ISO9000では、特に人が関係しているミスはヒューマンエラーと呼ばれています。モノづくりに限らず、会社の規模や業界に限らずミスは多かれ少なかれあるものです。QCD(品質、コスト、納期)を守るために日々苦労しているケースも多いと思います。
ヒューマンエラーは人によるミスのことです。人はミスをしますので、人によるミスをゼロにすることは難しいものです。
そこで、ミスを減らすためには、「ミスが起きたから今後同じミスをしない。」と考えるのではなく、「ヒューマンエラーによるミスは発生する。」ことを前提として考えることがポイントです。
そして、品質・コスト・納期のバランスを見ながら、ミスの発生率を下げたり、発生したミスに早く気づき速やかに対応できる仕組みを作り上げていくことが重要です。
以下、モノづくりにおいてミスを少なくする取り組みの1つとして、「探しやすいファイル管理と変更履歴の残し方」について説明します。
ファイルの管理方法を統一して探しやすくする
ペーパレスが進み、ファイルが紙から電子ファイルに変わり、検索機能で探しやすくなりました。
半面、電子ファイルの最新版がどれか分からず、結局1つ1つファイルを開いて確認するケースも、珍しくはないようです。
ファイル管理方法について1例を紹介します。
年度別のフォルダを作る
まず、毎年使用するファイルは、
- 年度別にフォルダを作成する。
- 年度別のフォルダ内のフォルダ名を決める。
ことで、管理する側も、実際に使う側も探しやすくなります。
年度別のフォルダ内の構成
年度別のフォルダ内は、次の様なフォルダに分けて管理します。
- 予算
- 品質計画
- 教育・訓練計画
- ISO審査
- JIS規格
- クレーム
- マネジメントレビュー
- 内部監査
- 会議資料
- 外注先評価
- 外部提出文書
- 議事録
- 台帳
- 通達
ファイル名のつけ方を統一する
ファイル名のルールは次の様にします。
- 年月日_分類1_分類2
- 年月日:20201010(8桁)
- 分類1:文書の種類(申請書、メール)
- 分類2:ファイルの内容が分かるタイトル
なお、年月日については、年月日の8桁ではなく、201010(6桁)でもよいのですが、日付不明の場合、西暦4桁の方が見やすいし分かりやすいと思います。
最新版の管理(バックアップ)
最新版の管理にはバージョン管理ツールを使う手もありますが、毎日バックアップを取っていればファイルが壊れても前日分までは戻ることができます。
なお、バックアップは、何のためにどこまで必要かだけでなく、費用対効果をよく考える必要があります。極論ですが、安心を買うだけにいくら費やすのか、事業を再開するために不可欠な情報は何か洗い出すことが必要になります。
バックアップをどの様にするかは様々ですが、以下は2週間分のデータをバックアップする例です。
- 週末のフルバックアップ(1週目)
- 月~金は、差分のバックアップ(1週目)
- 週末のフルバックアップ(2週目)
- 月~金は、差分のバックアップ(2週目)
個人のファイル管理が必要な理由
1人で担当している仕事のファイルだから、ファイル管理は自分だけが分かればよいということはありません。
例えば、インフルエンザで出社できなくなることもあります。このような場合には、他の誰かがフォルダを見てある程度分からないと、サポートしようがありません。
最低限「どこに何があるのか」とリストなどのデータを追加する記録については、「最新版がどれか」が分かるようにしておく必要があります。
ファイル管理だけの問題ではないのですが、1人で仕事をしているわけではないことに注意が必要です。
書類(データファイル)の変更箇所を分かりやすく
変更箇所を分かりやすくする理由について説明します。
変更箇所や履歴を残すことがいつのまにか目的に変わっていないか注意して、データのバックアップ同様、割り切ることも必要だと考えています。
文書類(品質マニュアルや規定など)の変更の場合
品質マニュアルや関連規定の改訂では、改訂履歴に変更箇所を明記するようにしていますが、改訂履歴に詳細を入れ込むのではなく、改訂部分が分かればよいと考えています。
規定改訂で変更部分を目立つように色分けすることもあるのですが、完成前に色分けを戻す作業が必要になるのは面倒だと考えています。これは、電子化したからといって解決することでもないので、実際の改訂作業の管理工数などを考慮して決めればよいと考えています。
ところで、改訂理由を調べることの頻度はどの程度か、もちろん内容によるのですが、例えば品質マニュアルや規定の場合、何かのきっかけでかつての改訂理由は何だったんだろうと興味を持つようなことはあるかもしれません。
改訂理由をわざわざ調べる必要性はないと思います。調べたところで推測の域はでず、当時の改訂理由が分かったところで何の意味があるのか、簡単に調べられるなら調べることがあるかもしれませんが、手間暇かけるだけの価値(成果)があるかを考えたうえで調べた方がよいと考えています。
品質マニュアルなどの改訂履歴は見ても改定時に1度だけですし、改訂履歴を調べたい場合には背景などの情報が欲しかったりしますので、規定等の改訂履歴は改訂部分が分かればよいと考えています。
図面や仕様書などの変更の場合
モノづくりであれば、図面や仕様書などの変更があります。
例えば、次のような運用を例にします。
- 図面に変更箇所を明記しているが、変更理由や関連資料などを残す。
- 仕様書などの文書では、改訂履歴に加え変更箇所が分かるようにする。
ある変更については、変更になった背景などを含めた詳細な理由を残しておきたいことがあります。この場合、どこまで何を残すかのさじ加減が実際の運用では難しいようです。
例えば、残された情報が多すぎると結局調べ直すことになりがちです。調べるために残す情報を整理するのも限られた時間の中ですべきことなのか疑問が残ります。
そこで、変更理由を知りたくなった時に分かればよいという考え、変更理由は簡潔にまとめ、修正するための資料を見た方が分かりやすい時はとりあえず資料を残しておく方法もあります。
時間の経過と共に記憶は薄れてきますし、変更理由や資料を見ても分からなくなってきますが、その時はまたゼロから検討すればよいと割り切ってしまうのも1つの考え方だと考えています。
1年、2年と時が過ぎれば状況もずいぶん変わっています。過去にこだわるより今とこれからを考えればよいと考えています。
まとめ
ISO9000では、特に人が関係しているミスはヒューマンエラーと呼ばれています。モノづくりに限らず、会社の規模や業界に限らず、ミスは多かれ少なかれあるもので、QCD(品質、コスト、納期)を守るために日々苦労しているケースも多いと思います。
人はミスをしますので人によるミスをゼロにすることは難しいものです。
ここでは、モノづくりにおいてミスを少なくする取り組みの1つとして、「探しやすいファイル管理と変更履歴の残し方」について、以下の項目で説明しました。
ここでは、
- ファイルの管理方法を統一して探しやすくする
- 年度別のフォルダを作る
- 年度別のフォルダ内の構成
- ファイル名のつけ方を統一する
- 最新版の管理(バックアップ)
- 個人のファイル管理が必要な理由
- 書類(データファイル)の変更箇所を分かりやすく
- 文書類(品質マニュアルや規定など)の変更の場合
- 図面や仕様書などの変更の場合