ISO9000では、特に人が関係しているミスはヒューマンエラーと呼ばれています。モノづくりに限らず、会社の規模や業界に限らずミスは多かれ少なかれあるものです。QCD(品質、コスト、納期)を守るために日々苦労しているケースも多いと思います。
ヒューマンエラーは人によるミスのことです。人はミスをしますので、人によるミスをゼロにすることは難しいものです。
そこで、ミスを減らすためには、「ミスが起きたから今後同じミスをしない。」と考えるのではなく、「ヒューマンエラーによるミスは発生する。」ことを前提として考えることがポイントです。
そして、品質・コスト・納期のバランスを見ながら、ミスの発生率を下げたり、発生したミスに早く気づき速やかに対応できる仕組みを作り上げていくことが重要です。
以下、モノづくりにおいてミスを少なくする取り組みの1つとして、「マルチタスク、同時並行作業はやらない・やらせない」について説明します。
マルチタスク、同時並行作業をやらせない理由
マルチタスクとは、例えばパソコンであれば複数の計算を同時並行して処理するということです。
しかし、人は1度に1つのことしかできません。つまり、人はマルチタスクはできません。
マルチタスクをしているように見える場合はあります。
例えば2つの作業を同時並行で処理しているように見える現場作業者をよく観察してみると、1つ1つのタスクを小さくして、ムダ・ムラ・ムリのない作業準備や作業をしています。
1度には1つのことしかしていないのですが、1日とかまとまった時間で進捗をみてみると、まるで同時並行で処理するマルチタスクをしたかのように見えてしまうのです。
繰り返しになりますが、人は、同時に2つ以上のことをすることはできないと考えて間違いないと考えています。
似たような作業を並行して行う場合もありますが、これは同じ作業を並行して行う場合のことであり、いわゆるマルチタスクとは違います。作業内容が異なる場合に、マルチタスクを試みても、人がやる以上ミスを起こしやすくなるだけだとも言えます。
モノづくりでミスを少なくするポイントは、国内製造業における多能工や大量生産に見える自動車業界も実際には多品種少量生産だったりすることから、1つ1つの作業を確実に進めることだと考えています。
その指示がマルチタスクの原因(意外な落とし穴)
マルチタスクをするとミスが起きやすいのは、個人の力量の問題ではなく、マルチタスクが人には向いてないからだと考えています。
仮に、マルチタスクが原因でミスが発生した場合、このミスの本当の原因は、担当者にマルチタスクを要求している側、仕事を依頼するマネジメント側の問題と考えられます。
次のような経験がありませんか?
- 重要な仕事を誰かに頼む場合、しかも納期も厳しくミスが許されない(手戻りがあると納期に間に合わない)場合、重要な仕事に集中できるように、現在抱えている仕事の状況も確認してから、これから依頼する重要な仕事(1つの作業)を頼んだ。
そこまで考えて依頼したにもかかわらず、
- 簡単に終わる仕事だから、(前に頼んだ重要な仕事への影響はないだろうと考え)、別の仕事(作業)を指示した。
そして、結果的に、
- 最初に頼んだ重要な仕事が終わらなくなった。
- 依頼者自ら処理した。
以上のようなことに思い当たることはありませんか?
依頼側はマルチタスクになるような指示はしない
仕事を指示された側からみれば、その仕事が簡単だろうと難しかろうと、すでにやっている仕事に対する割り込みに他なりません。
急ぎの仕事を割り込ませてもこなしてしまう作業者は、「重要な仕事が入りそうだ。」、「割り込みの仕事が入りそうだ。」とかをある程度予想し、割り込みが入ることを前提に仕事(作業)のやり方や進め方を考えて対応しています。
残念ながら、仕事を指示するマネジメント側は、このことに気づいていない場合の方が多いようです。
本来、複数の仕事の配分や優先順位は、マネジメント側が指示を出す際に、各担当者がマルチタスクにならないように当然配慮すべきことだと考えています。
具体的には、次の様ことを考慮して指示を出すことで、マルチタスクの発生をできるだけ避けることができ、結果としてミスを少なくすることにつながります。
- 仕事の依頼(指示)1度に1つを守る。
- まとめて指示しなければならない場合には、指示内容を時間単位でまとめる。
- 急な割り込みが発生した場合には、無理をさせず計画を見直す。
まとめ
ISO9000では、特に人が関係しているミスはヒューマンエラーと呼ばれています。モノづくりに限らず、会社の規模や業界に限らず、ミスは多かれ少なかれあるもので、QCD(品質、コスト、納期)を守るために日々苦労しているケースも多いと思います。
ヒューマンエラーは人によるミスであり、人はミスをしますので人によるミスをゼロにすることは難しいものです。
ここでは、モノづくりにおいてミスを少なくする取り組みの1つとして、「マルチタスク、同時並行作業はやらない・やらせない」について、以下の項目で説明しました。
- マルチタスク、同時並行作業をやらせない理由
- マルチタスクを防ぐためには
- 依頼側はマルチタスクになるような指示はしない