ISO9001品質マネジメントシステムでは、パフォーマンス改善にQMSが役立つものであることが要求されています。
内部監査では、監査対象部署や会社全体のパフォーマンス改善に役立つ情報(業務改善に役立つ内部監査結果)を提供できる内部監査を目指したいと考えています。
内部監査員に対し、パフォーマンス改善については次の様に説明しています。
- パフォーマンス改善に注目する
- 注目したプロセスの課題を明らかにする。
- 改善点(のヒント)を見つける。
こうすることで、
- 改善に役立つ良い指摘となり、内部監査によるパフォーマンス改善につながる。
また、内部監査に限った話ではありませんが、マンネリ化は対応を誤ると、マンネリ化から脱するためには、マンネリ化しなければしなくて済んだ苦労だけでなく長い時間も必要になります。マンネリ化を防ぎ、パフォーマンス改善に役立つ内部監査にしたいものです。
ここでは、品質マネジメントシステムのパフォーマンスと内部監査について説明します。
なお、本文中のISO9001やISO19001の用語や要求事項については、正確性よりも分かりやすさを重視した説明となっていますので、ご注意ください。
パフォーマンス改善について言葉の定義を振り返る
まずは、ISO9000シリーズにおけるパフォーマンス改善とは何かについて用語の定義を振り返ります。
「JIS Q 9000:2015 品質マネジメントシステム-基本及び用語」によれば、「パフォーマンス」は、「測定可能な結果」と定義されています。
また、同注記には、定量的又は定性的な所見(見た結果)のいずれもあり、モノづくりだけでなくQMS全体に関連しているとあります。
以下、「JIS Q 9000:2015 品質マネジメントシステム-基本及び用語」から、「パフォーマンス」、「改善」、及び、「パフォーマンス改善」の用語の定義を引用します。
パフォーマンスは、測定可能な結果であり、定量的なものと定性的なものの両方があります。
3.7.8 パフォーマンス(performance)
測定可能な結果。
注記1 パフォーマンスは、定量的又は定性的な所見のいずれにも関連し得る。
注記2 パフォーマンスは、活動(3.3.11)、プロセス(3.4.1)、製品(3.7.6)、サービス(3.7.7)、システム(3.5.1)又は組織(3.2.1)の運営管理(3.3.3)に関連し得る。
注記3 この用語及び定義は、ISO/IEC 専門業務用指針-第1部:統合版ISO補足指針の附属書SLに示されたISO マネジメントシステム規格の共通用語及び中核となる定義の一つを成す。元の定義の注記2を変更した。
出典:「JIS Q 9000:2015 品質マネジメントシステム-基本及び用語」より
改善については、パフォーマンスを向上するための活動となっています。
3.3.1 改善(improvement)
パフォーマンス(3.7.8)を向上するための活動。
注記 活動は、繰り返し行われることも、又は一回限りであることもあり得る。
出典:「JIS Q 9000:2015 品質マネジメントシステム-基本及び用語」より
継続的改善についても、パフォーマンスを向上するための活動となっています。
3.3.2 継続的改善(continual improvement)
パフォーマンス(3.7.8)を向上するために繰り返し行われる活動。
注記1 改善(3.3.1)のための目標(3.7.1)を設定し、改善の機会を見出すプロセス(3.4.1)は、監査所見(3.13.9)及び監査結論(3.13.10)の利用、データ(3.8.1)の分析、マネジメント(3.3.3)レビュー(3.11.2)又は他の方法を活用した継続的なプロセスであり、一般に是正処置(3.12.2)又は予防処置(3.12.1)につながる。
注記2 この用語及び定義は、ISO/IEC 専門業務用指針-第1 部:統合版ISO 補足指針の附属書SLに示されたISOマネジメントシステム規格の共通用語及び中核となる定義の一つを成す。元の定義にない注記1を追加した。
出典:「JIS Q 9000:2015 品質マネジメントシステム-基本及び用語」より
品質マネジメントシステムのパフォーマンス
品質マネジメントシステムの「パフォーマンス」については、「JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」によれば、「9 パフォーマンス評価 9.1 監視、測定、分析及び評価」の部分が参考になります。
「9.1.1 一般」について、私は次のように考えています。
a)監視及び測定が必要な対象
- いわゆるKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)のこと
- 品質目標実施計画であれば、品質計画の進捗を記録する指標(目標達成までの中間指標)を決める。
b)妥当な結果を確実にするために必要な、監視、測定、分析及び評価の方法
- 目標の測定方法、評価方法を決めておくことが必要
c)監視及び測定の実施時期
- 例えば、毎月末時点での目標の進捗を確認し、記録することが必要
d)監視及び測定の結果の、分析及び評価の時期
- 品質計画の進捗状況について、結果・分析・評価する時期を、毎月、四半期、半期、期末に評価する。
- どの様に評価するかは、上述b)に定めた方法とする。
品質マネジメントシステムの7原則の顧客満足
「9.1.2 顧客満足」では、「品質マネジメントシステムの7原則」の顧客重視を具体的に求めていると考えています。
「製品やサービスに対し、お客様のニーズや期待がどの程度か、顧客がどのように受け止めているかを確認すること」が求められているのですが、これは意外に難しいようです。
そこで、営業については、
- 顧客満足:製品等に顧客が満足している→製品を購入する→予算達成となる。
と考えるのもありだと考えています。
営業意外であれば、「営業予算達成のために自部署でやるべきことは何か」を考え、目標とします。
パフォーマンスの分析・評価と内部監査
「9.1.3 分析及び評価」には、次の項目が上げられています。
- a)製品及びサービスの適合
- b)顧客満足度
- c)品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性
- d)計画が効果的に実施されたかどうか。
- e)リスク及び機会への取組みの有効性
- f)外部提供者のパフォーマンス
- g)品質マネジメントシステムの改善の必要性
パフォーマンスは、品質マネジメントシステム(QMS)のパフォーマンスと外部提供者のパフォーマンスとがあります。
ここでは、内部監査を活用(利用)する視点から、自社のQMSのパフォーマンスに注目します。
「9.2 内部監査」では、次のことが求められいます。
- 「品質マネジメントシステムが有効に実施され、維持されている」
そこで、内部監査による改善を目指すために、次の様なことが目標になると考えています。
- 「各部署、全社のパフォーマンス改善のために役立つ情報を内部監査で提供する」
言葉では簡単に表せますが、これを実際に、具体的に、しかも、内部監査の限られた時間内で実現するためには、事前の準備と、少なくとも3年程度の内部監査結果(実績)が必要です。
監査を受ける側とのコミュニケーションも必須になります。
まとめ
ISO9001品質マネジメントシステムでは、パフォーマンス改善にQMSが役立つものであることが要求され、内部監査では、監査対象部署や会社全体のパフォーマンス改善に役立つ情報(業務改善に役立つ内部監査結果)を提供できる内部監査を目指したいと考えています。
ここでは、品質マネジメントシステムのパフォーマンスと内部監査について、以下の項目で説明しました。
- パフォーマンス改善について言葉の定義を振り返る
- 品質マネジメントシステムのパフォーマンス
- a)監視及び測定が必要な対象
- b)妥当な結果を確実にするために必要な、監視、測定、分析及び評価の方法
- c)監視及び測定の実施時期
- d)監視及び測定の結果の、分析及び評価の時期
- 品質マネジメントシステムの7原則の顧客満足
- パフォーマンスの分析・評価と内部監査