プロジェクトマネジメントの事実上の世界標準、教科書ともいえるPMBOK®ガイドの第7版が発行されました。
近年のテクノロジーの進歩や市場の変化に対応すべく、第7版では内容が再構成されるなど大幅な改訂となっています。
ここでは、PMBOK®ガイドの概要と、PMBOK®第7版の主な変更点について説明します。
PMBOK®ガイドとは
PMBOK®は「Project Management Body of Knowledge」ガイドのことで、「ピンボック」と呼ばれています。
- 日本語では「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」
PMBOK®ガイドは、プロジェクトに実際に携わる人が、ベストプラクティスを用いて、仕事(プロジェクト)に価値をもたらすための重要なリソースとなってきました。
近年、テクノロジーは急速に進化し、これに伴い市場も変化しています。このため、組織(会社)や実務家は、これまで以上に迅速にこれらの変化に対応することが求められています。
PMBOK®ガイド第7版では、これまで以上に柔軟に、実務家が手掛けているプロジェクトを管理して、想定した(期待した)成果を実現するためのアウトプットを提供することを支援する必要があります。
PMBOK®ガイド第7版では、「プロジェクトマネジメントの標準」が改訂され、プロセスグループや知識エリアの代わりに、標準とガイドのパフォーマンスドメインに原則ベースの構造を採用することで、柔軟性などの要求をサポートしています。
PMBOK®ガイドの特徴を列挙します。
- プロジェクトマネジメント規格は、米国規格協会(ANSI)の指定を受けた文書です。PMBOK®ガイドは、この規格を適用するための枠組みを提供するものです。
- プロジェクトの成果物だけに焦点を当てるのではなく、プロジェクトの成果にも焦点を当てることを支援しています。
- 次の版では、開発アプローチのすべてを反映させる予定ですが、どれかを優先することはありません。
- プロジェクトの特性に合わせて開発手法やプロセスを調整するための具体的な検討事項も提示しています。
PMBOK®ガイド7版の主な変更点
PMBOK®ガイド第7版の改訂内容は、次の様にこれまでの改訂に比べ大きなものとなっています。
- 内容を再構成
- プロジェクトマネジメントのWhatとWhyをまとめた原則ベースの構造を導入
以下、PMBOK®ガイド第6版のから第7版への改訂内容を簡単に紹介します。
全体的なアプローチ(Overall Approach)
規格はプロセスから原則へと移行しています。
プロジェクトマネジメントの12の原則(The Standard for Project Management)は、開発アプローチに関わらず、プロジェクトマネジメントの実務者の行動や振る舞いを導く一連のステートメントを中心に構成されています。
- 考え方、行動、振る舞いの指針となる原則であり、プロジェクト・デリバリー、アジャイル、リーン、顧客中心設計などの知識体系に反映されています。
- 【第6版】記述的ではなく、規定的でした。
- 【第6版】何を、なぜではなく、どのようにするかに重点を置いていました。
設計の基礎(Basis for Design)
知識分野から8つのプロジェクト・パフォーマンス・ドメインに移行しています。
プロジェクトの成果を効果的に実現するために重要な関連活動のグループとして定義されています。
- 相互に依存する活動領域のドメインに、パフォーマンスの成果と、一般的に使用されるツール、テクニック、アーティファクト、フレームワークの概要を記載し成果物に加え、プロジェクトの成果にも焦点を当てています。
- 【第6版】特定のプロセスが、ツールや技術を用いてインプットをアウトプットに変換するプロセスに焦点を当てており、コンプライアンスを重視した方向性を持ちます。
プロジェクト環境(Project Environment)
プロジェクト環境(内部及び外部)は、社内外のインフルエンサーに焦点を当てたものです。
従来通りです(変更がありません)。
プロジェクトの適用(Project Application)
「【第6版】ほとんどのプロジェクト、ほとんどの場合」から、「すべてのプロジェクト、すべての場合」に移行しています。
- 予測型、伝統型、適応型、アジャイル型、ハイブリッド型など
- (predictive, traditional, adaptive, agile, hybrid, etc.)
対象者(Target Audience)
プロジェクトマネージャーのみならず、プロジェクトに関わる全ての人、特にチームメンバーとチームの役割に焦点が当てられています。
- プロジェクトリーダー、スポンサー、プロダクトオーナーなど、チームメンバーやチームの役割に特化したプロジェクトに関わるすべての人
- 【第6版】主にプロジェクトマネージャー
変更の度合い(Degree of Change)
バリューデリバリの全体像を反映した原則主義に変更されました。
- 【第6版】旧版をベースにした段階的な改訂でした。
ツールとテクニック(Tools and Techniques)
「モデル、メソッド、アーティファクト」と題した新しいセクションに、ツールとテクニックのリストが追加されています。
- プロジェクトタイプ、開発アプローチ、産業セクターごとに、これらのツールやテクニックを適用する方法に関する追加コンテンツが、デジタルプラットフォームであるPMIstandards+™で提供されています。
テーラリングガイダンス(Tailoring Guidance)
テーラリングとは、プロジェクトマネジメントのアプローチ、ガバナンス、プロセスを、与えられた環境や作業に適したものに意図的に変更することです。
- テーラリングに関する具体的なガイダンスを提供しています。
- 【第6版】テーラリングへの言及はありますが、具体的なガイダンスはありませんでした。
まとめ
プロジェクトマネジメントの事実上の世界標準PMBOK®ガイドの第7版が発行されました。
PMBOK®ガイド第7版は、近年のテクノロジーの進歩や市場の変化に対応すべく、内容が再構成されるなど大幅な改訂となっています。
ここでは、PMBOK®ガイドの概要と、PMBOK®第7版の主な変更点について以下の項目で説明しました。
- PMBOK®ガイドとは
- PMBOK®ガイド7版の主な変更点
- 全体的なアプローチ(Overall Approach)
- 設計の基礎(Basis for Design)
- プロジェクト環境(Project Environment)
- プロジェクトの適用(Project Application)
- 対象者(Target Audience)
- 変更の度合い(Degree of Change)
- ツールとテクニック(Tools and Techniques)
- テーラリングガイダンス(Tailoring Guidance)