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改めて管理責任者の役割を要求事項と品質マニュアルで再確認

はじめての管理責任者

ISOの品質管理責任者の仕事というと、

  • 大変だぁ~
  • 面倒だぁ~
  • 自分に務まるのだろうか?

といったイメージがあるようです。

これから管理責任者の仕事をする、あるいは、管理責任者を育てなければならない方にとっては、今更の感があるかもしれませんが、ISO9000シリーズで求められている管理責任者の役割と品質マニュアルで定められている管理責任者の役割(仕事)について再確認します。

ここでは、このブログで公開している品質マニュアルを例に、ISO9001の要求事項を含めて管理責任者について説明します。

なお、ISOでは管理責任者、JISではJIS品質管理責任者というのが正しい呼称になりますが、分かりやすい品質管理責任者とも呼んでいます。

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ISO9001:2015で要求される管理責任者

管理責任者について、ISO9001:2015の要求事項で確認します。

ISO9001の要求事項の管理責任者(の部分)

管理責任者については、「JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」から「5.3 組織の役割、責任及び権限」が該当しますので、その部分を以下に引用します。

5.3 組織の役割、責任及び権限

トップマネジメントは、関連する役割に対して、責任及び権限が割り当てられ、組織内に伝達され、理解されることを確実にしなければならない。
トップマネジメントは、次の事項に対して、責任及び権限を割り当てなければならない。

a) 品質マネジメントシステムが、この規格の要求事項に適合することを確実にする。

b) プロセスが、意図したアウトプットを生み出すことを確実にする。

c) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び改善(10.1 参照)の機会を特にトップマネジメント
に報告する。

d) 組織全体にわたって、顧客重視を促進することを確実にする。

e) 品質マネジメントシステムへの変更を計画し、実施する場合には、品質マネジメントシステムを“完全に整っている状態”(integrity)に維持することを確実にする。

出典:「JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」より

要求事項の補足説明

ISO9001の要求事項について、補足します。

内容については、品質マニュアルの管理責任者の部分で説明します。

「5.3 組織の役割、責任及び権限」では、以下のことが求められています。

  • 品質マネジメントシステムを実施するための役割、責任及び権限を具体的に定め、組織内に伝達すること。

これは、品質マニュアルに具体的に明記します。

  • 管理責任者について

「5.3 組織の役割、責任及び権限」のa)~d)は、これまでの管理責任者に割り当てられた責任及び権限のことです。

ISO9001の2015年版では、管理責任者という用語はなくなったため、「管理責任者」と呼ばなくてもよいのですが、従来通り使っている場合が多いようです。

「5.3 組織の役割、責任及び権限」のa)~e)を担当させる個人は特定する必要はありますが、管理責任者を複数の人に担当させてもよいです。

品質マニュアルで定めた管理責任者

このブログで公開している「わかりやすい品質マニュアル(ISO9001:2015対応版)」では、管理責任者について「5.3 組織の役割、責任及び権限」に以下の通り定めています。

5.3 組織の役割、責任及び権限(社長の役割・責任・権限、管理責任者の責任・権限)

5.3.1 社長の役割、責任及び権限

社長は、関連する役割に対し責任及び権限を割り当て、次の事項が正しく行われるように管理する。

社長は、管理責任者を任命し、a)~d)項に対して、責任及び権限を割り当てる。

責任及び権限を「表1 主要業務の責任と権限」に、組織を「組織図」に示す。

a)品質マネジメントシステムが、この規格の要求事項に適合する。

b)プロセスが、意図したアウトプット(品質目標の達成、要求事項を満たす製品の提供、顧客満足の向上など)を生み出す。

c)品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び改善(10.1 参照)の機会を把握する。

d)全社にわたって、顧客重視を促進することを確実にする。(顧客重視の考え方を要員に理解させ顧客を重視した仕事のやり方を行わせる)

e)品質マネジメントシステムへの変更を計画し実施する場合には、品質マネジメントシステムが“完全に整っている状態”を維持する(一部の変更により品質マネジメントシステム全体のバランスが崩れたり、他の部分と矛盾が起こらないようにする)。

5.3.2 管理責任者(管理責任者の責任と権限)

管理責任者は、与えられている他の責任とかかわりなく、5.3.1 a)~e)項及び次の事項に対して責任及び権限を持つ。

a)品質マネジメントシステムに関する事項について、外部関係者との連絡調整を行う。

要求事項と同じような表現ですが、特別な何かをすることが書いてあるわけではありません。

社長役割、責任及び権限について、全部ではありませんが列挙します。

  • QMSが要求事項に適用するようにするとは、(文書審査で要求事項を満足している)品質マニュアルと具体的な業務等について定めた規定類に従いQMSを運用していること。
  • 全社の品質方針・品質目標に対応した各部署の品質目標を計画し、進捗を管理し、結果の評価をして実施していること。
  • 内部監査や外部審査、クレームなどの情報を社長に報告すること(マネジメントレビューを行うこと)。
  • 全社で顧客重視を促進させるため、品質マニュアルとISO規定類に従い業務運営を行い、品質目標実施計画などを進めること。
  • 品質マネジメントシステムを変更する場合にも、品質マニュアルやISO規定類と実際の運用との整合性を維持すること。(QMSの変更は、マネジメントレビューのインプット情報として提案し、社長が変更について決定し指示します。)

管理責任者の役割と権限については、以下のことを追加しています。

  • 外部関係者との連絡調整(ISO事務局としての役割)

JISの品質管理責任者の候補者に、管理責任者について説明するときに最初に伝えていることは、次のことです。

管理責任者の仕事(役割)は、QMSが回っているか確認し、社長に報告すること

正確性に欠けた表現だとは思いますが、例えば、外部審査で指摘(観察事項等)を受けた場合、指摘を受けたことは管理責任者の責任の範囲ではないということです。(少しは、気持ちが楽になったでしょうか。)

外部審査(更新審査やサーベイランス)対策としては、

内部監査とマネジメントレビューを実施していること

が必須です。

その他、品質管理部門の仕事を除けば、次の2点が主にやることになります。

  • 品質目標を立て、計画的に実施していること
  • 力量を評価して品質目標達成に必要な教育・訓練を実施していること

このブログで公開している品質マニュアルは、20名規模のモノづくりのモノづくり会社を想定しています。

関連規定などは以下のページをご参照ください。

ISOの品質管理責任者と品証部門の長との違い

ISOの品質管理責任者の仕事は、品質管理部門の長としての仕事と重なる部分もありますが、重ならない部分もあります。

会社の規模や経営者(社長)にもよりますが、私は、ISOの管理責任者は社長に近い立場の方が適任だと考えています。

理由としては、社長として、品質管理部門の長とは共有する必要のない情報がありますし、ISO9001の規格が求めている製品やサービスの品質管理から経営との統合を進めていくと、品質管理部門の長では対応できない、あるいは、分からない部分が増えてくると考えているからです。

例えば、各部署を含めた会社全体のマネジメントに関することは、品質管理部門の長の場合、どうしても製品やサービスの品質管理面からの視点になりがちだと考えているからです。

端的にいえば、マネジメントレビューは社長の経営判断そのものともいえますし、適切な品質方針と品質目標を設定するのも社長です。

内部監査で品質目標の進捗状況などを確認することは、管理責任者の仕事ですが、品質に関することは品質管理部門の長から説明を受け社長に報告するのであれば、より経営に近い情報を提供し、結果として社長の経営判断に役立つものになっていくと、私は考えているからです。

せっかく認証を取得し、維持しているのであれば、ISO9000シリーズのQMS(品質マネジメントシステム)を経営にも利用した方がよい考えています。

QMSの仕組みを利用して、継続的改善により顧客満足を向上させることは、経営(社長)の目指すあるべき姿(の社員や会社)に近づく助けになると考えるならば、

  • 実のある品質方針と品質目標
  • 内部監査とマネジメントレビューを利用した業務改善

となっていくと思うのです。

はかせ
はかせ

経営の仕事にはあまり縁がないようなので、自ら社長になるしかないのかなとも思っている「はかせ」なので、社長の考え方ややり方とは違うのかもしれませんが。

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まとめ

品質管理責任者の仕事というと、「大変だぁ~」、「面倒だぁ~」、「自分に務まるのだろうか?」といったイメージがあるようです。

これから管理責任者の仕事をする、あるいは、管理責任者を育てなければならない方にとっては、今更感があるかもしれませんが、ISO9000シリーズで求められている管理責任者の役割と品質マニュアルで定められている管理責任者の役割(仕事)について再確認しました。

ここでは、このブログで公開している品質マニュアルを例に、管理責任者の役割について以下の項目で説明しました。

  • ISO9001:2015で要求される管理責任者
    • ISO9001の要求事項の管理責任者(の部分)
    • 要求事項の補足説明
  • 品質マニュアルで定めた管理責任者
  • ISOの品質管理責任者と品証部門の長との違い
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