ISO9000では、特に人が関係しているミスはヒューマンエラーと呼ばれています。モノづくりに限らず、会社の規模や業界に限らずミスは多かれ少なかれあるものです。QCD(品質、コスト、納期)を守るために日々苦労しているケースも多いと思います。
ヒューマンエラーは人によるミスのことです。人はミスをしますので、人によるミスをゼロにすることは難しいものです。
そこで、ミスを減らすためには、「ミスが起きたから今後同じミスをしない。」と考えるのではなく、「ヒューマンエラーによるミスは発生する。」ことを前提として考えることがポイントです。
そして、品質・コスト・納期のバランスを見ながら、ミスの発生率を下げたり、発生したミスに早く気づき速やかに対応できる仕組みを作り上げていくことが重要です。
以下、モノづくりにおいてミスを少なくする取り組みの1つとして、「ミスを見つけたら即報告がトラブル防止の最良手段」について説明します。
ミスが起きてしまったら最速で報告
最初は小さなミスだったのに、報告しなかったばかりに会社対会社の大問題につながってしまうことは、意外に多いようです。
ミスの中には対応方法を誤る(報告が遅れる)と、
- 対外的にはお客様との信頼関係を失う。
- 社内的には各部署間や部署内の人間関係に悪い影響を与える。
ことがあります。
そもそもなぜミスは起きるのでしょうか?
例えば製造不良が起きた場合、
- 作業手順からジグの作成、作業の自動化などにより再発防止を図ることができるミス
- ヒューマンエラーと呼ばれる人の判断に関わるミス
とに分けることができます。
設計、製造、出荷において人の目で確認しているプロセスでミスが発生した場合、自動化などにより対策できる場合はよいのですが、ヒューマンエラーの場合にはミスが続くと皮肉なことに人が何とかするしかないという状況になってしまい、対策を継続することがヒューマンエラーを誘発してしまうころさえあります。
ダブルチェックは対策ですか?
ヒューマンエラーによるミスの場合、「ダブルチェックをします」というのがありがちな対策です。
確かにダブルチェックによりミスの発生を減らすことはできるのですが、ミスを無くす、ゼロにすることはできません。
そもそも人は間違えるものですし、同じ作業をするにしても、忙しかった、急ぎの別の仕事が割り込んできた、電話に出た、体調が悪かったなど、ミスの理由は様々です。
例えば、ミスをするからダブルチェックするようにしたのに、
- AさんはBさんが後でチェックするからと確認が甘くなった。
- BさんはAさんなら誤りなくチェックしているだろうと考え確認が甘くなった。
といった様に、ミスが繰り返されるには、
- 「決められたことを確実に行う」という当たり前のことを繰り返し続けることができる。
ように習慣化するまで、教育し、訓練し、注意喚起を行い続けるしかありません。
ミスが発生した場合の対応について考える
ここで、ミスが発生してからの対応について考えてみます。
クレーム発生時の対応で一番困るのが、不具合が発生したという連絡や報告が遅いことです。
ミスが起きた場合に「ミスの報告が遅い」ことにより、問題は大きくなります。また、ミスによる問題が大きくなればなるほど、報告が遅いのはミスを隠そうとしているからだと思われてしまい、ミスとは違う大きな問題に発展してしまいことになり、その後の対応は関係修復から始めることとなりなかなか大変です。
ミスの報告が遅い理由の1つに、自分が原因で問題が起きた場合、ある程度状況が詳しく分かってから報告しようとして遅くなることは珍しくありません。
しかし、クレーム処理を担当する側からすると、起きてしまったミスを無かったことにはできないので、例えミスしたことが他の人が気づかなかったとしても、ミスをしたら直ちに上長や同僚に報告するようにして欲しいと(心の中では)切に願っています。
たいていのミスは、ミスが発生した直後の素早い初動ができれば、ミスによる影響を最小限に抑えることができます。これは、お客様にとってもミスによる影響範囲を限定できるということです。
これが、例えば小さな製品トラブルだからと担当者や営業部署内で隠されてしまうと、問題が表に出た時には、お客様も含めて問題そのものではなく、会社対会社の問題として大事(おおごと)になってしまいます。
こうなると、「何とかしてください」と泣きつかれてもどうにもできません。釈然としない思いはあるものの、事務的に処理を進める形になってしまい、なんともいえない気持ちで対応したことがあります。
ミスはない方がよいのですが、ゼロにできないのもミスです。このことを社内に周知し、ミスが起きてしまったら直ちに報告できるようにすることが重要です。
プロジェクトや製品開発でのミスやトラブル
プロジェクトや製品開発などでもミスやトラブルは発生しますが、これは何とか少なくしたいものです。このような場合には、発生する可能性のあるミスやトラブルを事前に、関係者間で共有しておくことが対策となります。
「一言言っておいてくれればよかったのに」とか、「なぜ事前に教えてくれなかったの」といった言葉を聞いたことがあります。事前にミスやトラブルの可能性を関係者間で共有していれば、今よりはよい状況になったろうにと思うこともありました。
事前にミスやトラブルの可能性を話すと、「対策しろと言われてさらに仕事が増えてしまう」と思われる方もいるかもしれませんが、それは、ミスやトラブルとは別の問題なのではないでしょうか?
失敗を繰り返さない対策は、個人ではなく仕組みを見直す
製品クレーム(不具合)が発生したら、最優先するのはお客様に対する応急的な対応(暫定処置)です。
次が、不具合が広がらないような対策を打つことです。
こうして、不具合の原因調査が始まりますが、原因を調べたり考え始めたりする前に、現場・現物・現実の三現主義で情報収集を進め、何が起きたのか時系列で整理します。
原因には次の2つがあります。
- 不具合が発生した原因(発生原因)
- 不具合を見つけられずに社外に流出させてしまった原因(流出原因)
事実確認、発生や流出の原因調査の際に重要なことは、個人を責めないことです。
直接原因を聞く際にも「ミスを繰り返さないために教えてください」といった様に、ミスをしてしまった個人を責めることのないように配慮します。
ここで、個人を責めるようなことがあると、それ以後なかなか実際にあったこと、本当の理由を聞きだすことができなくなります。
業務改善目的の内部監査なのに、指摘することが目的になってしまっては、困っていることを聞き出すことなどできないのですが、分からない人には分からないようです。
小さなミスや不具合を隠すようになってしまうと、もはや不具合が発生しても原因が分からず、対策しようがありません。
原因が不明確な対策では、同じような不具合が再発してもおかしくありません。むしろ、同じような不具合がいつ発生するかという状況になってしまいます。
私は、「不具合や失敗は繰り返さなければよい」と考えています。
不具合が発生した時の当事者や部署長の心理がどのようなものかは想像するしかありませんが、社内的にはミスや不具合が起きた場合に、個人や発生部署を非難するのではなく、原因と対策をオープンに話せる環境が必要だと考えています。
個人ではなく、仕組みでミスや不具合対策を進める。忘れないようにしたいものです。
まとめ
ISO9000では、特に人が関係しているミスはヒューマンエラーと呼ばれています。モノづくりに限らず、会社の規模や業界に限らず、ミスは多かれ少なかれあるもので、QCD(品質、コスト、納期)を守るために日々苦労しているケースも多いと思います。
ヒューマンエラーは人によるミスであり、人はミスをしますので人によるミスをゼロにすることは難しいものです。
ここでは、モノづくりにおいてミスを少なくする取り組みの1つとして、「ミスを見つけたら即報告がトラブル防止の最良手段」について、以下の項目で説明しました。
- ミスが起きてしまったら最速で報告
- ダブルチェックは対策ですか?
- ミスが発生した場合の対応について考える
- プロジェクトや製品開発でのミスやトラブル
- 失敗を繰り返さない対策は、個人ではなく仕組みを見直す