ようやく暑さも落ち着いたころ、間もなく定年を迎えるとある会社の品質管理責任者と話をしていると、

社長がEMSも取らなければだめだと言い出したらしい。

EMSをとる理由はなんですか?

理由はわからないのだけれど・・・。
といった感じでとまどっているようです。
QMSの認証維持については大きな問題はないのですが、突然のEMS認証取得には不安があるようです。
これからEMS(ISO14001)の認証取得をとるとなると、2026年発行予定のISO14001:2026の要求事項を考慮する必要もあり、現状確認と何が問題なのかを整理してみることにしました。

なお、この記事の内容は架空の会社を想定しています。
ご了承ください。
現状確認:QMS(ISO9001)の運用
2025年の夏現在、小規模のモノづくり会社ながら、工場や会社組織の統廃合などもあり、ISO9001:2015の要求事項とISO規定類の整合性をとり、ここ数年で内部監査、ISO外部審査、マネジメントレビューを回せるようになってきたところです。
2026年9月発行を目途に現在改訂作業がすすめられているISO9001:2026には、JIS版が出てから対応する方針で、品質マニュアルとISO関連規定の全体的な見直しをすすめているところです。
品質管理責任者としては、内部監査やISO外部審査の結果から、形だけのQMSからISO9001:2015でめざすあるべき姿のQMSへのレベルアップを考えていたようです。
そこに、突然、EMSの認証取得もすることになり、悩ましい気持ちになったようです。
QMSとEMSの違い
QMS(品質マネジメントシステム)とEMS(環境マネジメントシステム)の違いについて聞かれると、次のように答えています。
QMSの品質は経営とほぼ同じ意味合いで、ISO9001の要求事項をどの様に実現するかは、自分で決めて運用します。
EMSは、ISO14001の要求事項をどの様に実現するかは自社で決めますが、この際、拠点のある場所を管理する自治体のルール(環境に関する法律など)を含めて、環境マニュアルやISO規定類を定め運用します。
簡単にいうと、ISO審査において、QMSは自社で作ったルールを守ればよいのに対し、EMSは環境に関する法令遵守が含まれます。
とある会社のEMS外部審査に同席させて頂いた時に、国の法令と拠点のある自治体のルールとで不整合があり、とある事象について、審査員と会社側とで意見が分かれたことがありました。
- 審査員は、国の法令が自治体のルールよにも優先して守るのが当然だから不適合と主張
- 会社側は、国の法令を受けて自治体が定めたルールなので、拠点のある自治体のルールを守っているのだから不適合ではないと主張

最終的に指摘とはならなかったのですが、法律の運用実態について学ぶよい経験となりました。
EMSの認証取得のため何をする
EMSの審査機関による審査までにすることは、
- EMSの認証取得体制構築
- 環境方針・目標などEMS(環境マネジメントシステムの構築)
- 環境マニュアルとISO関連規定の作成(文書化)
- 審査機関の選定、審査申し込み
があります。
専属で準備を進められるのであれば、半年程度で審査申し込みまでもっていけるかもしれませんが、通常業務と兼務の場合には、頑張っても1年程度はみておく必要があります。
ISO9001:2026は、2026年9月発行を目途にすすめられていますが、ISO14001:2026は、2026年の早い時期に発行されるようです。
- ISO9001:2026は、2015版とくらべ大きな変更はないようです。
- ISO14001:2026も同様のようなので、準備をすすめることはできます。
しかし、これまでの経験から、QMSの認証取得をしていても、EMSにはQMSと似て非なるものです。
実際に、QMSを利用できる部分は、
- QMSのISO規定類で共通化できるものは共通規定とする。
ぐらいではないでしょうか。
品質管理責任者だからEMSの責任者もできる?
小規模の会社の場合、品質管理責任者だからEMSの責任者も兼務することになるのでしょうが、これは品質管理責任者の力量により大きく違ってきます。
内部監査の実施や内部監査員の教育も必要になります。
ISO事務局のメンバーもEMSの審査に臨めるようにするまでの期間はもちろん、認証取得後の運用も試行錯誤が必要になると考えています。
間もなく定年を迎える品質管理責任者の方は、いろいろと思うこともあり、かといって自分でできることも限られるため、悩ましい気持ちになっていたようです。
まとめ
管理責任者として取り組んできたQMSの認証維持については大きな問題はないのですが、突然のEMS認証を取ることになると聞けば不安を感じるようです。
EMSもQMSと同じマネジメントシステム規格ではありますが、QMSを自社ルールによるモノづくりの仕組みとすれば、EMSはモノづくりの環境に関連する法令遵守の仕組みです。
2026年発行予定のISO14001:2026の要求事項も考慮する必要もあり、現状確認と何が問題なのかについて、以下の項目で説明しました。
- 現状確認:QMS(ISO9001)の運用
- QMSとEMSの違い
- EMSの認証取得のため何をする
- 品質管理責任者だからEMSの責任者もできる?

本社と工場の立地がわかれている場合、工場がEMSの認証取得をすればよいと思うのですが、本社もとなると確かに悩ましいのかもしれません。