「内部監査規定(リンク先はこのブログの内部監査規定です)」と内部監査ガイドを使って、内部監査についての教育をはじめます。
- 内部監査ガイドは、Amazon Kindle:「ISO内部監査の取扱説明書」、このブログでは「内部監査ガイド」のページにまとめています。
いよいよ内部監査がはじまります。
内部監査の実施方法とは、面談、記録、事実確認のことです。

面談、記録、事実確認は、簡単そうですが意外に難しいというか奥が深く、経験を積んでもこれがゴールというのが無いようにも思います。
ここでは、内部監査の面談で、内部監査員(リーダー、メンバー)が面談で行ってはいけないことについて教育します。
内部監査員育成の登場人物を簡単に紹介します。

内部監査責任者の「はかせ」。社内ではISOの人といわれるtこともありますが、博士(工学)でもあります。

社会人経験は浅いものの知らないことにも前向きに取り組む「レイ」さん。上司から推薦された内部監査候補者。

社会人経験の浅いレイさんと同期の「ソラ」さん。途中から内部監査員教育に参加予定です。
内部監査の実施方法:面談
内部監査の面談では、質問して、回答を聞いて、回答の記録などを確認します。
面談での観察は、回答の様子、記録などを提出する様子、監査員が回答や記録などを確認している時の様子などを、さりげなく見たり聞いたりして不自然さがないか注意するイメージです。
ここでは、内部監査員(リーダー、メンバー)が、面談で行ってはいけないことについて説明します。
内部監査員(リーダー、メンバー)は、自分が監査される立場になり、以下について想像してみることが重要です。

なお、以下の内部監査員が面談で行ってはいけないことは、順番があるわけではありません。
内部監査員(リーダー、メンバー)には、面談で行ってはいけないことがあることを知ることからはじめるように指導しています。
しゃべり過ぎない
内部監査員が話している間は、被監査者からの情報は入ってきません。
内部監査員が話しているのに、話をさえぎったりして話をはじめることはないので、監査員としては、話をしながら相手の様子も観察することがポイントです。

話を聞いてくれるからといって、その話が相手にとって有意義であるとは限りません。
話を聞いているだけで監査時間が過ぎていくなら、監査される時間が減るだけですし、有意義な内部監査にならない可能性が増えていくだけなので、しゃべり過ぎないように意識しています。
論争しない
内部監査は、議論(意見を戦わせること)の場ではありません。
内部監査は、監査対象部署の業務改善に役立つことを目的としているのであり、どうするかについては、監査対象部署が考えることです。
内部監査員は、監査にきたことを忘れないことが重要です。
知ったかぶりをしないこと
内部監査員が知ったかぶりをすると、それを聞いた方は本当は知らないのだということを見抜くものです。
内部監査員は、常に自分の力量や経験を過信したり、有能であると慢心しないようにします。
知ったかぶりは、相手に知識の程度を知られ、軽視されるきっかけとなります。こうなると、業務改善の役に立つ内部監査は期待できず、形だけの内部監査になってしまいます。
時間に遅れないこと
社会人としても同様ですが、内部監査員は時間に遅れないこと、時間を守ることが必須です。
内部監査員が時間に遅れることは、監査を受ける側からすれば、不快感や不信感をもつ理由の1つとなってしまいます。
内部監査員であっても、自分の本来業務と兼務だと思います。時間に遅れてしまうような突発的な状況については、事前に検討しておくことが重要です。

例えば、内部監査の時間については、監査員の都合で送れる場合でも、内部監査終了時間は守ります。
相手を上司の面前で批判しないこと
内部監査で批判とまではいかなくても、指摘等をしなければならない場合があります。
この時、相手の上司のいる前で、指摘等をしないようにします。
内部監査員は、上司がその場にいるいないに関わらず、あるいは、監査対象部署長に指摘等をする場合には、言葉を選び、丁寧な言葉で説明するようにします。

内部監査員には、内部監査はやさしい言葉で、きちんと監査するように伝えるようにしています。

なお、批判については、そもそも内部監査で批判や批判的なことは言わないことが必要です。発言について迷ったら内部監査は誰のためにやっているのか、内部監査員の役割は何かを思い出すようにしています。
他部署の問題を引合いにださないこと
内部監査は、あくまでも内部監査対象部署の範囲のことだけを対象にします。
内部監査員は、複数の部署の内部監査を経験していきますので、他部署の情報を知ることになります。
しかし、内部監査では、他部署の状況を例に、説明や指摘などをすることは厳禁です。

仮に、内部監査で他部署の問題点について話してしまうと、話した相手は「他の部署の内部監査で自分の部署の問題点についても同じように言われている。」と思い、口を閉ざしてしまいます。
監査員が行っている方法を引合いに出さないこと
内部監査員自身が行っている方法などを対策案の1つとして話してしまうと、内部監査を受ける側は、内部監査員個人の自慢に聞こえたり、反発感のようなマイナスの印象をもってしまいます。
内部監査員は、コンサル的なことや提案をしないことが原則です。

コンサルや指導になってしまうかどうかグレーゾーンで、具体的な方法を教えなければならないような場合もあります。
内部監査責任者であれば、そのあたりの判断が可能ですが、監査リーダーとしては、そのような場合には監査責任者の判断を仰ぐのが一番です。
社内規定に適合していれば、その活動を批判してはならない
内部監査員としては、その活動状況や事象が、社内規定に適合しているのであれば、その活動を批判してはいけません。
仮に、社内規定が間違っているのであれば、間違っている社内規定のままであることが問題なのであって、社内規定通りにやっている内部監査対象部署の問題ではないということです。
このような場合には、監査リーダーは、活動状況について客観的に記録し、監査責任者に報告します。
面談中に監査チームメンバー同士の意見の不一致を見せないこと
内部監査を、監査リーダーとメンバーの2名以上のチームで行う場合、監査チーム内での意見の不一致などは、監査対象部署には見せないようにします。
監査メンバーは監査リーダーに自分の意見を言うことじたいはよいのですが、監査リーダーの意見と違う場合には、メンバーの意見を聞いてもリーダーが判断することを原則とします。

監査チームメンバー間の意見の不一致を、監査対象部署に見せないようにする理由は、逆の立場になってみるとあきらかです。
監査リーダーとメンバーとで意見不一致があったとしても、それを監査対象部署の前で明らかにすることは、監査チームに不信感をもつ1つの理由となります。
参考:内部監査員候補者をスカウトする時に重視すること
内部監査員候補者をスカウトする際に重視していることは、
コミュニケーション能力
です。
内部監査員のコミュニケーションを重視している理由は、
- 内部監査の目的は、監査対象部署の業務改善に役立つこと
- 内部監査では、監査員(リーダー、メンバー)は、監査対象部署の部署長と直接話をすること
だからです。
内部監査でのコミュニケーションは、
- 内部監査対象部署の部署長やメンバーに警戒されず、素直に話をしてもらえるか
に尽きると考えています。
例えば、
- 内部監査対象部署の部署長やメンバーに、内部監査員は、不適合や観察事項をみつけるのが仕事だから注意しよう、質問にだけ最小限の回答をしよう。
といった対応とられてしまうと、
- 形式的な内部監査(形だけの内部監査)
になりがちです。

内部監査を受ける側が思っているほど、内部監査員の権限は強くありませんし、強制力のようなものもありません。
安心して話してもらえる内部監査員には、次のことが必要です。
- 丁寧な言葉で話す。(敬語を使うという意味ではありません。)
- 上から目線にならない。(日常的な仕事での態度が、内部監査の場では感じ取られてしまいます。)
- 内部監査の立場で話ができる。(主観が入らない。内部監査と個人を明確に意識して話ができる。)
結局、内部監査は、監査員と監査対象部署とのコミュニケーションの1つです。
良好なコミュニケーションをとることができれば、実りある(実務でも役に立つ)内部監査になると考えています。
まとめ
「内部監査規定(リンク先はこのブログの内部監査規定です)」と内部監査ガイドを使って、内部監査についての教育をはじめました。
内部監査では面談しながら、記録を録ったり、事実確認やその説明などを行います。
ここでは、内部監査の面談で、内部監査員(リーダー、メンバー)が面談で行ってはいけないことについて、以下の項目で説明しました。
- 内部監査の実施方法:面談
- しゃべり過ぎない
- 論争しない
- 知ったかぶりをしないこと
- 時間に遅れないこと
- 相手を上司の面前で批判しないこと
- 他部署の問題を引合いにださないこと
- 監査員が行っている方法を引合いに出さないこと
- 社内規定に適合していれば、その活動を批判してはならない
- 面談中に監査チームメンバー同士の意見の不一致を見せないこと
- 参考:内部監査員候補者をスカウトする時に重視すること