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JISQ19011の付属書を内部監査改善のヒントに:会社全体に関すること

はじめての内部監査責任者

「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」は、QMSだけでなく他のマネジメントシステムの監査や複数のマネジメントシステムの監査にも共通する内容となっています。

「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」の付属書A(参考)をヒントに、QMS(品質マネジメントシステム)の内部監査の改善や活用のヒントとして振り返りました。

  • 付属書Aは、組織構造(会社の組織)、リーダーシップ及びコミットメント、仮想監査(リモート内部監査)、順守、サプライチェーンなどの(新しい)概念を監査する手引です。

ここでは、内部監査において会社全体に関連すること(法令・規制要求事項、リーダーシップとコミットメント、リスクと機会、ライフサイクルとサプライチェーン)について説明します。

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会社全体に関すること

内部監査において、法令・規制要求事項、内部監査対象部署の状況、リーダーシップとコミットメント、リスク及び機会など、会社全体に関すること、あるいは、社長(経営層)に関することについて説明します。

法令・規制要求事項の順守について

内部監査は、基本的に品質マニュアル及び内部監査計画の範囲内のことを対象としています。

ここでいう「順守」とは、内部監査において、法令・規制要求事項を順守(守って)いるかを監査することと考えています。

QMSで法令・規制というと、試薬や溶剤、化学物質等の管理などがあり、具体的には次のようなことが関係します。

  • RoHS(Restriction of Hazardous Substances)指令、REACH規則、SVHC(Substances of Very High Concern:(高懸念物質)
  • 管理ツールならchemSHERPA
  • JIS規格なら「JIS Z 7201(製品含有化学物質管理-原 則及び指針)」など

内部監査において法令・規制要求事項の順守についてどこまで踏み込むかは、内部監査の目的の範囲内で必要に応じて監査するイメージです。

内部監査責任者や内部監査リーダーとして、法令・規制要求事項の順守に関する考慮事項について以下に列挙します。これらについては、事前に確認及び合意が必要になると考えています。

  • 内部監査対象部署に適用される法令・規制要求事項、及び、内部監査対象部署(長)がコミットメントするその他の要求事項を特定すること
  • 順守するために、内部監査対象部署の活動、製品及びサービスをマネジメントすること
  • 内部監査対象部署の順守状態を評価すること

また、内部監査において、内部監査対象部署が実施している次の事項を考慮します。

  • 順守に関する要求についての変更を特定しているか、有効な変更管理プロセスをもつか。
  • 順守をマネジメントする力量を備えたメンバーの確認(誰なのか特定する)
  • 規制当局や利害関係者からの要求されている、順守についての文書化した情報の維持、提供についての確認
  • 順守の要求事項について、内部監査プログラムに含めているか(例えば、内部監査目的の範囲内で、チェックリストに加える)。
  • 順守していない(不順守)様々な事例への対応方法
  • マネジメントレビューにおいて、順守のパフォーマンスを考慮する。

内部監査対象部署の状況

内部監査リーダーは、内部監査のはじめの段階で、内部監査対象部署に部署(組織)の状況をヒアリングします。

例えば、ここ1年程度の期間において、いつもと違ったこと、社内・社外の環境の変化などについて聞いていきます。

  • いつもと違うことがあれば、それについてさらに聞きます。
  • 特に何も変化がないといわれても、小さな変化でもよいから何かないかとか、変化がないことをどの様に思い感じているのかなど、変化がないなりになにかしているかなどを聞いていきます。

限られた時間の中で部署の状況をヒアリングすることは、内部監査員の経験の長さにかかわらず難しいと感じる内部監査員が多いようです。

内部監査には、次のことが要求されています。

  • 内部監査対象部署に関連する利害関係者のニーズや期待
  • 社外及び社内の課題を含めて、組織(部署)の状況を明確にする(決定する)こと

内部監査リーダーは、ここ1年程度と期間を区切り、社内外の環境の変化などを切り口に、業務内容、品質目標を達成する計画や活動について確認していきます。

この際、客観的証拠(エビデンス)があるかを意識して、次のことを考慮します。なお、以下でいうプロセスは、具体的な行動などの意味合いです。

  • プロセスや方法
  • プロセスに関連する人々は適切か、力量の有無・程度
  • プロセスによる様々な結果
  • QMSの適用範囲と構築のために、使ったプロセスとその結果の適用
  • 必要な場合には、組織の状況についての定期的なレビュー
はかせ
はかせ

内部監査員個人の意見や感想ではなく、裏付けのある、客観的に説明できる理由が必要だという意味合いです。

部署の状況について部署長にヒアリングする力量を高めるためには、

  • 関連する業種に固有の知識や組織(会社や部署)が使用するマネジメントツールについて概要程度は知ること
  • 品質マニュアルのQMS体系図による会社全体の業務フローや、営業業務規程などの業務フロー、日頃の業務で使われている用語について知ること

などの知識が役に立ちます。また、これらの知識を深めることは、上述のプロセスの有効性などを判断する際の助けになります。

リーダーシップとコミットメント

リーダーシップとコミットメント、具体的にどうするかは品質マニュアルに定めている通りなのですが、内部監査で確認することは意外に難しいようです。

QMSのリーダーシップとコミットメントとは、社長(経営層)がどのようにリーダーシップを発揮し、コミットメント(品質方針、品質目標を示し、実行しますということ。)しているかということです。

内部監査では、社長のリーダーシップやコミットメントについて、部署長がどの様にリーダーシップを発揮し、コミットメント(部署の品質目標の達成)するかということを確認します。

例えば、次のようなことを内部監査リーダーは、部署長に確認します。

  • 社長(経営層)によるビジョンや活動指針のようなものが明確であれば、前者の品質方針や品質目標に関連づけて、どの様な指示がでているかヒアリングします。
  • 社長の指示を部署長としてどの様に受け止め、部署の品質目標に落とし込み、活動しているかをヒアリングします。

内部監査員が難しいと感じる理由の1つは、次のような部署長の力量の差によるものです。

  • 部署長のAさんは、社長のリーダーシップやコミットメント及び関連することについて、自分の言葉で説明できる。
  • 部署長のBさんは、リーダーシップやコミットメントがそもそもどの様なことなのか分からない、その結果、聞かれても何を言われているのか分からない。
  • このため相手(部署長)の力量にあわせて、それなりの結論(ヒアリングの結果)にもっていけるように、ヒアリングしていくことが必要になる。

社長(経営層)の内部監査の方法については、次のようなやり方があります。

  • 内部監査責任者が、内部監査時に確認する。
  • ISO管理責任者が、全社の内部監査結果を報告の機会を利用してインタビューする。

この際、社長(経営層)のリーダーシップとコミットメントについて、どの様に聞くかは組織(会社)により様々だと思われます。

内部監査におけるリーダーシップとコミットメントについては、社長がこうしたいと思っていることを、部署長がどの様にとらえ、品質目標に反映して目標達成にむけ活動しているかを確認することだと考えています。

リスクと機会

リスクと機会も内部監査で確認することが難しいことの1つです。

内部監査では、リスクと機会は、表裏一体(表と裏の関係)にあることを意識して、

  • リスク(放置しておくと問題になる)と思っていることをヒアリングする。
  • 機会(チャンス)だと思っていることをヒアリングする。

ことを意識します。

内部監査対象部署長が思うリスクや機会についてヒアリングすると、次のことを意識することでリスクや機会の客観的証拠を集めることができます。

  • 外部及び内部の課題の分析
  • 組織(会社と自部署)の戦略的方向性(戦略的は3年程度を意識します)
  • 組織(会社と自部署)のマネジメントシステムに関係する利害関係者と利害関係者の要求事項
  • 潜在的なリスク(例えば、職場環境や安全衛生に関すること)

リスクと機会については、リスク管理(リスクマネジメント)として扱う(評価する)のではなく、あくまでも、品質目標達成のためのリスクや機会という位置づけで取り扱えばよいと考えています。

ライフサイクルとサプライチェーン

内部監査においてもライフサイクルの視点が必要な場合には、事前にQMSにおけるライフサイクルの取扱いについて確認することが必要になります。

ライフライクルについて、品質マニュアルやISO関連規定に明記されていないのであれば、内部監査で確認することが難しいと考えています。

以下、環境に影響を与えるライフサイクルについて概要を説明します。

ライフサイクルには、次のようなプロセスが対象になります。

  • 原材料の取得、設計、生産、輸送・納品、使用(アフターサービス)、使用後の処理及び最終処分

ライフサイクルについて確認するポイントを以下に列挙します。

  • 製品やサ-ビスの寿命(耐用年数、保証期間、提供期間など)
  • サプライチェ-ンへの影響
  • サプライチェ-ンの長さ(自社が関わる範囲)
  • 製品の複雑さ(材料、組立、修理や分解方法など)
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まとめ

「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」は、QMSだけでなく他のマネジメントシステムにも共通する内容となっています。

「JISQ19011マネジメントシステム監査のための指針」の付属書A(参考)をヒントに、QMS(品質マネジメントシステム)の内部監査の改善や活用のヒントとして振り返りました。

ここでは、内部監査において会社全体に関連することについて、以下の項目で説明しました。

  • 会社全体に関すること
    • 法令・規制要求事項の順守について
    • 内部監査対象部署の状況
    • リーダーシップとコミットメント
    • リスクと機会
    • ライフサイクルとサプライチェーン
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