「内部監査規定(リンク先はこのブログの内部監査規定です)」と内部監査ガイドを使って、内部監査についての教育をはじめます。
- 内部監査ガイドは、Amazon Kindle:「ISO内部監査の取扱説明書」、このブログでは「内部監査ガイド」のページにまとめています。
内部監査は、不適合や観察事項を指摘するために行うわけではありませんが、内部監査員は、不適合や観察事項と判断するための基準を意識していることが必要です。
ここでは、内部監査員(リーダー、メンバー)が、不適合や観察事項の言語化(口頭説明や文書化)のポイントについて教育します。
不適合を例に説明しますが、観察事項についても同様です。
内部監査員育成の登場人物を簡単に紹介します。

内部監査責任者の「はかせ」。社内ではISOの人といわれるtこともありますが、博士(工学)でもあります。

社会人経験は浅いものの知らないことにも前向きに取り組む「レイ」さん。上司から推薦された内部監査候補者。

社会人経験の浅いレイさんと同期の「ソラ」さん。途中から内部監査員教育に参加予定です。
内部監査の不適合の言語化
内部監査で不適合を検出した場合、言葉で説明し、文書化することが必要になります。
ここでは、内部監査の不適合について言葉にしたり文書するポイントや不適合の記述例について説明します。
なお、不適合を言葉にしたり文書化することを、不適合の言語化ということにします。
内部監査の不適合を言語化する際のポイント
内部監査の不適合を言語化する際のポイントは次の3点です。
- 事実関係を的確に述べ、監査員の意見や推測を含めない。
- 監査基準(不適合の根拠)を明確にする。
- 監査基準と事実との差(違い)を明確にする。
言語化のポイントは、不適合と判断する際のポイントと同じことでもあります。
不適合と判断した場合には、不適合と判断した事象について、次の3点が明確になっていることが必要です。
- 要求事項:監査基準の該当する要求事項(品質マニュアルやISO関連規定などのルール)
- 不適合の状態:不適合が発生している状態(不適合となっている状態を具体的に明確にする。)
- 監査証拠:不適合を裏付ける証拠(客観的な証拠、エビデンス)
記録や業務の実施状況を言語化した例を示します。
- 悪い例:最終検査で検査者が限度見本を使用していなかった。
- 良い例:品質工程図では、最終検査で限度見本を使用することになっているが、製品Aの最終検査において、検査員B氏が限度見本を使用していなかった。

この例で、何が悪いのか、どうして良いのかについて考えてみてください。
指摘される聞く側の立場になって考えてみるとわかりやすいかと思います。
不適合の記述例
不適合の記述例をいくつか紹介します。

自分だったらどのように言語化するか、言葉で説明し、文章に表すか考えてみてください。
また、「・・・不十分です。」と指摘することが、なぜ悪い例となるのか考えてみてください。
不適合記述例(その1)
言語化した結果:
- 成型不良で社内不適合が発生していますが、作業日報にその内容が記入されていませんでした。
悪い点:監査基準が不明確です。
言語化の例:
- A規定には、成形不良で社内不適合が発生した場合には、作業日報にその内容を記入することになっています。
- しかし、すべての作業日報に記録されていませんでした。
不適合記述例(その2)
言語化した結果:
- 不適合品に「不適合品識別票」が付いておらず、明確に分かれていませんでした。
悪い点:監査証拠が不明確(事実)です。
- B規定には、不適合品については「不適合品識別票」を添付し、不適合品置き場に置くことになっています。
- しかし、場所Cに置かれていた不適合品には「不適合品識別票」が添付されていませんでした。また、場所Cの不適合品置き場に置かれていませんでした。
不適合記述例(その3)
言語化して結果:モーター修理品の受入検査基準があいまいでした。
悪い点:あいまいと判断する根拠が不十分です。
- ISO9001要求事項の8.1c)2)では、その製品の合否判定基準を明確にすることが要求されています。
- しかし、モーター修理品の受入検査基準を確認したところ、検査項目Dについての合否判定基準が決められていませんでした。
不適合記述例(その4)
言語化の結果:・・・の処理が不十分でした。
悪い点:不十分という言葉は監査員の意見
- 何が、どう不十分なのか、具体的な事実の指摘が必要です。
- しかし、不十分と判断したのは監査員の主観(意見)であり、客観的で具体的な事実ではありません。

不適合について言葉で説明したり、文書化することは、客観的な事実に基づき判断し言語化している場合には大きな問題にはなりません。
内部監査の目的を忘れず、内部監査員としての立場で、客観性を保つことができるように日々の業務の中でも注意して身に着けたいものです。
まとめ
「内部監査規定(リンク先はこのブログの内部監査規定です)」と内部監査ガイドを使って、内部監査についての教育をはじめました。
内部監査は、不適合や観察事項を指摘するために行うわけではありませんが、内部監査員は、不適合や観察事項と判断するための基準を意識していることが必要です。
ここでは、内部監査員(リーダー、メンバー)が、不適合や観察事項の言語化(口頭説明や文書化)のポイントについて、以下の項目で説明しました。
- 内部監査の不適合の言語化
- 内部監査の不適合を言語化する際のポイント
- 不適合の記述例
- 不適合記述例(その1)
- 不適合記述例(その2)
- 不適合記述例(その3)
- 不適合記述例(その4)