レビューと言えばデザインレビュー(Design Review)設計審査が思い浮かびますが、ISO9001のレビューは、次の3つです。
- DR(設計審査)
- レビュー(検証)
- 妥当性確認
レビューの実施状況は、会社の規模だけでなく、商品企画や設計・開発の進め方など様々です。
ここでは、経験の浅い設計担当者を想定して、モノづくりの品質・コスト・納期、コストを意識した設計とモノづくりについて説明します。
モノづくりと品質(Q)、コスト(C)、納期(D)
レビューの判断基準となる基本的な要素に、下表に示す品質(Q)、コスト(C)、納期(D)があります。
要素 | 補足説明 |
---|---|
品質(Quality) |
|
コスト(Cost) |
|
納期(Delivery date) |
|
モノづくりで求められている品質(Q)、コスト(C)、納期(D)は、
- 品質は当たり前
- 納期を守るのも当たり前
- コストは下げ方向のみ
という場合が多いようです。
現在のモノづくりの会社のイメージは、
- 品質・コストについては、頑張って維持している。
- コストについては、素材や製造コストが上昇傾向にある。
- 値上げはしたいが、経営的な判断もあり後追いの傾向にある。
のではないかと考えています。
なお、QCDの他には、
- 特許(Patent):自社特許、自社以外の特許による影響
- 時間:例えば、会社全体の製品販売や新製品開発予定
- 情報:会社を取り巻く環境(ニーズ、技術動向、市場への参入など)
などもありますが、基本はQCDです。
コストを意識した設計課題と対策
品質と納期を前提とすると、製品開発でのポイントは、コストになります。
例えば、次のような設計課題(設計目標や設計思想のイメージ)があります。
- 同機能であれば、製造コスト(原価)を抑える設計
- 付加価値の高い設計であれば、後継機でも価格を上げられる商品力をもつ設計
社内的なコストを下げるためには、次の手段があります。
- 製品設計のスピードを上げる。
- 試作や検証での手戻りを減らす。
ノウハウの共有により設計スピードを上げる
設計スピードを上げるためには、技術部門(個人だけでなく技術部門全体)の力量を上げることが必要になってきます。
例えば、次のことは技術部門内で個人のノウハウを部門内で共有していくことで進めることができます。
- 設計知識(材料選定、加工、組立)の共有から標準化
- 加工や組立のノウハウ(コストを下げる設計、類似設計の活用)
ノウハウの共有化のためには、設計者個人のノウハウを言語化する(文字や文書、図面や仕様書などの技術文書にする)ことが必要になります。
図面作成を例にすると、設計者個人のノウハウが言語化され共有化されるイメージは次の通りです。
- 設計者が個人的に重要だと思っていること、注意していること、分からなかったこと、調べたこと、ミスしたことなどを記録に残す。(まずは、メモ書きでもよい。アウトプットすることがポイント)
- 設計者個人がの記録の中で、繰り返しミスをしていることや重要なポイントを自分専用のチェックリストにして、使ってみる。
- 設計担当者が定期的に集まる時間を作り、失敗したこと、うまくいったこと、疑問点などを共有する。
- 設計をはじめて困ったことやミスしたことなどは、文書化する。(例えば、新しい設計者が入ってきたときに、図面の作り方について、自分のやり方ではなく、技術部門として共通のやり方が分かる手順書的なものを作り上げていく。)
- 設計担当者だけでは分からないことは、ベテランの設計者に聞く(勉強会のような形式が続くようです。)
DRだけではないレビューを意識する
DRは設計審査ですが、上述の様に、設計者個人のノウハウを残し、技術部門内のノウハウとして活用していく際に行っていることもレビューです。
設計者が図面を作成し、検図してもらうのもレビューです。
検図や承認をする、中堅あるいはベテランの設計者の方は、日頃の設計業務の中で技術部門内で共有した方がよいことや、共通化して欲しいことを言語化する。(言い出した人がやる運用でもよいが、それが苦手な場合もあるので技術部門の長と相談しながら進める方法もあります。)
レビューをすることは、自分以外の人の目で確認してもらうことそのものともいえます。
自分以外で技術部門内なら通常のレビューですし、製品開発で行うDRは他部署を含めた設計の審査(レビュー)ということです。
コストを意識したモノづくり
モノづくりにおけるコストは、設計で決まるといっても過言ではないと考えています。
製品開発であれば、協力会社への製造委託だけでなく、自社工場の場合でもムダなコストをかけないためのレビューを行い、製造プロセスや作業手順書等が製造部門内で共有され、コストを意識したモノづくりが定着していく場合が多いと思います。
製品開発や製造プロセスというほどではないが、製造部門内には、素材から部品への加工や組立などでのちょっとしたノウハウ(コツ)があります。しかし、これらのノウハウは、属人化してしまい、製造部門内で共有されていない場合も少なくないようです。
個人のモノづくりのノウハウが属人化する理由
製造部門内でのノウハウが共有されない理由は、
- そもそも、ノウハウを持っている個人にとっては当たり前のことで、特別なこと(ノウハウ)とは思っていないこと
があります。
個人にとっての当たり前が、新しく配置された人にとっても当たり前であることはまずありません。製造部門内での担当替えをする場合にも同じことがいえます。
属人的なプロセス(作業)が個人のノウハウとしてある場合、これを、個人からアウトプットして作業手順書等に残さないと、個人からアウトプットされずないままで、他の人に共有されることなく埋もれてしまいがちです。
特に、3H(初めて、変更、久しぶり)の製造においては、手順書等に残すだけでなく、製造委託先における4M変更や3Hを想定した対策も必要になります。
モノづくりの不具合や失敗(ミス)を共有するレビュー
製造に関するノウハウは、不具合や失敗(ミス)が起きて対応した後に、類似のことが起きないようにすることが難しいようです。
モノづくりの現場でも、設計開発におけるDRのように、製造部門のレビューを定期的に行う様な取り組みが有効だと考えています。
レビューというと会議の様なイメージがありますが、複数の人で経験や意見を共有する機会を、できれば定期的に行うという意味合いです。
モノづくりの現場である工場では、毎朝の朝礼などで、その日の作業内容の確認や割り込みや追加作業などの指示もあり、日々のモノづくりで忙しいです。
4M変更や3Hに起因する不具合について、不具合対応や内部監査でお話を聞くと、4M変更や3H対策まで行うのはとても無理といった本音がでることもあります。
安全に関する事故や重大な品質不具合が起きないようにするためにも、製造部門でのレビューは有効だと考えていますので、設計部門からのアプローチや意見交換からはじめるのもよいのではないでしょうか。
まとめ
レビューと言えばデザインレビュー(Design Review)設計審査が思い浮かびますが、ISO9001のレビューは、DR(設計審査)、レビュー(検証)、妥当性確認の3つです。
ここでは、経験の浅い設計担当者を想定して、モノづくりの品質・コスト・納期、コストを意識した設計とモノづくりについて説明します。
- モノづくりと品質(Q)、コスト(C)、納期(D)
- コストを意識した設計課題と対策
- ノウハウの共有により設計スピードを上げる
- DRだけではないレビューを意識する
- コストを意識したモノづくり
- 個人のモノづくりのノウハウが属人化する理由
- モノづくりの不具合や失敗(ミス)を共有するレビュー