ISO9000では、特に人が関係しているミスはヒューマンエラーと呼ばれています。モノづくりに限らず、会社の規模や業界に限らずミスは多かれ少なかれあるものです。QCD(品質、コスト、納期)を守るために日々苦労しているケースも多いと思います。
ヒューマンエラーは、人はミスをする以上、人が関係しているミスをゼロにすることは難しいことが知られています。
そこで、ミスを減らすためには、「ミスが起きたから今後同じミスをしない。」と考えるのではなく、「ヒューマンエラーによるミスは発生する。」ことを前提として考えることがポイントです。
そして、品質・コスト・納期のバランスを見ながら、ミスの発生率を下げたり、発生したミスに早く気づき速やかに対応できる仕組みを作り上げていくことが重要です。
以下、モノづくりにおいてミスを少なくする取り組みの1つとして、「口頭による指示は避けてテキスト化」について説明します。
口頭での指示や依頼は意外に伝わっていない
口頭で、指示や何かを依頼したときに、
- やって欲しかったことと実際のアウトプット(成果物)が違う。
- 緊急性(いつまでに)が伝わらず、すぐに取りかかって欲しいのに後回しにされた。
といった経験はありませんか?
口頭で伝えることは、コミュニケーションが取れている状態でも簡単なことではないと考えています。
文書化というとちょっと大げさですが、「口頭は避けてテキスト化する」というのは、何かを頼む側にも頼まれる側にもメリットがあります。
- 依頼側であれば、何をいつまでにということが具体的になります。
- 頼まれた方は、いつまでに何をやればいいのかが具体的に分かります。
つまり、依頼する方は依頼内容を整理し具体的なものにすることで、依頼を受ける方も具体的に依頼内容を受け取れるようになるということです。
急いでいるからこそ、いつものことであるからこそ、意外な落とし穴があるように思います。
何か頼むときに、テキスト化することで頼みたいことも整理できますし、言った言わないだけでなく、意外なヌケや思わぬミスを防ぐこともできます。
それでも口頭で指示するなら、顔を見ながら
口頭でも直接顔を見ながら説明する場合には、相手の表情や様子からも伝わっているか分かりますし、直接、期限や内容を確認することができます。
それでも、「言った、言わない」の問題は出ますので、口頭で伝えるのは以外に難しいことだと考えています。
例えば、技術的なことや少し複雑な内容を口頭で伝えると、後で大変な思いをすることさえあります。説明を受ける側に悪気はなくとも自分なりに受け取りますし、自分に分かる範囲でしか分からないというのが現実だと考えています。
また、珍しくはなくなってきたオンラインでの会議では、表情だけでなく様子も分かりにくいこと、1対1の会話になりがちなこともあり、伝わっているかを確認するのが難しくなっています。
オンラインだからこそ、顔を見ながら話すことを意識した方がよいと考えています。
顔が見えない電話では、受け取りやすい言葉で
電話の場合には直接顔を見て伝えるよりも、自分で思っている以上に「言ったつもり」が増えてしまいます。
電話で指示を受ける方も、何の話なのか状況が分かりませんし、急ぎであればなおさらのこと、電話での言葉から受け取れる情報が限られてきます。
聞き洩らしをなくす、全てを聞き取ろうとして頑張る努力は認めますが、肝心なことが伝わっていなかったということも珍しくありません。
例えば、会話を録音しても、そのまま再生して文書化するだけでは意味がほとんど分かりません。事前の準備や意識的に質問などを挟むなどしておかないと、話の流れを追えないのではないでしょうか。口述筆記で本を作るのはプロの仕事だと思います。
指示を出す側と、受ける側とで、「分かるだろう」、「こういうことかな?」という推測で話が進みがちなのでなおさらです。
伝える側が内容を整理して、受け取りやすい言葉で伝えることが重要になります。
メール(文章)の場合、読みやすいように
日本語力(文章作成力)の問題が出てきます。
何を言いたいのか分からないメールもあれば、何度読んでも意味が分からないことさえあります。
分からなければメールで確認したいところですが、急いでいる場合でなくても、意味の分からない文章の質問をするよりは、電話で聞いた方が分かりやすいこともあります。
日本語は難しいと言われますが、ビジネス・メールでは次のようなことを心がけています。
何を伝えたい、聞きたいといった、メールを書く目的(理由)を明らかにすることが重要です。
- 結論から書く。
- メールで説明が難しいことは、資料などを送付してから電話(またはオンライン)で補足説明する。
メールで済むこと、電話が必要なことを切り分けるように意識するようにしています。
SNSやチャットでの注意点
私は、社内でSNSやチャットを公式に使っている職場で勤務した経験はないのですが、LINEなどのSNSは速報性に優れますし、写真や動画のやり取りも簡単にできますので、うまく使うと便利なツールだと考えています。
しかし、速報性があるからこそ、伝えたいことを受け取りやすい順番で知らせることが重要になっているのではないでしょうか?
指示したことを確認するのであれば、LINEで写真添付すれば簡単に分かるといったように、電話ではできない画像を使ったコミュニケーションツールとしても優れていると思います。
会社でSNSを使うことに対し、私はセキュリティの仕組みと利用者の教育・訓練が不可欠だと考えているので、あまり気乗りしませんが、これは情報システムでの経験があるせいかもしれません。
口頭、電話、メール、SNSやチャットの使い分け
ここまで、何かを指示したり、依頼したりする手段として、口頭、電話、メール、SNSやチャットを使う場合の注意点について説明してきました。
SNSやチャットも万能ツールではなく、時と場合によっては、メールや電話の方が適している場合もあります。重要なのは、指示や依頼に応じて伝える手段を使い分けることです。使い分けを意識するだけでも、指示したのに伝わっていなかったといったヒューマンエラーを減らすことができます。
例えば、電話(口頭)で指示した場合には、電話後メール等でその内容を確認(共有)することが必要です。
指示する方もされる方も、「言った、言わない」の議論からは、お互い何も得るものがありません。今後は注意することになっても、繰り返されることの方が多いのではないでしょうか?
メールなどでテキスト化してあれば、内容の確認、記録として残ります。残っていれば、後から調べたり確認したりできます。
口頭での逐次の指示をリスト化していくのも一考の価値があると考えています。
タスク管理ツールは、何度かチャレンジしていますが、私の仕事のやり方や考え方にはあっていないようで、もっぱらスケジュール(予定表)をタスク管理にも利用しています。
以下は、私の私見ですが、
- メールやSNSの通知は原則OFFにして、自分のタイミングでメールやSNSの確認をする運用にしています。
- メールやSNSなどで最短で返信することを最優先していません。
- 電話やメールの手段を選ぶときは、要件の内容と緊急度を考えて選んでいます。
やっている仕事の性質により自分でコントロールできることとできないことがありますので、それは臨機応変に対応していくしかないと考えています。
まとめ
ISO9000では、特に人が関係しているミスはヒューマンエラーと呼ばれています。モノづくりに限らず、会社の規模や業界に限らずミスは多かれ少なかれあるものです。QCD(品質、コスト、納期)を守るために日々苦労しているケースも多いと思います。
ヒューマンエラーは、人はミスをする以上、人が関係しているミスをゼロにすることは難しいことが知られています。
ここでは、モノづくりにおいてミスを少なくする取り組みの1つとして、「口頭による指示は避けてテキスト化」について、以下の項目で説明しました。
- 口頭での指示や依頼は意外に伝わっていない
- それでも口頭で指示するなら、顔を見ながら
- 顔が見えない電話では、受け取りやすい言葉で
- メール(文章)の場合、読みやすいように
- SNSやチャットでの注意点
- 口頭、電話、メール、SNSやチャットの使い分け