ISO9100:2016版対応の「QM-9100版品質マニュアル」の関連規定の1つ、「内部監査規定(QM9100版)」の一例です。
基本的にISO9001の内部監査規定と同一としていますが、内部監査を積極的に利用するためには、例えば年2回に分けて実施する等考えてみてもよいと考えています。
「リモート内部監査のガイドライン」については、以下をご参照ください。
1. 目的
本規定は、内部監査の頻度、方法、手順などを定め、効果的な内部監査を実施することを目的とする。
2. 内部監査の目的
品質マネジメントシステムの以下の事項が満たされているか否かを明確にするため、管理責任者は本規定に従い内部監査を実施する。
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- 品質マネジメントシステムが、品質マニュアルに適合しているか。
- 品質マネジメントシステムが、JIS Q 9100に適合しているか。
- 品質マネジメントシステムが有効に実施され維持されているか。
内部監査は、以下について自ら評価する活動である。
a)品質マネジメントシステムが要求事項に適合しているか
b)品質マネジメントシステムが適切に運用されているか
c)品質マネジメントシステムが有効なのか
つまり、品質マニュアル4.1で決定した「品質マネジメントシステムの意図した成果」を達成するために、品質マネジメントシステムの「適合性」と「有効性」を自ら評価する重要な活動である。
「JIS Q 19011 マネジメントシステム監査のための指針」より
3. 内部監査の区分及び資格
内部監査は年1回としていますが、マネジメントレビュー同様、例えば年2回に分けて実施することで、内部監査を効率的に利用できるのかもしれません。
3.1 内部監査の区分
(1)定期内部監査
各部署を年1回監査する様に計画された監査
(2)フォローアップ監査
内部監査の是正処置に関する運用状況を確認し、有効性を評価する監査
(3)臨時内部監査
定期内部監査以外にシステム上の重大な欠陥が予測されると判断した場合、社長の指示により臨時に実施する監査
3.2 内部監査員の力量
(1)内部監査員の資格
a)外部の審査員研修機関などが主催する内部監査員養成コースの教育を終了した者
b)内部監査員の有資格者が実施する教育・訓練を終了し、内部監査員に必要な力量を有すると管理責任者が認めた者
(2)内部監査員の登録
管理責任者は、内部監査員の有資格者を資格台帳に登録し、管理部に提出する。
資格台帳の原紙は、品質保証部で保管する。
(3)内部監査員の教育
管理責任者は、内部監査員の力量を維持・向上するための教育・訓練を計画し、実施する。
3.3 監査の基準
監査所見として、以下の判断基準を定める。
(1)適合
以下を満たしている場合を適合として扱う。
- 品質マネジメントシステムがJIS Q 9100に適合している。(要求事項への適合)
- 品質マネジメントシステムが、品質マニュアル通りに運用されている。(適切な運用)
- 品質マネジメントシステムが有効である。(有効性)
現在運用されている品質マネジメントシステムが、各プロセス(工程、業務)の手順が定められ、各プロセスの相互関係が明確であり、ルール(品質マニュアル)通りプロセスを実施したことにより、計画した結果(パフォーマンス)を達成している。
「JIS Q 19011 マネジメントシステム監査のための指針」より
(2)不適合
(1)の適合基準を満たしていない場合を不適合として扱う。
- 不適合は以下の区分とする。
- 不適合に対しては是正処置を求める。
重大な不適合 |
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軽微な不適合 |
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(3)観察事項
観察事項とは、そのまま放置すると、将来不適合となる恐れがあるような事象をいう。
そのような事象を発見した場合には、観察事項として内部監査報告書に記録し、次回監査時に確認する。
4. 内部監査実施手順
ISO9001よりも内部監査員に求められる力量、ISO9100や関連規格の知識、監査対象部署の業務に関する知識などはより高いレベルで要求されることになります。
4.1 内部監査の準備
4.1.1 内部監査計画の作成
管理責任者は、以下の事項を考慮し、4.1項に示す内部監査を計画する。
a)監査目的を明確にする。
b)部署の業務プロセス
c)複数の監査員で監査する場合には、監査責任者を指名する。
4.1.2 内部監査の編成
(1)内部監査員は、内部監査員資格台帳に登録された有資格者で、内部監査の客観性及び公平性を確保するため、被監査部署以外の者とする。
(2)内部監査員は原則複数とするが、遠隔地等で複数の監査員が手配できない場合は、1名でも良いものとする。
(3)監査責任者は内部監査を取りまとめる。
4.2 内部監査の実施
4.2.1 内部監査の進捗管理
(1)内部監査実施の通知
管理責任者は、内部監査の実施について、原則として実施日の7日前までに被監査部署長に通知する。
(2)内部監査の進捗管理
管理責任者は、内部監査の進捗状況を管理する。
4.2.2 内部監査の実施
(1)内部監査員は、被監査部署の品質マネジメントシステムに関する業務について、品質マニュアル通りに行われているかを確認する。
品質マネジメントシステムの各プロセス確認時の着眼点
- 被監査部署の業務だけでなく、それに関連する業務を含むプロセス
- 単に「良い」「悪い」だけではなく、「ルールが役立っているか」「他に方法はないか」など、品質マニュアルや規定等そのものを審査する視点
- 「どこに問題があるのか」「誰に責任があるのか」「その問題点を解決するには何をすればよいのか」など、具体的な答えを引き出そうとする視点
「JIS Q 19011 マネジメントシステム監査のための指針」より
(2)内部監査員は、内部監査計画に示された監査目的及び監査チェックリストを参考に、内部監査を実施する。
監査報告書作成に必要なエビデンス(確認した文書や記録)
- 文書名、文書番号、発行日等を記録する。
- 確認した文書や記録の識別に必要な部分のコピーなど
「JIS Q 19011 マネジメントシステム監査のための指針」より
(3)監査した結果、不適合がある場合、監査責任者は、不適合の内容について監査員、被監査部署立会者に確認し同意を得る。
(4)監査責任者は、確認した不適合について、「是正処置要求・報告書」を作成し、被監査部署責任者に送付し、是正を求める。
4.2.3 内部監査結果の報告
監査責任者は内部監査の結果を、管理責任者に報告する。また、被監査部署にも報告する。
監査責任者は、不適合があれば被監査部署責任者に是正処置を促し、「是正処置要求・報告書」を回答期限内に提出するようフォローする。必要に応じ、管理責任者がフォローする。
4.3 是正処置の実施
4.3.1 是正処置の報告
被監査部署は、「是正処置要求・報告書」の是正処置報告欄に以下の事項を記入し、原則として発行日より1ヶ月以内に監査責任者に報告する。
a)不適合を除去するための処置(修正)
b)特定した不適合の原因
c)不適合原因を除去するための処置(是正処置)
4.3.2 是正処置のフォローアップ
- 監査責任者は、不適合について、是正処置報告を受けてから原則として3ヶ月以内にフォローアップを実施し、是正処置の確認をする。
- 未完の場合は、完了確認予定日を決定し、予定日以降に再フォローアップを実施する。
- 「是正処置要求・報告書」にフォローアップの記録をする。
4.3.3 是正処置の最終確認
管理責任者は、最終的な「是正処置要求・報告書」の内容を確認し、「最終確認」欄にコメントを記入した後押印をする。
4.4 内部監査結果のまとめ
監査責任者は、全社の内部監査結果をまとめ管理責任者に報告する。
5. 社長への報告
管理責任者は、全社の内部監査結果を社長に報告する。
内部監査の結果は、マネジメントレビューのインプットに含めて社長に報告する。
6. リモート内部監査
6.1 リモート内部監査とは
リモート内部監査とはICTを利用して内部監査員と監査対象部署とをつないで行う内部監査をいう。
リモート内部監査の詳細については、「リモート内部監査ガイドライン」に定める。
参考:ICTとは情報通信技術のことであり、リモート内部監査ではPC、スマートフォンや社内イントラ(ファイルサーバー、Web会議システム)などがある。
6.2 リモート内部監査の対象部署
リモート内部監査は、営業支店と本社等をつないだWeb会議システムによる内部監査を想定している。工場及び事業所については、訪問と同レベルの映像や音声等の確認ができないため、リモート内部監査の対象としない。
7. 記録の管理
内部監査に関する記録は、「品質文書管理規定(QM9100版)」により管理する。
まとめ
ここでは、ISO9100:2016版対応の「QM-9100版品質マニュアル」の関連規定の1つ、「内部監査規定(QM9100版)」の一例を補足説明を加え説明しました。