モノづくりには、QCD、品質、コスト、納期(生産時間)が求められ、治具(ジグ)というと、作業性を改善することが思い浮かびます。
モノづくりとして見ると、治具も様々な商品と同じようにQCDが求められ、日々追求されています。
通常の商品と治具との違いには、次の様な事があります。
- 治具はモノづくりの現場、つまり社内で使われる。
- 治具を使って商品が使われる。
コストに注目すると、
- 商品はお客様から利益を得る。
- 治具は、ムダ・ムラ・ムリを取り除き、コストを下げることで利益につながる。
と考えています。
「はじめての治具設計 西村 仁(著)」を読んでみたところ、治具設計だけではなく、モノづくりにおける製品開発にも共通することがありましたので、(書評ではなく)本の紹介と感想、改めて考えされられたことについてまとめました。
「はじめての治具設計」の紹介
本のタイトルに「はじめて」と書かれている通り、専門用語をできるだけ使わず図も多いので、読みやすい本となっています。
モノづくりの知識や体験などが少なくても、図が豊富に用いられているため読み進めることができると思います。
内容は、Amazonの説明文から引用しますが、以下の通りです。
治具をはじめて設計する方や、基礎をきちんと学んでみたいと思っている方を対象に、メカ設計と作業設計を解説します。
出典:「はじめての治具設計」のAmazon紹介ページより(リンクは下記参照)
本書は治具設計について書かれているのですが、読んでみると、治具以外のモノづくりにおける、アイディアを形にして商品化することと共通する考え方も多いと感じました。
これは、本書で詳細説明がありますが、以下の一文がその理由だと考えています。
- 治具は、メカ設計と作業設計の2つが必要
治具では、作業が楽になる、楽になるということは必要な品質を楽に速く保てるということです。
ヒット商品は、品質は当たり前、使いやすくて、値頃感(価格以上の価値を感じさせる)があります。
治具も商品も、使う人にメリットがあり、ビジネスとして利益を出すためにQCDを追い求めるという点では何も変わらないからだと考えています。
治具設計とCAEの6自由度
詳細は、本書を読んでいただくとして、治具としての機能を満足するために、CAEと同様6自由度が出てくるのは、目から鱗が落ちる体験でした。
CAEの6自由度は、下図の様にX、Y、Zの3軸の並進と、X、Y、Zの3軸の回転のことです。
図1 座標系と自由度のイメージ
ここで説明のためサイコロ(立方体)をイメージしてください。
治具では、
- まず、1つ目の面を3点で支持(固定)
- 2つ目の面を2点で支持
- 残る1面を1点で支持
することで、正確な位置決めを実現することができます。
ただし、上述のどこまで治具で支持するかは、加工精度などの必要性を考慮して、治具を設計していきます。QCDの概念が治具設計にも必要になります。
一例ですが、上述の様にすべての支持をすれば、確実に対象物を固定することができますが、他にも次の様な要求があり、QCDのバランスを取るための創意工夫も必要になってきます。
- 作業性を上げるためには短時間で対象物を固定できること
- 繰り返し同じように対象物を固定できること
- 長期間の使用で治具の精度などが劣化しないこと
治具設計と機械設計の違い
治具設計には、治具を使う作業者とのコミュニケーションが必須です。
「はじめての治具設計」という書名ではありますが、設計初心者やCAE初心者の様な方が、モノづくりとはどんなものかを理解する助けにもなるのではないでしょうか。
本書の「コラム 治具改善の進め方」は、著者の考え方が分かりやすく示されていると思います。私が理解した範囲ではありますが、治具設計だけの話ではないと印象に残った点の趣旨を列挙します。
私は、まるでDoから始めるPDCAと同じだなと思いながら読みました。
- 治具は手段であって目的ではない。
- 治具を導入する目的を明らかにして設計を進める。
- 機械設計はトコトン机上で検討することが必須、治具設計は人が主体となる作業、考えたらすぐに実行、スピード重視で進める。
まとめ
治具(ジグ)というと、作業性を改善することが思い浮かびますが、モノづくりとして見ると、治具も様々な商品と同じようにQCDが求められています。
「はじめての治具設計 西村 仁(著)」を読んでみて、治具設計は、モノづくりにおける製品開発やPDCAにも共通することがあることに気づき、以下の項目でまとめました。
- 「はじめての治具設計」の紹介
- 治具設計とCAEの6自由度
- 治具設計と機械設計の違い