ISOの管理責任者の仕事をはじめた頃、目の前のことを処理するだけで毎日が過ぎていきました。
しだいに、やらなければいけないことにも気づきはじめますが、深く考える時間もなければ、気持ちに余裕もなく、ひとまずメモを残すことからはじめました。
私の場合、管理責任者の仕事をするうえでの不安には、次の様なことがありました。
- 何をすればよいのか分からない。
- やらなければならないことが多すぎて、やっていけるのだろうか?
と思い、ふと時間が空いた時などに不安になることがなかったわけではありません。
ここでは、管理責任者の仕事について不安を無くすのではなく、安心できる材料を探すことにポイントをおいて説明します。
まずは、QMSの実力(実態)を知る
管理責任者の仕事をするにあたり、まずは、現状を知ることが必要です。
詳細は、内部監査やマネジメントレビューで把握していくとして、まずは、以下の安心材料がありますので、不安になりがちな自分に言い聞かせます。
- 現在、ISO9001の認証維持ができているのだから、ISO9001の要求事項は満足している、少なくとも文書審査(QM)はOKと判断できる。
文書審査(最初の認証取得や要求事項改定時)により、ISO9001の要求事項を満たしていることを確認します。
具体的には、品質マニュアルでISO9001の要求事項に対し、どの様に対応するか記載してあればOKということです。
実地審査で、要求事項の求めることがどの様に実現しているかを審査員は確認します。
なぜ、こんなことかで安心できるかというと、次の様な経験をしたからです。
とある会社で品質マニュアルを読んだところ、具体的な実施要領はすべて「規定に示す。」と書かれていました。これでは、ISO規定類を読んで実務を確認しないと要求事項を満足しているかどうか判断しかねます。それでも、文書審査としてはOKなのでした。文書審査の限界といってもよいと考えています。
別のとある会社で品質マニュアルの確認依頼があり読んだところ、どうやら、ISO9001の2000年版に、ISO9001の2015年版の要求事項を追記しただけのマニュアルだったことがあります。形式的なマニュアルの代表例のように感じたことを覚えています。こちらも、文書審査で分からない部分は、実地審査で確認することになるので文書審査はOKとなります。
私が、品質マニュアルと規定類を作る時に、次の方針で作った方がよいと考えている理由の1つでもあります。
- ISO9001の要求事項には、品質マニュアルで対応し、具体的な手段等については、各規定に定める。これで、最低限の文書審査対策となります。
- 各規定には、業務の標準的(代表的)な業務フローについて記載する。これは、レアケースや例外などすべてを盛り込もうとしないということです。
参考:管理責任者教育に使う資料
管理責任者教育に使う資料といっても特別なものはありません。
以下の品質マニュアルと規定が教科書です。
各部署の規定(設計・開発、製造、購買など)は、フロー図で、不適合は業務フローの中で学びます。
- 品質マニュアル
- 方針管理規定
- 品質文書管理規定
- 内部監査規定
- 是正処置規定
品証部長であれば、文書記録保管期間やISO登録証の使用要領についても知っておきます。
品質マニュアルと規定類を最初に読むコツ
品質マニュアルと規定類は、はじめからすべて理解しようとしないことがポイントです。
- まずは、QMS体系図で、全社の標準的(一般的)な業務フローを知る。
- 次に、各規定の標準的(一般的)な業務フローを知る。
こうする理由は単純です。
最初からまじめに品質マニュアルや規定類を読んでいく、あるいは、読み込もうとすると、最後までたどり着くのも大変です(読み込むことが目的となりがちです)。
品質マニュアルや規定類を読み進めていくと、どうしても注意力が落ちてきて、頑張ろうとすると読むことが目的になりがちです。
このため、次のように読んでいくことをおすすめします。
- ざっと読んで「こんなものか」と自分を安心させる。
- 品質マニュアルも規定類も、図表から見る。品質マニュアルは、組織図とQMS体系図、規定類は、業務フローだけを見ていく。
QMSの運用実態を知る内部監査
QMSが品質マニュアルと規定類とでどの様に運用されているかを確認する場として、内部監査を利用します。
内部監査では、各部署の規定と実務を確認していきますが、この時、規定にある業務フローを参考にすると、実態と実態との差をつかみやすくなります。
なお、業務フローが無い規定は、そもそもプロセスアプローチ(プロセスに分ける取り組み方)が理解されていない可能性が高くなります。
この様な場合には、標準化(作業手順書を作ることなど)も意識されていない。つまり、行き当たりばったり出たとこ勝負で仕事をしていることが考えられますが、これを含めて実力(実態)と考えています。
クレーム対応や不適合品の処理状況などから、会社としての品質管理や品質保証の程度(レベル)を推測することができます。
内部監査とマネジメントレビューへの取り組み方
管理責任者の仕事をはじめたばかりの時は、ひとまず、従来通りで進めます。
思うところがあったとしても急に変更したり、大きく変えたりしないことがポイントです。
ISO9001の外部審査対応上も、急な変更や大幅な変更には無理があります。
変更するのであれば、
- 各部署の品質目標実施計画の実施状況を知り、
- 内部監査で実態を確認し、
- マネジメントレビューで報告し、
- 承認(指示)されたら実施する。
というのが本来の流れです。
また、現実問題として、急な変更や大幅な変更には、多大な労力をかけても。現場はついてこられないケースが多いと思います。
以下、はじめての内部監査とマネジメントレビューのポイントについて補足します。
はじめての内部監査
はじめての内部監査は、内部監査の実態と内部監査員の力量を知ることが重要です。
- 内部監査員の実力(力量)と内部監査の進め方、指摘事項、報告書について、よく観察することが重要です。従来通りを正面から変えるのではなく、結果的に変わっているというのがよいと考えています。
- 次回の内部監査からは、自由にやっていいよと言われる(丸投げされる可能性が大きい)ので、現状から少しづつ、自分が楽になる様に内部監査員の育成、ISO規定類の改訂を進めていくのがポイントです。
はじめてのマネジメントレビュー
マネジメントレビューは、社長さん次第です。
品質管理責任者、あるいは、品証部長だとしても、雇われている会社員の1人なので、そこは割り切って社長に合わせるしかないと考えています。
社長自ら品質保証や品質管理をQMSで何とかしたいと考えているなら、やり方進め方はあると思います。
何かを変える、何とかしたい場合には、全面的な社長と担当役員クラスのサポートがないと変わらない・・・ようです。
まとめ
ISOの管理責任者の仕事をはじめた頃、目の前のことを処理するだけで毎日が過ぎていきました。しだいに、やらなければいけないことにも気づきはじめますが、深く考える時間もなければ、気持ちに余裕もなく、ひとまずメモを残すことからはじめました。
私の不安には、次の様なことがありました。
- 何をすればよいのか分からない。
- やらなければならないことが多すぎて、やっていけるのだろうか?
ここでは、管理責任者の仕事について不安を無くすのではなく、安心できる材料を探すことにポイントをおいて以下の項目で説明しました。
- まずは、QMSの実力(実態)を知る
- 参考:管理責任者教育に使う資料
- 品質マニュアルと規定類を最初に読むコツ
- QMSの運用実態を知る内部監査
- 内部監査とマネジメントレビューへの取り組み方
- はじめての内部監査
- はじめてのマネジメントレビュー