2018/3/20に「JIS Q 21500:2018(ISO 21500:2012)プロジェクトマネジメントの手引」が制定されました。が、2018年4月には、21500の内容を大幅に変更する提案があり、プロジェクトマネジメントの規格化は、これから本格的に進みそうです。
プロジェクトマネジメントの規格開発状況については、日本規格協会の以下のリンク先をご参照ください。
規格開発>その他ISO/IEC規格開発>プロジェクトマネジメント
「JIS Q 21500:2018(ISO 21500:2012)プロジェクトマネジメントの手引」をざっと読んでみました。当たり前なのですが、「内容自体に新鮮味はないな」というのが正直な感想です。なぜ、ISOの規格化が進んでいるのかについては理解していませんが、プロジェクトマネジメントについて規格化されるようになってきたことがポイントなのかもしれません。
ここでは、プロジェクトマネジメントについて思っていることを紹介します。
意外なほど身近にあるプロジェクト
ISOでマネジメントというと品質マネジメントや情報セキュリティマネジメントが思い浮かびますが、プロジェクトマネジメントも古くからあります。
企画した商品の製品化は、まさにプロジェクトマネジメントですが、プロジェクトは意外なほど身近にもあります。
例えば、ISO9001の品質マネジメントにおける業務改善を進める場合、目標を設定し、計画的に目標を達成するのもプロジェクトの1つだと考えているからです。
ところで、プロジェクトを成功させる、例えば「売れる商品を企画するにはどうすればよいのか?」と聞かれることがあります。
「JIS Q 21500:2018(ISO 21500:2012)プロジェクトマネジメントの手引」は、売れる商品を企画する方法についての直接の答えにはならないかもしれませんが、プロジェクトの進め方の概要を知る、プロジェクトマネジメントについて学ぶにはよい資料になると考えています。
プロジェクトマネジメントの手法(手引)について
プロジェクトマネジメント、PMBOK(ピンボック)、2000年頃に社内研修を受けたような覚えがありますが、私の感想は、「プロジェクトマネジメントの手法を学び身につければ、プロジェクトの失敗を少なくすることはできるだろうが、プロジェクトを成功させられるわけではないのか。」といったもので、ずいぶんと分かったような気持ちでいたようです。念のため補足しておきますが、プロジェクトを成功させるためにプロジェクトマネジメントの手法を学び始めても、直接役立つことは少ないという意味です。
PMBOK:Project Management Body of Knowledge
(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)
プロジェクトの成功例を振り返り、プロジェクトマネジメントの手法に当てはめると、それなりに当てはまることもあるのですが、航空機や自動車のように大規模で高い安全性を求められるようなプロジェクトなら分かるような気がするものの、多くても数名で開発するような商品開発プロジェクトに使いたいと思っても、プロジェクトをマネジメントする手法の勉強が目的になってしまいそうです。
何も、プロジェクトマネジメントの手法(手引)が使えないと言っている訳ではありません。
例えば、失敗が見えてしまっているプロジェクトを中止するような場合には、参考になる部分が多いと思います。プロジェクト中止の決定は、プロジェクトにおける難しい局面の1つだと思います。
やってきたことを止めるためには、それなりの根拠が必要になり、プロジェクトの責任者はそれを決めなければならないからです。
決断できる責任者自らが情報を集めて決めるならそれはそれでよいのでしょうが、止めることを進言するための説明材料としては不足なのではないでしょうか。
PMBOKには、プロジェクトマネジメントについてすべきことは書かれていますが、どうすれば成功するのか、プロジェクトを計画通りに進められるかが具体的に書いてあるわけではありません。かといって、書かれていることを全てやればプロジェクトが成功するものでもないのです。
品質マネジメントシステム(「JIS Q 9004 組織の持続的成功のための運営管理-品質マネジメントアプローチ)に書かれていること)と同様だと考えています。
「ISO 21500(JIS Q 21500)プロジェクトマネジメントの手引」は、公共、民間又は地域の組織を含むあらゆる種類の組織が、複雑さ、規模又は期間に関係なく、あらゆる種類のプロジェクトに使用するプロジェクトマネジメントの手引を示したもので、上級管理者等からマネージャ・チームへの支援、マネージャ・チーム構成員の共通基盤の構築などに使えるよう、プロジェクトマネジメントの概念と、プロセスに関する包括的な手引が提供されており、大変有効です。
近年は、現場の管理を中心とした従来のプロジェクトマネジメント(ISO 21500)に加えて、プログラムマネジメント(ISO 21503)やポートフォリオマネジメント(ISO 21504)といったより上流の視点での手法もISO規格化されるなど、現場管理から経営まで包含する総合的なマネジメント手法へと成長を遂げました。
「ISO 21500(JIS Q 21500)プロジェクトマネジメントの手引」より
プロジェクトマネジメント手法を学ぶことの薦め
日々の仕事(仕事は大なり小なりプロジェクトだと考えています)を積み重ねて、プロジェクトマネジメントに関する資格を習得するのは、マネジメントを体系的に学ぶことにもなりとてもよいと思います。
プロジェクトマネジメントの資格取得例としては、受託開発の小さな会社の例(1人)だけ知っていますが、これも個人の思いつきから始めて職場(直属の上司)の理解あってのことだったようです。
かつて、コンサル、会社を作る手伝いをしたいと勉強していた頃、プロジェクトマネジメントを仕事にするには、プロジェクトマネジメントのルールや規格にそった資格なり経験が必要なことに気付きました。プロジェクトマネジメントの歩みと私の仕事のタイミングがずれていたので、これはこれで仕方のないことでした。
その代わりと言っては何ですが、プロジェクトマネジメントという言葉さえも今ほどには知られていなかったため、小さくともいくつかのプロジェクトを経験し、自分で考え行動した結果、成功も失敗も経験することができたと思っています。
1つのプロジェクトが成功すれば、次のプロジェクトにも役立てたいという要求がでてきます。プロジェクト成功の要件らしきものを伝えようとしたこともありましたが、残念ながらこれだという方法はありませんでした。属人的で職人が以心伝心で伝えるようなイメージまでしかアウトプットできなかったためだと考えています。
理由として次のようなことが考えられますが、みすみす失敗が繰り返されるのを見て悲しく思うこともありました。
- 2000年頃でさえ、プロジェクトの大小に限らずプロジェクトそのものが少なくなっており、かつ失敗が許されなくなってきていた。
- プロジェクトそのものを経験できる機会が社内外共に減ってきているため、私に限らずプロジェクトの成功・失敗の知見を伝える、活かすことが難しくなっていた。
商品企画担当者の例ですが、日報代わりにその日やったことの記録を直属上司と企画メンバーに公開していました。後に、予言者のようだと言われることもあったそうですが、当人にしてみれば予言ではなく必然とのことでした。毎日毎日の結果(原因)が積み重なり、結果が出ただけだというのです。
私情を入れず客観的に事実を記録し続ける、これを実行していただけで、特別な何かをしていたわけではなかったということでした。
1つ1つの事実に基づく判断は、常識的で当たり前のこと。1つ1つの判断が積み重なり、第三者がある日振り返ってみると予言者のように見えるだけなのかもしれません。
プロジェクトについて思っていること
プロジェクトの成功事例は、特段増えたとも思いませんが、失敗は相変わらず減っていないように感じています。
「プロジェクトマネジメントは、リスク管理につきる。リスクは、対応を決めてリスクではなくする。 」と聞いたか読んだかした覚えがあるのですが、今でもそのように思います。
言葉を変えて、プロジェクトマネジメントのポイントを上げてみます。
- プロジェクト目標達成の障害や遅れになり、リカバリーできないプロセス(これがリスク)を見つける。
- 見つけたプロセスをリスクとして管理する。
- プロジェクトの進捗の重要な節目を設定し確認する。
まとめ
2018/3/20に「JIS Q 21500:2018(ISO 21500:2012)プロジェクトマネジメントの手引」が制定されました。
ここでは、以下について説明しました。
- プロジェクトマネジメントの手法(手引き)について
- プロジェクトマネジメント手法を学ぶことの薦め
- プロジェクトについて思っていること