違うんだよなと私が感じるPDCAの誤ったイメージの1つに、
「PDCAは計画作りから始めなくてはならない」
があります。
そんな時に聞いてみるのが、次の様な質問です。
「何のための計画ですか?」
「目標の進捗確認をするために計画を作るのですか?」
「計画は、目標達成のために使う物ではないのですか?」
目標を達成するために、計画を使い進捗状況を確認し、必要な手を打つためには、計画があった方がやりやすいとは思いませんか?
PDCAは、
- 記録をつける、残す。
- 行動する、活動する。
からです。まずは、始めることがポイントです。
そもそもPDCAを回さなければと思っている時点で、何をどうすればよいか分かっているのではないでしょうか?
PDCAの始めの1歩。記録をつける、残すから
記録があれば、PDCAのC(確認)やA(改善)ができます。
記録が無い場合、記憶を頼りになってしまうので、説得力のある客観的な事実による説明が難しくなります。仕事の場合、説得力がなければ、良いモノも売れません。
あなたが購入品の商品説明を受けているとき、担当者の何の裏づけもない説明だけで購入を決められますか?
記録は「ある」か「ない」かが大きな違いです。記録があれば改善につなぐことができますが、記録が無い場合には、「何を残すか決めて記録をつける」ことから初めます。
まずは記録をつける。日報でもよいので毎日、営業なら訪問件数、技術なら何の設計に何時間、製造なら何を何個作ったかなどを記録に残すことを始めます。
報告内容は、簡単なことから。この時、報告しなくてよいという例外を作らないこと。そして、少しづつ、改善に役立つことを加えていく。
- いつもと違うと感じたこと、違和感を感じたこと
- お客様が口にしたこと、言いかけたこと
些細なことでもいいので、知ろうとする、聞こうとする、気づこうとするのが第一歩であり大切なポイントです。内容は担当業務によって違うので、考えてみてください。
内部監査は、日々の記録の重要性、大切さを気付かせるチャンス(良い機会)でもあります。観察事項や軽微な不適合により指摘することで改善される場合が多いのですが、分からない人はいるものです。やらないのかできないのかは分かりませんが、一所懸命できない理由を語りだす。本当にやらせること(徹底すること)は難しい。
マネジメントの第一歩
マネジメントというと、日本語で管理、つまり、コントロールの意味合いが強いと感じていますが、私は次の様に考えています。
- マネジメントとは、何とかすること
- 経営は、やりくりして何とかすること
以下、マネジメントのポイントを紹介します。
自己管理は時間管理
自己管理ができて初めて他人の管理に取り組めます。
自己管理とは、自分自身の時間管理、スケジュール管理です。
管理は、コントロールとは違います。マネジメントと全く同じではありませんが、部下の管理とチームマネジメントは、似たようなものと考えています。
管理職になったら、部下をもったら
私の場合、まず部下のスケジュールを優先していました。スケジュールというよりは、質問とか相談、報連相に相当するようなことですが、現場の状況を知るには一番確実です。
必然的に始業時には自分の段取りは済ませておきます(そこまで時間をかけて準備しているわけではありません)。
タスクは優先度、必要な時間でざっくり優先順位をつけ、 計画的に進めるものは先行してこつこつと進めておきます。
忙しそう、何かありそうとリスクを察知したら、時間を作る、空けておくようにしていました。何事かない限りチームの仕事は定時内で終えていたように思います。
振り返ってみて、落ちたことのない体重が減っていったのが、基幹システムとインフラの運用マネージャーをやっていたときでした。
10名ほどのチームで、基幹システムの問題が解決すると、翌週はインフラのトラブルとか。ポイントは、誰にも言いませんでしたが、どこまで覚悟するか、腹を括っておくかですね。おかげで情報システムやセキュリティについても色々と得難い経験ができました。情報セキュリティについては、また別の機会に。
指示待ちは指示したことはできるということ
指示待ちどころか、待ってもいない、指示されたことだけやるメンバーがいました。(当然の結果として、積み重ね、知識や経験が増えるといった成果は残りません。)
指示したことが終わらない、その結果や状況を誰にも言わないので、最終的に上司が見つけられなければやらないまま放置。困ったものです。
このようなメンバーには、指示したことを1つ1つ確認します。この時、前提や思い込みは厳禁です。後で痛い目にあうのは指示した本人だからです。問題が出てから話を聞いたところ、その理由に呆れてしまうケースがほとんどでした。
ここで、ポジティブ(前向きに)に考えるなら、そのような人をどう使うか、仕事をさせるかの話になります。
今でこそ、仕事は複数のことができる多能工が当たり前ですが、かつて、アメリカは分業が徹底していると聞いたことがあります。
アメリカの分業を実際に見る機会があり、正直なところ驚きました。例えば、日本なら工場敷地内の草刈は同じ人がやると思います。アメリカでは、決められた範囲ごとに草を刈る人、草を集める人、集めた草を車で収集する人がすべて別人、正直驚きました。
どちらが優れているという話ではなく、仕事と報酬の考え方、思想の違いなのだろうと考えています。
時には、「分かってますか?」、「分かってるよね?」と言いたくもなりますが、 現実は厳しく言って分かることはほぼないと思います。さて、あなたはどうしていますか?
私は、3つやらせたいとき、1つづつ指示と確認を繰り返します。指示された人が自ら変わろうとしない限り何も変わりませんが、自分1人ではできないことの一部を手伝ってもらうと考えるようにしています。このような考え方ややり方は好きではありませんが、現状では背に腹はかえられぬといったところです。
経営者、社長の立場になったらどのように見え、考えるのかについてはまだ見えていませんし分かりませんが、案外忍耐なのかもしれませんね。
P(計画)とC(確認)。品質目標と計画作成、進捗管理について
品質マネジメントだから特別な目標を設定する、特別な計画を作るわけではありません。顧客満足のためには、何をすれば、何を実現すればよいのかを考えてください。
営業ならば、営業予算の達成が第一かと思います。営業予算を達成することは、顧客満足あってこそだとは思いませんか?
では、営業予算達成ために、いつまでに何をしますか?やるべきことが見えてきませんか?
営業以外なら、こんな風に考えてみてください。
営業さんが営業予算を達成するために、あなたは何をすればよいと思いますか? 身近なことでよいのです。それがPDCAの初めの一歩になり、継続的改善につながります。
ここで、品質マネジメントで要求されている目標設定と計画作成について説明します。(品質とついていますが、品質をとっても使える考え方です。)
品質目標設定について
目標は、以下のことを満たすように作ります。
1)品質方針(仕事の進め方)とつじつまが合っている。
- 品質方針を実現する手段となっている。
- 品質目標、チーム目標を実現する目標となっている。
- チーム独自の課題に対する目標を含んでいる。
2)目標の進み具合(進捗状況)や結果を数値などで客観的に判断できる。
3)製品やサービスに求められている法令・規制、お客様との約束(価格、納期、仕様など)が含まれている。
4)製品やサービスに当てはまっており(適合している)、お客様をより満足させることができる。
5)目標の進捗状況を確認することができる。
- 毎月の目標について計画通り達成している。
- 計画に対し遅れていることを確認できる。
6)目標で定めた内容や結果を、必要に応じ関係者に伝える。
- 定期的な報告
- 突発的なことがあれば適時の報告もあります。
7)目標を設定した時の状況がその後変わった場合には、目標の内容を見直し、必要に応じ変更する。
- 設定した目標を何が何でも達成しろということではありません。様々なことが目まぐるしく変わり続けている今、むしろ目標が現実と合わなくなってきたら見直すのが当たり前です。
- 目標や計画を守るためにPDCAを回しているのではありません。目標達成のためにPDCAを回します。変化が速く大きい現在では、小さく速くPDCAを回すのがよいと考えています。
品質目標を達成するための計画について
品質目標計画では、次のことを明確にすることがポイントとなります。
1)具体的に実施する内容
- 目標達成に関係する人全員が理解、共有できる言葉で表現します。
2)必要な人、仕様設備、そのほか必要な設備など
3)責任者
- マネージャー自ら、もしくは、マネージャーが指名しフォローする形でもよいのですが、責任者を明確にします。
4)実際やることの完了予定時期
- 目標完了が1年後になるような場合には、毎月、四半期ごとに進捗を確認し、半期で振り返りを行うとよいとお思います。
5)実際にやったことをどのように評価・判断するのかを明確に、具体的に決めます。
- 客観的に評価できるようにしておかないと、何がどれだけ進んだのか、進んでいないのか、できたのか、できないのかも判断できません。
- 「責任者が総合的に判断する」というだけでは、一見よさそうですが、裏を返せばなんでもよいということにもなりかねません。
- チーム目標の達成は1人ではできないのですから、目標の進捗についてチーム内で共有できる客観的な評価基準は必要です。もちろん、目標によってどこまで客観的、具体的にするかは異なります。
まとめ
PDCAは計画作りから始めなくてもよいのです。
PDCAは、まずは行動です。何もやっていないならむしろ好都合な場合さえあります。
記録が無ければ、「記録をつける。残す。」から始める。
計画的に進めていないのならば、「行動する(活動する)。」からPDCAをはじめればよいのです。
ここでは以下について説明しました。
- PDCAの始めの1歩。記録をつける、残すから
- マネジメントの第一歩は自己管理(時間管理)
- 指示待ちは指示したことはできるということ
- P(計画)とC(確認)。品質目標と計画作成、進捗管理