ISO9000では、特に人が関係しているミスはヒューマンエラーと呼ばれています。モノづくりに限らず、会社の規模や業界に限らずミスは多かれ少なかれあるものです。QCD(品質、コスト、納期)を守るために日々苦労しているケースも多いと思います。
ヒューマンエラーは人によるミスのことです。人はミスをしますので、人によるミスをゼロにすることは難しいものです。
そこで、ミスを減らすためには、「ミスが起きたから今後同じミスをしない。」と考えるのではなく、「ヒューマンエラーによるミスは発生する。」ことを前提として考えることがポイントです。
そして、品質・コスト・納期のバランスを見ながら、ミスの発生率を下げたり、発生したミスに早く気づき速やかに対応できる仕組みを作り上げていくことが重要です。
ここでは、個人作業ではなく、複数の人が関係するモノづくりプロジェクトについて、ミス(失敗)を少なくする取り組みの1つとして、「難しく考えないプロジェクトとリスクの管理(マネジメント)」について説明します。
身近にあるプロジェクト
プロジェクト管理と聞くと大規模建造物や新商品開発など何か特別なことをイメージする方が多い様ですが、実は規模の差こそあれ身近に大小様々なプロジェクトがあります。
プロジェクト管理のキーワードは「マネジメント」です。
日本語の管理は「コントロール」といった意味合い(イメージ)を強く感じますが、私は以下の説明が分かりやすいと考えています。
- マネジメントとは、何とかすること
- ちなみに、経営=manage=やりくりして何とかすること
例えば、商品企画を担当していた時代を振り返ると、新製品開発(プロジェクト)を成功させるために最も重要なのは、リスク管理、具体的には納期管理だと考えていました。当時担当者としてプロジェクト成功のために注意していたのは、次の2点でした。
- どんなに準備をしても想定外は起こる。
- 見込みが外れた時の対応策を考えておく(決めておく)
もちろん、新商品そのものの要求、要求仕様なども重要なのですが、それだけではないのです。
企画した商品のイメージ(アイディア)が出たところから、設計・開発、製造(量産)、そして販売開始となり実際に売れるまで、ネガティブな意見はなくなりません。ネガティブな意見を気にしないで済む環境(上司やチーム、支えてくれる経営層)も重要です。また、プロジェクトの主要メンバーの人選の影響は大きいので、人に恵まれる運も実力のうちだと考えています。
これまで、大小様々な仕事(プロジェクト)を通して、プロジェクトを成功させるためには、何のためのプロジェクトであるか目的を明確にし、具体的な目標を設定することが必要だと考えています。
これは結果的にそうなったとも言えますが、現状(現実)を見て、商品企画(製品開発)の3年程度のロードマップを作成し、製品の位置づけを明確にして進めていました。
このロードマップ、主力製品と主力ではないが売れている製品を含めましたが、3年ほどかかりました。
しかし、これだけではプロジェクトが成功するための条件としては不十分なのが現実です。想定外は普通に起こりますので、プロジェクトの成功に影響する(成否を左右する)リスク要因について事前に洗い出し、対応方法や対策を決めておくことは、とても重要です。
プロジェクト成功にはリスク管理と察知力
プロジェクトは特別なものではなく、規模の大小はあれど仕事はすべてプロジェクトと言ってもよいと考えています。
モノづくりであれば、大きなところは品質工程図、作業単位では作業手順書やチェックリストを準備することが相当します。
新商品開発プロジェクトの様に、実際に使うことができる細かな工程表を作れる状況であればそれを利用すればよいのですが、そうでない場合には、次の様な状況なのではないでしょうか。
- そもそも主要メンバーが兼務となっている。
- 緊急な割り込みが日常的に入る。
- 割り込みに対応できるのは、プロジェクトの成否を握る人だったりする。
この様なプロジェクトの場合には、
- プロジェクトの目標や期限(納期)に向けて同じ方向を向く
- 特に悪い情報や聞きたくないことを早目に共有する
のも大変です。
私は、プロジェクトを成功させるためには、次の様なリスク管理と察知力が重要だと考えています。
- リスク管理とはプロジェクトの人の管理、プロジェクトの成否を左右する人が誰かを見極めること
- 察知力とは、プロジェクトの進捗や成否にかかわる状況(プロジェクト成功の鍵を握る人への影響)を知ることです。
幸い新商品開発をいくつか担当させていただき実際に結果を見せたためか、「どうしたら、新商品開発に成功するのか」と聞かれることがあります。
そんな時、「リスク管理は察知力」が重要なので、「プロジェクト成功の可否は誰が握っているのか」を探っていき、事前の準備と想定できるリスクには対応策を考えておくことが必要だと答えています。
「リスク管理は察知力」だと思うのですが、察知力は伝わらないですね。分かる人にはすぐに伝わるのですが。
それとリスクについては、関係者の同意は最低限で、困ったときに助けてくれる人を選ぶことが重要だと考えています。結局何とかするのは自分が動くことになるので。
リスクを事前に検討するメリット
リスクとは何らかの損失が生じることです。
このため、リスクの発生を事前に回避したり、発生したリスクによる損失を最小化することが重要です。
事前に想定できないリスクもありますが、少なくとも事前に想定できるリスクについては、発生確率や影響度を洗い出し分析することで、トラブルの未然防止や発生後の速やかな対応につなげることができます。
余談になりますが、
「プロジェクトを成功させるにはどうしたらよいのですか?」
と聞かれることがあります。プロジェクト(新商品企画・開発)の成功経験はありますが、それでも非常に説明しにくい質問の1つです。
また、今やプロジェクトマネジメントの手引きがJIS「JIS Q21500:2018 (ISO 21500:2012) プロジェクトマネジメントの手引」となっています。
プロジェクトマネジメントと言えば、プロジェクト憲章というものがあります。難しそうですが、プロジェクトの目標達成に必要な合意事項です。
プロジェクトマネジメントに関する規格などについては、以下をご参照ください。
まとめ
ISO9000では、特に人が関係しているミスはヒューマンエラーと呼ばれています。モノづくりに限らず、会社の規模や業界に限らず、ミスは多かれ少なかれあるもので、QCD(品質、コスト、納期)を守るために日々苦労しているケースも多いと思います。
人はミスをしますので人によるミスをゼロにすることは難しいものです。
個人作業ではなく、複数の人が関係するモノづくりプロジェクトについて、ミス(失敗)を少なくする取り組みの1つとして、「難しく考えないプロジェクトとリスクの管理(マネジメント)」について説明しました。
- 身近にあるプロジェクト
- プロジェクト成功にはリスク管理と察知力
- リスクを事前に検討するメリット