内部監査で社員、チーム、会社を変えるためには、内部監査員の育成や力量向上が不可欠です。しかも、品質管理責任者(内部監査責任者)だけでは、内部監査でやらなければならないこと(規格要求事項を満足すること)だけで手一杯なのも現実です。
内部監査のリーダーをできる監査員が複数いるのであれば、また違った対応になるとは思いますが、私は、必要に迫られて内部監査責任者をしながら内部監査員を育て、監査員教育資料を作りはじめました。
この教育資料を作ることがきっかけで、Kindle本「ISO内部監査の取扱説明書」を出版することができ、おかげ様で書籍化してよかったと思っています。
実際に、内部監査員を育てようと考えはじめると、初心者教育と並行して、監査員リーダーになるための力量向上や監査責任者育成が視野(プロジェクト・マネジメントでいうスコープ)に入っていきます。
ここでは、ほぼゼロからどの様にして内部監査員を育成していったかについて、経験をまじえ説明します。
まずは、現状維持と現場の観察(把握)から
内部監査員を育てるために、まずやることは、「現状維持と現場の観察(把握)」です。
- 現状維持とは、言葉通りで、まずはこれまでと同じ内部監査を実施することです。(ISOの外部審査により認証維持を継続することを最優先にすること)
- 現場の観察(把握)とは、内部監査をする方、受ける方の現実を知ることです。(現在地という実態を知ること)
現状維持を最優先とする理由
なぜ、現状維持を最優先とするのか?
最も大きな理由は、外部審査での連続性(良くも悪くも継続性)を保つためです。
仮に、内部監査やISOの外部審査で、
- 前回までできていたことが、できなくなっている。
- 前回までやっていたことをやらなくなっている。
ことが明らかになった場合、その理由を説明したり、品質マニュアルや規定類との整合が取れていることを、現状を知らずに説明できるか自問してみると、管理責任者(内部監査責任者)になったばかりでは、現状維持を最優先にすることが必要だと考えています。
また、現状維持を最優先する積極的な理由としては、以下のことを避ける意味合いもあります。
- 自分の目で見て現状を把握せずに、内部監査やISOの更新審査の継続性を保つことは意外に難しい。
- これまでは内部監査やISO外部審査を受ける立場と、管理責任者(内部監査責任者)として内部監査を行い、ISO外部審査を受けることには、大きな違いがある。
- 管理責任者(内部監査責任者)をはじめた初期段階で、個人的な思い込みや思い違い(勘違い)が、内部監査やISO外部審査で表面化してしまうと、今後の活動にマイナスの影響を与えることになり、このマイナスをゼロにしてプラスに変えていくには時間がかかる。
なお、このあたりの考え方は、ここ数年、全社のクレームに対応していることから、無意識ですが影響を受けているのかもしれません。
現状維持を最優先にするのは、現在地(実態)が分からないのに、自分の思い(例え指示された場合でも)で走りだすのは、危険(リスクがとても高い)と考えるからです。
現場の観察(把握)をする理由
現場の観察(把握)は、自分の意見を主張することなく、「現場の観察(把握)に徹する」イメージです。
一般的に、内部監査とISO外部審査は、年1回しかありませんが、この機会を積極的に利用することがポイントです。
管理責任者(内部監査責任者)になると、問題や課題だと思っていることも少なからずあると思いますが、まずは、客観的に現在の状態を知ることを優先します。
内部監査やISO外部審査では、従来通りを継続しつつ、次の様なことを観察し記録する。
- 品質マニュアルやISO規定類との不整合
- 監査や審査を受ける側の意識や事前準備などの状況
- 部署間の意識や違い
- モノづくり会社であれば、QMSの体系図に示される大きなフローと実務との違い
この際、指摘しようとするのではなく、次のことを意識することがポイントです。
- 相手の立場に立ち、業務改善につながることをみつけること
- 改善の範囲をチーム、部署、及び、会社全体としてみること
これまでの内部監査を継続するために
内部監査は、マネジメントレビュー やISO外部審査のためにも必須です。
管理責任者(内部監査責任者)になったばかりでは、何かを変えようとするのではなく、今いる内部監査員で内部監査の形を作ることが最優先です。
実際に内部監査の準備を行い、計画、実施していくと、内部監査員をフォローしたり、手も口を出したくなる場面があります。
この時、内部監査が成立しないようなことでなければ、管理責任者(内部監査責任者)としてはジッと、グッと耐えることが重要です。
さらに、考え方になりますが、「手伝ってもらえることがあるならば、積極的にやってもらう」ことがポイントになります。
「心配だから」、「不安だから」という気持ちも分かりますが、管理責任者(内部監査責任者)1人で内部監査を行うことはできないので、「できるだけ経験させる」ことを優先するくらいでちょうどよいと考えています。
管理責任者(内部監査責任者)が、内部監査員に指導と称して具体的な指示をしてしまうと、「偉い人(責任者)がやってくれるから、言われたことだけやろう。」と、指示を受けた監査員が思ってしまうのは無理もないことだと考えています。
自分でやれば、的確で効率的な内部監査をできるかもしれませんが、同じやり方を他の内部監査員ができるとは限りません。むしろ、管理責任者(内部監査責任者)がやるような内部監査はできないと考えています。
業務改善につながる内部監査を行うためには、内部監査開始後の早い段階で監査員と被監査部署の長とのコミュニケーションをとれる必要があります。
「指摘されないようにしよう」と内部監査員を警戒する様な気持ちがあれば、本当のことを話してくれるはずもなく、困っていることでさえ正直には口にしてくれないものです。
イメージですが「何を話しても自分に害がある(怒られる)ようなことはない」と安心感のようなものを感じてもらえるのが、内部監査のコミュニケーションに必要なことです。
まとまりのない文章となってしまいましたが、ポイントを列挙します。
管理責任者(内部監査責任者)になったら、
- 管理責任者(内部監査責任者)として内部監査のあるべき姿を求める前に、まずは、これまでの内部監査を継続するすることが重要です。
- 自分でやろうとせず、意識的に積極的に内部監査員にできることはやらせる。
- これまので内部監査を継続しながら、現場を観察(把握)することを徹底する。
まとめ
内部監査で社員、チーム、会社を変えるためには、内部監査員の育成や力量向上が不可欠です。
私は、必要に迫られて内部監査責任者をしながら内部監査員を育てるために、教育資料作りをはじめました。
実際に、内部監査員を育てようと考えはじめると、初心者教育と並行して、監査員リーダーになるための力量向上や監査責任者育成が視野(プロジェクト・マネジメントでいうスコープ)に入っていきます。
ここでは、ほぼゼロからどの様にして内部監査員を育成していったかについて、以下の項目で説明しました。
- まずは、現状維持と現場の観察(把握)から
- 現状維持を最優先とする理由
- 現場の観察(把握)をする理由
- これまでの内部監査を継続するために