いつもの作業なのにミスをすることは、経験の浅い新人も経験豊富なベテランも同じようにあります。
ミスの原因がヒューマンエラーに関するモノである場合、新人とベテランとの違いは、次のような場合が多いです。
- (経験の浅い)新人は、自分のミスに気づかず、次工程でみつかる。
- ベテランは、自分のミスに気づくので、ミスを修正している。
ここでは、経験豊富なベテランでもミスをするヒューマンエラーについて、その原因と対策について説明します。
ミスをしてしまった新人さんとの会話から
特に経験の浅い人がミスをすると、自分自身を責めてしまい自信をなくしてしまうことがあります。
そんな時、起きてしまったことはどうにもなりませんので、ミスをしてしまった人と原因と対策について話をすることがあります。
例えば、次のような感じです。

仕事でミスをしてしまいました。どうすればよいのでしょうか?

今回のミスはヒューマンエラーといわれるもので、根本的な対策が難しいことでもあるので、気にしすぎないようにしてください。

ベテランの方のミスの話は聞きませんが、ベテランになればミスをしないんですよね?
ベテランにならないとミスしないようにはなれないのでしょうか?

それは、少し違います。
ベテランは、ミスをしないのではなくて、ミスに自分で気づいて自分で修正しているだけですよ。

???(どういうことだろう???)
こんな感じでミスをした新人さんと話をしていると、新人さんがミスについていろんなことを自分の言葉で話しだしてくれることが多いです。
この際注意することは、あくまでも聞き手として、どんな状況で不具合が起きたのかをいろんな角度からできるだけ事実を拾い上げていくようにします。

ミスの原因を探すのではなく、ミスが起きた状況をできるだけ客観的に具体化していくイメージです。
ベテランもミスしてる(自分のミスに気づくことができる)
一般的に「ベテランになるとミスをしなくなる。」というイメージがあるようですが、これは正確ではありません。
ベテランになれば、ミスの回数(頻度)は減りますが、ゼロになるわけではありません。
自分の経験やベテランの方と話をしていても、
「ベテランはミスをしないのではなく、ミスしていることに気づくので修正している。だから、結果的にミスをしていないようにみえる。」
というのが現実です。
特に、ミス(発生した不適合や不具合)の原因が、ヒューマンエラーである場合には、ベテランでもミスをすることはあります。
ヒューマンエラーの対策が難しい理由
根本的なヒューマンエラーの対策は、人による判断を取り除くことです。
しかし、実際には、ヒューマンエラーの根本的な対策が難しい場合は少なくありません。
技術的には対策可能でもコスト的に現実的ではない場合は、少なからずあるからです。
- 例えば、目視による見逃しが原因なのに、ダブルチェックを対策とするような場合
また、難しい(高い力量が必要な)作業だからミスをしやすいわけではありません。
むしろ、特別な作業や難しい作業は、作業者も作業支持者も注意しているので、ミスは起きにくいものです。
ベテランが自分のミスに気づける理由
ベテランになると、なぜ自分のミスに気づけるようになるのか?
これは、ミスをした時に、ミスの原因を自分で考え、自分で同じミスをしないようにしようとしているからです。
PDCAというと大げさですが、ミスをすると、
- ミスの原因を考える。
- ミスしな方法を考える。
- ミスのしない方法を試す。
- ミスをしなくなれば、そのまま続ける。
を自ら回しています。
経験を積んでいくと、次のようなことも考えるようになっていきます。
- 自分では気づけない思い込みによるミスを想像して作業する。
- 急ぎや割り込みが入った場合に、作業再開時にミスをしないように作業を中断する。

経験を積むことで、「人はミスをする」ことを前提条件としてとらえるようになっているというイメージです。
自分のミスに気づくには
経験の浅い人が自分のミスに気づけるようになるためには、
- 作業をしたらミスしてないか確認すること
が必要になります。
この時の注意点は、
- 確認作業をやり過ぎないこと
です。
この理由は、
- 確認作業をすることが目的になる。
- 作業が遅くなったり、作業時間が少なくなる。
- 結局確認できなくなる。
- ミスをする。
という悪循環がはじまってしまうからです。
ヒューマンエラー対策のポイント
ヒューマンエラーの対策をするときのポイントは、
- ヒューマンエラーによるミスは発生すること
を受け入れることです。
こうすることで、
- 継続不可能なヒューマンエラー対策を対策としない。
ことができます。

根本的なヒューマンエラー対策を採用できない場合には、リスクを受け入れる(受容する)という考え方が必要だと考えています。
リスクを受け入れないと、現実的な対策や対応をすることにつながらないと考えているからです。
参考:変更点管理について
ヒューマンエラーは、4Mや3Hといわれる変更点で発生しやすくなります。
以下、4Mと3Hについて、参考記事を紹介します。
4Mと変更点管理
モノづくりでは、「どのような品質のモノをいくらで、いつまでに何個作るか」、つまり、品質(Quality)、原価(Cost)、納期(Delivery)の3つの要素が求められています。
QCDは、以下の4Mに大きな影響を受けます。
- ヒト(Man)
- モノ(Material)
- 設備(Machine)
- 方法(Method)
また、4Mがいつ変化するかで分けると、次の2つの変化点が考えられます。
- 計画的変化点:事前に4Mに変更があることが分かっている場合
- 突発的変化点:何らかの理由で急に4Mが変更となった場合
4Mによる変更点管理については、以下の記事をご参照ください。


3Hによる変化点での確認
一般的に、事故やトラブルは「初めて、変更、久しぶり(3H)」の場合に発生することが多く、定常時には少ない傾向があります。
そこで、事故やトラブルが発生しないように、事前に「初めて、変更、久しぶり」の3Hの視点で検討し、確認しながら仕事を進めます。
例えば、モノづくりにおいて3Hを確認するタイミングの例は、次の様になります。
- 初めて:生産立ち上がり
- 変更:製造条件変更
- 久しぶり:再稼働


まとめ
いつもの作業なのにミスをすることは、経験の浅い新人も経験豊富なベテランも同じようにあります。
ここでは、経験豊富なベテランでもミスをするヒューマンエラーについて、その原因と対策について、以下の項目で説明しました。
- ミスをしてしまった新人さんとの会話から
- ベテランもミスしてる(自分のミスに気づくことができる)
- ヒューマンエラーの対策が難しい理由
- ベテランが自分のミスに気づける理由
- 自分のミスに気づくには
- ヒューマンエラー対策のポイント
- 参考:変更点管理について
- 4Mと変更点管理
- 3Hによる変化点での確認