことを聞く場として、ミーティングを設定することがあります。
  • 内部監査員の力量差が出てしまうこともあり、実施する場合は参加者に配慮しています。
  • 内部監査終了後、内部監査員の評価を記録にまとめ、品質管理責任者には報告しています。(エビデンスを残す意味合いが強いです。)

6 監査の実施(内部監査の実施)

内部監査の実施に当たっては、「内部監査ガイド」にそって実施するよう内部監査員に指示しています。

必ず守ることとしては、以下の2点は繰り返し内部監査員に伝えるようにしています。

  • 内部監査の時間厳守(終了時間厳守)
  • 指摘する場合に「不十分」という言葉は使ってはいけない。例えば、規定等のルールに対して、実際どうだったのかを説明することを指示しています。
はかせ
はかせ

「不十分」とは、自分の基準で不十分と言っていることになります。残念ながらこの意味が伝わらない場合もあります。

Amazonへ:「ISO内部監査の取扱説明書

  • 内部監査は、最初の挨拶からはじまり、被監査部署のここ1年間の変化と現在の状況把握、前回のISO審査や内部監査の指摘事項(観察事項含む)が再発していないか、品質目標実施計画の進捗、部署メンバーの力量評価や教育・訓練実施状況までが第1段階です。
  • その後、被監査部署の業務内容について確認していきます。
  • 被監査部署とのコミュニケーションと限られた時間の中で記録等を効率よく確認していくことが内部監査員には求められます。
  • 内部監査責任者としては、これらを事前にどれだけ手当て(フォロー)できるかが重要になってきます。(チェックリストの見直しなど)

6.2 監査の開始

  • まずは、挨拶からです。

6.3 監査活動の準備

  • 内部監査責任者は、内部監査計画で動けるような計画を作ります。必要ならチェックリスト等の資料を作成、事前に内部監査員に配布する。
  • 内部監査員は、被監査部署の業務内容を業務規程の業務フロー程度は知識として知っておくことが必要です。

6.4 監査活動の実施

  • 内部監査であれば、初回会議は「よろしくお願いします」の挨拶からです。
  • 監査では、必ず確認しなければいけないことを優先します。
  • 記録の確認は、記録のある場所でまとめて確認した方がよいのですが、事前にチェックリスト等で何を確認するか確認しておくことが必要です。
  • 最終会議は、内部監査の結果を口頭で説明します。
  • 不適合については、被監査部署の同意を得ること、内部監査責任者への連絡が必須です。

6.5 監査報告書の作成及び配付

  • 書式は、内部監査責任者が準備しておきます。
  • 監査報告書の添削は、基本的にやっても1回だけとしています。(添削は、文章表現が日本語として分かりにくい場合がほとんどです。添削をくりかえすと自分の文章になっていくので1回だけとしています。)
  • 監査報告書は、内部監査責任者が確認し、品質管理責任者が承認することにしています。品質管理責任者からの確認事項は、監査責任者として内部監査担当者に伝えるだけにするようにしています。

6.6 監査の完了

  • 各部署の内部監査報告書が完成したら、マネジメントレビューのインプット情報とするために、「内部監査報告書(総括)」を作るようにしています。
  • ISO外部審査でも「内部監査報告書(総括)」を使います。

6.7 監査のフォロ-アップの実施

  • 内部監査後、3か月程度でフォローアップ完了とならない場合でも、年度内でフォローアップを完了させるようにして、マネジメントレビューのインプット情報としています。
  • 次年度にまたぐ場合もありますが、フォローアップをしていることの記録が残るようにしています。

7 監査員の力量及び評価

  • 全部署の内部監査後、1か月以内を目途に内部監査員の主担当者としての評価結果を、教育・訓練記録としてまとめています。
  • 力量評価の評価項目は作成可能ですが、力量認定は、内部監査を担当できる前提条件であり、実際に内部監査を担当させられるかどうかは、被監査部署とのコミュニケーションがとれるかを最優先で判断しています。

7.2 監査員の力量の決定

  • 内部監査員としての個人の行動(振る舞い)、ISOや実務に関する知識、内部監査員として必要な力量(聞き出す、記録を残す、結果をまとめる等)の個人としての力量
  • 監査チームのリーダーとして、不適合等を被監査部署に説明したり、監査メンバーに指示を出すなどの力量

監査員の評価(7.3、7.4.7.5について)

  • 以下については、個々の評価項目の合計点ではなく、総合的な判断で、内部監査員としての力量を評価しています。
  • 7.3 監査員の評価基準の確立
  • 7.4 監査員の適切な評価方法の選択
  • 7.5 監査員の評価の実施

7.6 監査員の力量の維持及び向上

  • 内部監査員の意思(力量向上の意思があるのか)を重視しています。
  • 新たな内部監査員候補者のスカウトなども考慮します。

附属書A (参考) 監査を計画及び実施する監査員に対する追加の手引

付属書Aは、より具体的な記述がありますので、一読されるとよいと思います。

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まとめ

「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」とは、品質マネジメントシステム(QMS)を含むマネジメントシステムの監査のための指針に関するJIS規格です。

これまでの内部監査責任者としてやってきたことを振り返り、自分が内部監査責任者の仕事から離れる(配分を減らす)ために、

  • 内部監査を担当する部署を減らしていくようになる。
  • 次の内部監査責任者を育てる。

ことが必要になってきました。

そこで、「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」を利用して、内部監査責任者はどんなことするのかについて、説明していきたいと考えています。

ここでは、「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」の概要について、以下の項目で説明しました。

  • JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」とは
    • 適用範囲(適用する業務内容と対象者)
  • 「JISQ19011:2019マネジメントシステム監査のための指針」の構成
    • 4 監査の原則
    • 5 監査プログラムのマネジメント(内部監査の計画)
      • 5.2 監査プログラムの目的の確立(内部監査の目的)
      • 5.3 監査プログラムのリスク及び機会の決定及び評価(全社的な考慮事項)
      • 5.4 監査プログラムの確立(内部監査計画の作成)
      • 5.5 監査プログラムの実施(内部監査の実施)
      • 5.6 監査プログラムの監視(内部監査の進捗管理)
      • 5.7 監査プログラムのレビュ-及び改善(内部監査の振り返り)
    • 6 監査の実施(内部監査の実施)
      • 6.2 監査の開始
      • 6.3 監査活動の準備
      • 6.4 監査活動の実施
      • 6.5 監査報告書の作成及び配付
      • 6.6 監査の完了
      • 6.7 監査のフォロ-アップの実施
    • 7 監査員の力量及び評価
      • 7.2 監査員の力量の決定
      • 監査員の評価(7.3、7.4.7.5について)
      • 7.6 監査員の力量の維持及び向上
    • 附属書A (参考) 監査を計画及び実施する監査員に対する追加の手引
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