内部監査で社員、チーム、会社を変えるためには、内部監査員の育成や力量向上が不可欠です。しかも、品質管理責任者(内部監査責任者)だけでは、内部監査でやらなければならないこと(規格要求事項を満足すること)だけで手一杯なのも現実です。
私は、必要に迫られて内部監査責任者をしながら内部監査員を育て、監査員教育資料を作りはじめ、これがきっかけとなり、Kindle本「ISO内部監査の取扱説明書」を出版につながりました。
実際に、内部監査員を育てようと考えはじめると、今いる内部監査員の力量を知る必要があります。また、内部監査員の教育・訓練の中でも、実際に内部監査ができるようになるには、個人の力量に応じた教育や訓練を計画・実施することが必要だと考えています。
ここでは、内部監査員の候補者選び、内部監査員の力量把握、内部監査員に必要な力量(能力)について経験をまじえ説明します。
内部監査員候補者選びのポイント
新しい内部監査員を育てる場合、最も重要なのは候補者選びだと考えています。
内部監査員候補者を選ぶ際に重視しているのは、コミュニケーションがとれるかどうかです。
具体的には、業務改善を目的とした内部監査を行うためには、内部監査員が被監査部署の部署長や現場リーダーや担当者と限られた時間の中でコミュニケーションがとれることを重視しています。
実際に候補者を選ぶときには、
- コミュニケーションがとれるかどうかを日頃の業務などから観察し判断する。
のではなく、
- コミュニケーションがとれない候補者を早い段階で見抜く。
ことを重視しています。
実際に内部監査員ができるかどうかは、以下のように段階的に教育・訓練をすすめて判断しています。
候補者選び(スカウト)のポイント
内部監査候補者にするかどうかは、以下のことで判断しています。
- 日頃の仕事ぶりから内部監査員になって欲しい人
- 部署長に内部監査員をやりたい人はいませんかとヒアリング(内部監査などで)
これまでの経験から、候補者が内部監査員になりたがらない理由は、次に集約されています。
- 内部監査員は、ISOの要求事項など専門的な知識が必須だと思っている。
- とても難しい仕事で、自分には無理だという(根拠のない)思い込みがある。
内部監査責任者として内部監査員になって欲しい人を見つけた場合には、無理強いはせず、雑談的に次の様なことを説明して気長に誘っています。
- 内部監査員にISOの専門知識は不要です。
- 品質マニュアル等は会社のルールの一部です。
- 教育や訓練は段階的にすすめていくし、無理にOJTをさせることもしていない。
- 部署長と話ができるかが一番重要なんだよね(この点、あなたはクリアしています)。
実際に内部監査員になってリーダーができるようになった監査員からは、次の様な感想を聞いたことがあります。
- 「内部監査にISOの専門知識はいらない」と言われてはいたけれど、実際に内部監査をやってみるまでは、そんなはずはないと思っていました。
- コミュニケーションは、本当に重要ですね。言葉遣いというよりも、相手に不安を与えないことが重要だと分かりました。
内部監査員の力量把握とチェックリスト
内部監査では、チェックリストを使うようにしています。
詳細は省きますが、チェックリストは次の2種類あります。
- 全部署共通のチェックリスト
- 各部署用のチェックリスト
チェックリストのメリット
チェックリストを使うことは、抜け漏れを防ぐこともありますが、それ以外にも次のメリットがあります。
- 被監査部署にとってのチェックリストは、前回(1年前)と今とを比較するきっかけとなる。
- 内部監査員にとってのチェックリストは、前回の内部監査について知る材料(エビデンス)となる。
- 内部監査責任者は、チェックリストを見ることで、内部監査に同席していなくてもある程度内部監査員の力量を知ることもできます。(質問力、観察力、記録を録る力、時間管理など)
チェックリストの見直し時期
チェックリストの見直し時期と内容について説明します。
- 内部監査後は、全部署の監査報告書とチェックリストを比べて、チェックリストのボリュームが大きすぎて空欄が多いとか、質問や確認のしにくい項目などを洗い出します。
次の期になると、以下の通りチェックリストを見直します。
- 内部監査責任者として、全体的に見直しを行う。
- 内部監査員(候補者含む)に、事前準備の資料としてチェックリストの見直しをさせる。
内部監査員に必要な力量(能力)
内部監査員に必要な力量(能力)について、以下説明します。
コミュニケーションや口がかたいことなど、自分で自覚すればよりよくしていくことができることです。
コミュニケーション
この記事でも繰り返し出てきていてくどいようですが、内部監査員に必要な力量は、コミュニケーションです。
具体的には、警戒心をもたれずに、部署長、リーダー、担当者などと話ができることです。
逆の例えになりますが、部署長などに警戒心を持たれてしまったり、壁を作られてしまうのは、内部監査員が口にする言葉(言葉遣い)による影響が大きいです。
例えば、当人は気づいていない場合が多いのですが、私は上から目線の言葉遣いや横柄な言葉遣いをしている人を内部監査員候補者に選ぶことはありません。
「社歴が長く自分は先輩だ」とか、「業務改善のために監査してやるんだ」といったことが、直接言葉にしなくても、言葉の端々や態度に表れてしまうからです。
口がかたいこと
自分の考えを口にしてしまう(いわゆる口が軽い)ことを含め、内部監査員は余計なことを言わないことが必要です。
具体的には、内部監査員や内部監査で知り得た情報は、他の監査員を含め他言しないことです。言ってよい相手は、内部監査責任者だけということです。
これについては、時間をかけて接していないと分からないこともあるため、内部監査員教育(OJT)を進めながら見極めています。
いわゆる「口がうまい」と言われてしまうような人は、エビデンス(客観的証拠)ではなく自分を基準に判断して言葉にしてしまう傾向があるようで、これでは内部監査をさせることができません。
言葉遣いで言えば、「不十分」というのは自分が不十分だと思っているということなので、内部監査員としては言ってはいけないことだと指導しています。
自己管理ができること(内部監査リーダー)
自己管理といっても難しいことではなく、時間管理ができるということです。
内部監査では内部監査終了時刻を厳守することです。
内部監査は2名でチームとすることが多いのですが、リーダーに指示されたことを時間内で終わらせることを意識することからはじまります。
内部監査報告書の提出期限を守ることも含まれます。
内部監査リーダーは、監査員をローテーションしたり、初心者の教育・訓練をサポートさせたりして、スキルアップを図るようにしています。
まとめ
内部監査で社員、チーム、会社を変えるためには、内部監査員の育成や力量向上が不可欠です。
実際に、内部監査員を育てようと考えはじめると、今いる内部監査員の力量を知る必要があります。内部監査ができるようになるには、個人の力量に応じた教育や訓練を計画・実施することが必要です。
ここでは、内部監査員の候補者選び、内部監査員の力量把握、内部監査員に必要な力量(能力)について、以下の項目で説明しました。
- 内部監査員候補者選びのポイント
- 候補者選び(スカウト)のポイント
- 内部監査員の力量把握とチェックリスト
- チェックリストのメリット
- チェックリストの見直し時期
- 内部監査員に必要な力量(能力)
- コミュニケーション
- 口がかたいこと
- 自己管理ができること(内部監査リーダー)