はじめての内部監査員教育では、初顔合わせから内部監査員教育をはじめるにあたり、知らないが故の不安を取り除くことを主たる目的としていました。
まずは、内部監査員として必要なISO9001(QMS)について説明します。
- 教育の時間は説明は30分、質疑応答を含め1時間以内としています。
ISO9001(QMS)の知識については、まずは、「知っている」「聞いたことがある」を目標にします。いずれは、内部監査で質問された時に自分の言葉で説明できるようになることを目指しますが、それよりは、コミュニケーションがとれて内部監査をできるようになることを優先しています。
内部監査員育成の登場人物を簡単に紹介します。
内部監査責任者の「はかせ」。社内ではISOの人といわれるtこともありますが、博士(工学)でもあります。
社会人経験は浅いものの知らないことにも前向きに取り組む「レイ」さん。上司から推薦された内部監査候補者。
社会人経験の浅いレイさんと同期の「ソラ」さん。途中から内部監査員教育に参加予定です。
内部監査員に必要なISO9001(QMS)の知識
ISO9001(QMS)の概要について説明します。
- 最初から質疑応答形式は難しいので、まずは、ISO9001(QMS)の概要について説明します。
QMS(品質マネジメントシステム)とは
QMS(品質マネジメント)システムとはどの様なものなのか、私は次のように説明しています。
品質マネジメントシステムとは、顧客を重視して、PDCAを回し、継続的改善を続けることです。
いずれは自分の言葉で説明できるようになって欲しいですが、内部監査リーダーになるまでは、「こんな説明を受けた」ということを伝えられればよいと考えています。
品質マネジメントシステム、つまり、ISO9001でいう「品質」は、いわゆる「モノの品質」ではありません。
ISO9001の品質は、
「品質=ビジネス(経営)の品質」
のイメージです。
ISO9001に関する用語の説明
ISO9001の要求事項に出てくる用語については、配布資料で下表程度の説明を加えています。
用語 |
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QMS |
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品質 |
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要求事項 |
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利害関係者 |
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適合品 |
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不適合品 |
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顧客満足 |
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品質マニュアルの用語の説明や、社内向けのISO9001の説明資料などがあればそれを流用します。
ISO9001の用語については、社内で実際に使われてくる用語に置き換えて説明できるようになることが望ましいです。
当社の品質マネジメントシステムとは
会社にとって品質マネジメントシステムを運用するメリットについては、配布資料で簡単に説明しています。
- メリットの「( )」の内容は、品質マニュアルと含むISO規定類との関係を意識しています。
当社のQMSは、当社製品の品質保証の証(あかし)となるものです。
当社のQMSを運用することで、以下のメリットがあります。
- お客様からの信頼が高まり、ビジネス(仕事、取引)をスムーズに運ぶことができる。(ビジネスの前提:メーカーとして当たり前)
- 社長の経営理念や方針を会社全体に浸透させることができる。(品質目標、部署目標、個人目標:手段となる)
- 仕事の流れや手順が明確になり、業務の改善や効率化が進められる。(プロセス管理、業務フロー、標準化)
- リスク管理や迅速なクレーム対応により、問題の発生を防ぐことができる。
当社のQMSに対し期待されていること
当社が品質マネジメントシステムを運用することによるメリットについては、配布資料で簡単に説明しています。
- 顧客要求(QCD)及び法令・規制要求事項を満たした製品の持続的(一貫性を持った)提供
- 利害関係者を含めた顧客満足の向上
- 社内外の環境変化に応じたリスク対応
- 顧客の信頼を得てビジネスを円滑に進める(協力会社を含む当社製品に対する品質保証)
会社のルールとQMSとの関係
会社のルール(就業規則や安全衛生など)とQMSのルール(品質マニュアルとISO関連規定)との関係については、教育対象者のイメージを確認して、丁寧に説明しています。
会社のルールとQMSのルールについて、どんなイメージをもっていますか?
製造やモノづくりに関するルールが、QMSのルールだと思います。
内部監査などで聞いてみると、
- 「ISOのルールというルールがある」
- 「ISOと会社のルールとは別のルール」
といったイメージを持っている場合が少なくないようです。
ISOのルールは、下図のように会社のルールの一部です。
図 ISOのルールと会社のルール
上図を使い、次のことを捕捉します。
- ISOのルールとは、具体的には、品質マニュアルとISO関連規定のことです。
- 会社のルールの中に、ISOのルールは含まれます。
- 社会のルールとは、会社員である前に、社会人としてのルールがあるということです。(5Sや品質管理における、職場マナーや躾(しつけ)などをイメージしています。)
QMSの理解を深める方法
内部監査員として必要な知識を学んだり、理解を深めるための手段を簡単に説明します。
以下の「品質マネジメントシステムを理解していくために」については、配布資料を使って説明しています。
品質マネジメントシステムを理解していくために
内部監査員として、品質マニュアルとISO関連規定を理解することが必要です。
しかし、それなりにボリュームがありますので、品質マニュアルやISO規定類の知識を増やし、理解していく方法の1例です。
- 品質マニュアルの「組織図」と「品質マネジメントシステム体系図」を見て、自分が関係する仕事が会社の中でどのような位置づけ(プロセス)にあるかを確認する。
- 品質マニュアルの図、表を見る。
- 品質マニュアルの本文及び自分が関係する仕事に関する規定を読む。
内部監査対象部署のISO関連規定についても、規定の「業務フロー図」を見て、業務プロセスや用語を確認します。
個人目標と品質目標との関連
イメージとしては、
「個人目標達成」 → 「部署目標達成」 → 「全社目標達成」
と考えます。
例えば、営業部署は、
(顧客満足の向上)=(営業予算達成)
と考えます。
営業以外の部署は、予算達成につながる(支援する)目標を設定し達成すると考えます。
品質目標と教育・訓練
品質目標と力量と教育・訓練との関係は、次のように考えます。
- 品質目標を達成するために必要な力量(評価項目)を設定(力量マップを作成)する。
- 部署長は、各メンバーの力量を評価(力量マップ作成)し、個人目標を設定する。
- 個人目標を達成するために必要な教育・訓練を計画し、実施、評価、記録を残す。
講師側のポイント
ISO9001(QMS)の概要について説明する場合、内部監査員候補者であってもISO9001やQMSについての知識は無いと考えて、配布資料を準備しています。
配布資料を作ることで、講師が説明する内容を整理することができます。
配布資料があることで、教育中に思いつくまま説明したり、早口になったり、話題が脱線したりするのを防ぐ効果もあります。
配布資料のボリュームは、A4で1ページか2ページ程度にします。
まとめ
内部監査員として必要なISO9001(QMS)について説明します。
実際の教育では説明を30分程度、質疑応答を含め1時間以内に終わらせるなど、プレッシャーをかけないように注意しています。
ここでは、配布資料を使用して以下の項目について説明することで、ISO9001(QMS)のイメージを説明しました。
- 内部監査員に必要なISO9001(QMS)の知識
- QMS(品質マネジメントシステム)とは
- ISO9001に関する用語の説明
- 当社の品質マネジメントシステムとは
- 当社のQMSに対し期待されていること
- 会社のルールとQMSとの関係
- QMSの理解を深める方法
- 品質マネジメントシステムを理解していくために
- 個人目標と品質目標との関連
- 品質目標と教育・訓練
- 講師側のポイント