一度はコンサルを目指していた私ですが、これまで経験してきた品質マネジメントシステム、ISO9000シリーズについて振り返り、「ISOは儲からない」という話と、ISO認証取得に際してのコンサルについて今思っていることを紹介します。
品質マネジメントについての思い出
ISO9001:2000の認証取得について相談されたことをきっかけに品質マネジメントの勉強を始め、認証取得をするならISO9000審査員研修コースが一番と考え受講しました。その後、品質マネジメントシステムISO9001:2000の認証取得のお手伝い、ISO9001:2008の新規構築、ISO9001:2015への改定などを経験してきました。
ここでは、一度はコンサルを目指したこともあった私の品質マネジメントに関する思い出を紹介します。
初めてISO9000シリーズ認証取得の相談を受けた時、「品質マニュアルは自社で作る」方針で進めました。結果、約1年かかりましたが認証取得となりました。その後、自力で品質マニュアルを作った会社は今では地域No.1、一方、たたき台として作成した品質マニュアルをそのまま写していた会社は今ではなく、小さな会社は社長次第であることを実感させられました。
コンサルを頼んでISMS(ISO27001)を導入した会社では、できあがった情報セキュリティ規定は大企業のひな型をコピーしたようなイメージで、認証取得後大幅に改定を進めていたようです。情報システム関連のマニュアルは作業手順書が規定になっているようなイメージで、作った人しか内容を理解できない部分もあり、審査対応や維持は大変だったようです。
あるメーカーの設計開発DR(デザインレビュー)は、「書類さえあればよい。何とかなる。」と、設計開発プロセスの確認は形骸化、結果開発遅れなどの問題が出てきても仕方ないというか、当然の結果となっていたようです。
コンサルもギブアップしたらしいと耳にした会社は、ISO歴10年超のベテラン選手でしたが、実態との違いは大きく少しづつ改定を進めているそうです。
品質マネジメントシステム、品質マニュアルをどのように作っていくかについては、ISO9000審査員研修コースを受けた頃から変わりなく、
「要求事項にやっていることを当てはめ、欠けている部分を最小限のレベルで追加し、品質マネジメントシステムを作り回してみること」
がポイントであり、そうするように心がけています。
ISO(品質マネジメントシステム)は儲かる?
「ISO(品質マネジメントシステム)では儲からない。」とはよく聞きますが、確かに「ISO9000シリーズの認証を取得すれば受注が増える。」とはならないように思います。
仮に売り上げが増えているとしたら、それはISOを取ったからではなく、品質マネジメントシステムに取り組むことで社員、会社が成長し、変わったからだと思うのです。
ISO9000シリーズ(品質マネジメントシステム)は、使うものです。「ISOは儲からない」との背景には、認証取得が手段ではなく、目的になっていることもあるのではないでしょうか?
ISOを取ったからといって突然商品が売れるようになるわけではありません。ISO9000シリーズを利用してさらなる利益を追求できる品質マネジメントシステムを作り上げてみてはいかがでしょうか。
ISOのメリットについて思いつくままに列挙します。
- ISO9001:2015版になり、会社運営(経営)のツール、枠組み(フレームワーク)としてさらに使いやすくなったと思います。
- 品質、環境だけでなく、ISMS(情報管理)、労働安全なども含めた会社全体のルールの枠組みとして使えます。
- 情報は、なんでもかんでも公開、共有すればよいわけではありません。共有するには、情報セキュリティについての共通認識が必要です。自社のノウハウにはなかなか気づきにくいものです。例えば、社外秘の情報なのに、社外で無意識のうちに口にしてしまうのでは、折角の情報共有がリスクになってしまいます。
- 認証取得を会社、社員の成長のきっかけに利用するのもありだと思います。顧客満足や「次工程はお客様」の考え方など、ツールとして利用できると思います。
認証取得を必要としていなくても、以下のようなメリットがあると考えています。
- 内部監査やマネジメントレビューは、振り返りのよいチャンス
- 内部監査で進捗確認(PDCA)や現場で困っていることのヒアリング
ISOコンサルに何を期待するのですか?
「ISOは初めてだからコンサルの力を借りようか?」と考えた場合、何のためのISOなのか?、コンサルに何を期待するのかについてよく考えることが大切です。
かつて、入札の際にISO9000の認証取得をしていないと事実上不利とのことで、認証取得ブームがありました。そもそも、ISOは利用、活用する手段であり、認証取得を目的に形だけ導入してしまうと、認証取得後の内部監査、マネジメントレビュー、サーベイランスなどなどで困ったことになりがちです。
コンサルタントに求められるのは、文書審査や実地審査だけでなく、認証取得後も自力で進められるように助けるサポート役なのではないでしょうか。
ある意味、迷った時、弱気になった時、行き詰まりそうな時など、ISO推進者がくじけそうで助けを必要としている時に、例えば「社長の出番です。」と進言し、事態を好転させるきっかけを作るとか。
コミュニケーションを深く取れるようになってくれば、悩み事、グチの聞き役、頭が煮詰まった時の話相手など、そんなコンサルになり、会社を作る手助けをしたいと考えていたこともありました。
(今もその気持ちは消えていませんが、ではどうするかという具体的な進め方、実現に向けて何をするのか思い至らず、今に至っています。社長と1対1で話すことから学ぶことも多く、やりがいもあることは経験させて頂きましたが、同時にこれを仕事にするととても自分のエネルギーが持たないなと感じてしまったことも事実です。)
困ったときの助言や話し相手がコンサルタントの仕事として成り立つのかについては疑問が残りますが、専門性と幅の広さもあれば、これからの時代でもニーズはありそうです。
コンサル頼みのISO導入は百害あって一利なし。折角の機会利用しなければもったいない。
ISO9000シリーズ、品質マネジメントシステムを導入しようと決意し認証取得に取り組むならば、認証取得を目標とするのではなく、認証を取得したあとを考えて取り組むのがよいと思います。
せっかく取り組むのだからこそ、「会社やチームを変える」ためのチャンスとしても、積極的にISO導入の機会を利用しなかればもったいないと思うのです。
これは新規取得の場合だけでなく、2015年版への移行は済ませたがもっと活用したい、認証取得は別にして情報セキュリティや労働安全にも活用したい場合などにも言えることです。
コンサルを利用するなら目的を明確にして期待する成果について考えてみるとよいと思います。ISOの認証取得は難しくありません。認証取得後の維持が大変にならないようにしておくことが大切なのです。
(入札対応のためISO9001を導入するのに、自社で運用できることを重視していたため、目標としていた入札に認証取得が間に合わなかったことがあります。顧客満足、顧客要望を分かっていなかった結果だと思っています。)
繰り返しになりますが、せっかく品質マネジメントに取り組もうと決めたのですから、不安に思うことはあっても自力で取り組むことが大切です。認証取得を目標としてコンサルを利用するのは百害あって一利なしになりかねないと思います。全社的に何事かに取り組む良い機会でもあるので、ぜひ有効に活用して欲しいと思います。
私の品質マネジメントシステムに関する経験からの気づきなどを以下に列挙します。
- コンサルが提案する品質マネジメントシステムをそのまま導入することは、百害あって一利なしです。何のための品質マネジメントなのかよく考えてください。
- 中小企業は自分で何でもやってきた経営者が一番優秀です。適時・適切な判断力も行動力もあります。ISO導入はNo.2やこれからのリーダー候補を育てるよい機会にもなると思います。
- コンサル主導は悲劇?もはや喜劇?と思うこともあります。
- ISO9001:2015版は、これまでISO9000シリーズに取り組んできた会社にとっても救世主(振り返りの良い機会)になるのではないでしょうか。
- 一気に変えようとするとムリが出ます。マネジメントレビュー、品質方針と品質目標、ISO9001:2015の要求事項に実業務を割り当て、不足する部分のみ最低レベルで追加することから始めるのが良いと思います。
- ありたい姿を品質マニュアルや規定に反映しないこと。文書化は、できるようになってからで遅くありません。品質マネジメントを回せるようになったら少しづつ改善を進め、あせらず、あきらめないことがポイントです。
まとめ
一度はコンサルを目指していた私ですが、これまで経験してきた品質マネジメントシステム、ISO9000シリーズについて振り返り、今思っていることを紹介しました。
- 品質マネジメントについての思い出
- ISO(品質マネジメントシステム)は儲かる?
- ISOコンサルに何を期待するのですか?
- コンサル頼みのISO導入は百害あって一利なし。折角の機会利用しなければもったいない。