ISO9001:2015の改訂とは別の流れですが、2024年2月23日、QMSなどのマネジメントシステム規格(MS規格)要求に「climate change(気候変動)」について追加することが決まりました。
審査機関はさておき、ISO9001認証取得組織(会社)の立場では、大きな影響はなさそうですが、今後どうなるかについては審査機関からの説明を待つことになりそうです。
ここでは、気候変動についてのMS規格への追加内容とQMSや品質マニュアルへの影響について説明します。
MS規格への「climate change(気候変動)」追加について
気候変動について追加されるマネジメントシステム規格の箇条は、以下の2つです。
- 4.1 組織及びその状況の理解
- 4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
それぞれの追加内容は、以下の通りです。
「4.1 組織及びその状況の理解」と気候変動
「4.1 組織及びその状況の理解」に追加される原文を意訳すると、
組織は、気候変動が関連する問題であるかどうかを判断しなければならない。
という1文が追加されています。
英文では、以下の通りです。
The organization shall determine whether climate change is a relevant issue.
出典:この記事の参考リンクのISO/TC 176/SC2の記事
「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」と気候変動
「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」に追加される原文を意訳すると、
注記:関連する利害関係者は、気候変動に関する要求事項を持つことができる。
という1文(注記)が追加されています。
気候変動について追加されるMS規格
現時点で、気候変動について追加されるMS規格はこのブログで扱っている以下の規格を含め31あり、現在開発・改訂中の全ての規格にも適用されることになっています。
- ISO 9001:2015(品質マネジメントシステム-要求事項)
- ISO 14001:2015(環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引)
- ISO/IEC 27001:2022(情報セキュリティマネジメントシステム-要求事項)
余談ですが、以下の鉄道に関する規格に興味を覚えました。
- ISO 22163:2023(ISO 9001:2015および鉄道分野での適用に関する特定要求事項)
QMS要求事項への気候変動追加について
例えば、QMSの「4.1 組織及びその状況の理解」と「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」に気候変動について考慮するとは、具体的にどのようなことなのか考えてみます。
以下、私がQMSや品質マニュアルに「気候変動」を組み込もうとしたらどうするかを考えてみた私見について説明します。
気候変動(climate change)とは
気候変動(climate change)のISOとしての定義は、今後明確になっていくでしょうし、ISO外部審査の場でも説明されると思いますので、ここでは一般的な意味について調べてみました。
気候なので気象庁の気候変動についての説明を読んでみると、気候変動の要因は2つあります。私の理解した内容は、次の通りです。
- 自然の要因は、大気自身に内在するもの、海洋の変動、火山の噴火、太陽活動の変化などがあり、特に地球表面の7割を占める海洋の影響が大きい。地球規模の天候の様なイメージ。
- 人為的な要因は、人間活動に伴う二酸化炭素や微粒子の増加、森林破壊などがある。影響範囲が国境を越えている地球規模の環境破壊のイメージ。
気候変動の詳細は、以下の気象庁のページをご参照ください。
いずれにしても、気候変動という言葉の持つイメージが大きすぎて、特にこのブログで対象としている20名規模のモノづくり会社との関係について想像してみましたが、漠然としすぎてイメージできませんでした。
気候変動を追加することによるMS規格認証への影響
参考リンクのIAFの記事には、気候変動を追加することによるMS規格認証への影響についても触れています。
意訳すると、MS規格のISO改正プロセスを考慮すると、以下の通り改正されたISO認証書を発行する必要はないようです。
- 各MS規格の発行年は変更されない。
- 認証されたMSの適用範囲に変更がない。
- 認証されたMSの有効性に重大な影響がない。
- 新たな要求事項により、認証取得組織が最終的に実施する方法及び措置は、将来的に他の文脈の要求事項が変更された場合に適用される方法及び措置と類似している。
QMSとして気候変動をどの様に捉えるか
これまで述べてきたことを踏まえて、品質マニュアルの「4.1 組織及びその状況の理解」と「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」において、気候変動をどの様に扱うか考えてみて思いついたことを列挙します。
- 気候変動とは地球規模の現象なので、気候変動が1つの会社(20名規模のモノづくりメーカー)に与える影響を考えてみても漠然としすぎていてイメージできない。
- 気候変動による影響で、間接的に、1つの会社に影響を与えることは想像できる。例えば、環境破壊防止のために原料や輸送費などのコストアップによる影響を受けるなど。
ここで視点を変えてみます。
- 環境破壊防止や原料・輸送費等のコストアップは、すでに、QMS(品質マニュアルの4.1と4.2)で考慮している。
- ということは、品質マニュアル等に気候変動と改めて記載するまでもなく、すでに気候変動について考慮していることになる。
どうしても、気候変動という言葉を品質マニュアルなどに反映したいというのであれば、次のような方法もありそうです。
- マネジメントレビューのインプット情報に「気候変動」という言葉を入れる。
- 品質マニュアルの最初の部分や品質方針に地球環境とか含めていれば、「気候変動は地球環境に含まれている」という説明もできそうです。
ISO審査で気候変動のイメージを社長に聞くのはありかもしれませんが、内部監査で気候変動について質問すると、一般的なイメージを聞いたり、実際には考慮していることを監査員側が説明するようなことなりそうなです。
私はISO審査員ではありませんが、QMSのISO審査における「気候変動」は、会社としては意識していないかもしれませんが考慮されていると思われますので、それを聞き出す審査側の考慮事項が増えるイメージです。
参考リンク
この記事では、以下の記事を参考にしています。
ISO/TC 176/SC2から
IAF(International Accreditation Forum, Inc)から
まとめ
ISO9001:2015の改訂とは別の流れですが、2024年2月23日、QMSなどのマネジメントシステム規格(MS規格)要求に「climate change(気候変動)」について追加することが決まりました。
今後どうなるかについては審査機関からの説明を待つことになりますが、ISO9001認証取得組織(会社)の立場では、大きな影響はなさそうです。
ここでは、気候変動についてのMS規格への追加内容とQMSや品質マニュアルへの影響について、以下の項目で説明しました。
- MS規格への「climate change(気候変動)」追加について
- 「4.1 組織及びその状況の理解」と気候変動
- 「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」と気候変動
- 気候変動について追加されるMS規格
- QMS要求事項への気候変動追加について
- 気候変動(climate change)とは
- 気候変動を追加することによるMS規格認証への影響
- QMSとして気候変動をどの様に捉えるか
- 参考リンク