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ISO9001の航空宇宙及び防衛産業向けセクター規格JISQ9100

ISO9100航空宇宙のQMS

ISO9001(JISQ9001)品質マニュアル類の改訂を進めたり、内部監査などを利用して会社全体の品質マネジメントシステムを改善するヒントになるのではと思い、JISQ9100を読んでいます。(実は何回かチャレンジしているのですが、気が進まず先送りにしていました。)

ISO9100(日本語版はJISQ9100)は、航空、宇宙及び防衛分野向けの品質マネジメントシステム(ISO9001)のセクター規格です。

規格名称:

日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016

品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項

Quality management systems- Requirements for aviation, space and defense organizations

ISO9001とISO9100は、品質マネジメントシステムに関する要求事項です。

ISO9001とISO9100とでは、規格番号の「1」の位置が違うだけですが、ISO9100は航空、宇宙や防衛分野向けの品質マネジメントなであるため、大きくは次の様な違いがあると考えています。

  • ISO9001では要求事項の実現方法について、認証取得組織(会社)が決めた方法でよい。
  • ISO9100では要求事項の実現方法について、ISO9001より一歩踏み込んだ具体的な要求を追加している。

ここでは、ISO9100の概要とJISQ9100要求事項の用語などを例に、ISO9001との違いについて説明します。JISQ9100は2016年版をISO9100(JISQ9100:2016)を対象とし、JISQ9100の範囲は序文から用語の定義までとしています。

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ISO9001とISO9100の違いをイメージする

製品で比較すると分かりやすいかもしれません。

  • ISO9001は、いわゆる民生品(航空、宇宙、防衛分野以外の製品)の品質マネジメントです。
  • ISO9100は、航空、宇宙や防衛(自衛隊)の分野が対象です。

もう少し具体的に違いを比べてみます。

  • QCD(品質、コスト、納期)で比較してみると、ISO9100では民生品より高いレベルの品質マネジメントを要求されています。
  • 航空機、宇宙船(ロケットや衛星)、防衛産業(戦闘機、空母、戦車など)は、一般的な製品と比べて、より高い信頼性(必要な機能を発揮する、故障や不具合の発生率など)を要求されることはイメージできるかと思います。
    • 旅客機が飛行中に故障しても地上まで降りられることが求められます。
    • 宇宙では、故障しても修理にいけません。
    • 防衛産業向けでは、使う人や使われる環境からして大きく違います。

ISO9001とISO9100の規格上の違い:序文から

ISO9001(JISQ9001:2015)とISO9100(JISQ9100:2016)を比べながら読んでみて、気づいたことを紹介します。

なお、ISO9100とISO9001の規格の違いについては、ISO9100の「附属書」に書かれています。関連規格との関係を知りたい場合には参考になります。

対象とする産業の分野が違う

  • ISO9001:いわゆる民生品
  • ISO9100:航空、宇宙、防衛産業

なお、自動車業界の品質マネジメントを簡単に紹介します。

  • アメリカでISO9001をベースに自動車向けのQS9100ができた。
  • その後、ISO/TS 16949になる。(ISO9001のセクター規格となった。)
  • 現在は、IATF(International Automotive Task Force) 16949が自動車産業の品質マネジメントシステム要求事項として使われている。

JISQ9100の序文から「適用対象」

原文の方が伝わりやすいと思いますので、JISQ9100の序文の適用対象の部分を引用します。

この規格は、航空、宇宙及び防衛分野の製品及びサービスを、設計、開発又は提供する組織が使用することを意図している。また、組織自身の製品及びサービスに対する保守(整備)、補用品又は材料の提供を含む引渡し後の活動を行う組織が使用することを意図している。

注記 製品が納入ソフトウェアである又は納入ソフトウェアを含む組織は、ソフトウェアの設計及び開発又は組織のマネジメント活動を計画及び評価する場合、IAQGが作成した9115規格を基に発行される AS/EN/SJAC 9115規格(参考文献を参照)を使用することが望ましい。SJAC 9115規格は、ソフトウェアをJIS Q 9100品質マネジメントシステムの適用範囲に追加することが望ましい場合に、この規格の要求事項への追加の手引を示している。

民間用又は防衛用の航空分野の品目及び製品に対して、保守(整備)又は継続的な耐空性管理サービスを提供することが主要業務である組織、及び生産業務からは独立した業務として又は実質的に別の業務として、整備、修理及びオーバーホール業務を実施する製造元業者は、IAQGが作成した9110規格を基に発行されるAS/EN/SJAC 9110 規格(参考文献を参照)を使用することが望ましい。

部品、材料及び組立品を調達し、これらの製品を航空、宇宙及び防衛産業の顧客に販売する組織は、IAQGが作成した9120 規格を基に発行される AS/EN/SJAC 9120規格(参考文献を参照)を使用することが望ましい。これには、製品を調達し、小口販売する組織のほか、製品に関する顧客又は規制上のプロセスを調整する組織を含む。

引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より

ISO9100の適用範囲には、目的に応じて使用すべき規格についても具体的に示されています。

つまり、航空、宇宙及び防衛分野の製品及びサービスについては既存のルール(別の要求)があるということです。

ISO9100の認証を取得したからと言って、対象分野に参入できるわけではないということだと考えています。

はかせ
はかせ

ISO9100の認証取得を持っていることは、ISO9001よりは一段階上のレベルの品質マネジメントを運用していることにはなるので、対外的な信頼性にはつながるのではないでしょうか。

ISO9001とISO9100の規格上の違い:適用範囲から

JISQ9100の序文の適用範囲の部分を引用します。

JISQ9100は、

  • JISQ9001の要求事項をそのまま取り入れ
  • 航空、宇宙及び防衛産業の要求事項を、定義及び注記について追加したもの

だということが分かります。

この規格は、JIS Q 9001:2015の品質マネジメントシステムの要求事項をそのまま取り入れ、航空、宇宙及び防衛産業の要求事項、定義及び注記について追加して規定する。

この規格で規定する要求事項は、顧客及び適用される法令・規制要求事項を(代替するものではなく)補足するものであることに留意する。

この規格の要求事項と顧客又は適用される法令・規制要求事項との間に矛盾がある場合、後者を優先しなければならない。

引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より

ISO9001とISO9100の規格上の違い:用語及び定義から

JISQ9100の用語及び定義では、ISO9001に追加された用語があります。

航空機や防衛産業についての知識や経験のある方だと、より具体的に追加された用語の意味するところをイメージできるのではないでしょうか。

JISQ9100の用語及び定義で追加された5つの用語を列挙します。

  • 模倣品(counterfeit part)
  • クリティカルアイテム(critical items)
  • キー特性(key characteristic)
  • 製品安全(product safety)
  • 特別要求事項(special requirements)

用語の意味は引用しませんが、航空、宇宙及び防衛分野の製品やサービスに求められる要素です。

例えとして適切ではないかもしれませんが、開発プロジェクトを製品価格、販売期間、設計開発に要する予算などで比べてみると、以下の製品では、技術的な要素だけでなく、それに必要な予算、設計・開発・製造、試作・量産などのリソースにも大きな(桁違いの)違いがあります。

  • 家電製品
  • 自動車
  • 航空機
  • 戦闘機

これは、私のイメージになりますが、

  • ISO9100は航空、宇宙及び防衛分野に求められる特別な要求もありますが、それ以外については、ISO9001の要求と同じことをより具体的なレベルで要求している

と考えています。

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参考:日本産業標準調査会の「JIS検索」

JIS規格は、ネットで見ることができます。

日本産業標準調査会(JISC)の「JIS検索」のリンク先を紹介します。

検索の仕方は、以下のリンク先を参照してください。

ホーム>>データベース検索>>JIS検索

まとめ

ISO9100(日本語版はJISQ9100)は、航空、宇宙及び防衛分野向けの品質マネジメントシステム(ISO9001)のセクター規格です。

ISO9001(JISQ9001)品質マニュアル類の改訂を進めたり、内部監査などを利用して会社全体の品質マネジメントシステムを改善するヒントになるのではと思い、JISQ9100を読んでいます。

ここでは、ISO9100の概要とJISQ9100要求事項の用語などを例に、ISO9001との違いについて、以下の項目で説明しました。

  • ISO9001とISO9100の違いをイメージする
  • ISO9001とISO9100の規格上の違い:序文から
    • 対象とする産業の分野が違う
    • JISQ9100の序文から「適用対象」
  • ISO9001とISO9100の規格上の違い:適用範囲から
  • ISO9001とISO9100の規格上の違い:用語及び定義から
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