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モノづくりと品質いろいろ。設計品質、製造品質、顧客品質

教育・訓練

ISO9000シリーズの品質は、単なる物(モノ)の範囲だけでなく、ソフトウェアやサービスを含み、ISO9001:2015版では、経営品質にまで広がっています。

ここでは、モノづくりに関する品質について説明します。

  • モノづくりにおける設計品質(いわゆる設計図)と製造品質(でき上がった物)、顧客品質(お客様にとっての品質)
  • モノづくりの品質(満足度、採点、評価)は、お客様の要望から設計開発、製造、納品までを含む結果となるため、検査だけ強化しても品質は上がらないこと
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モノづくりにおける品質は、設計品質、製造品質、顧客品質の3つ

モノづくりにおける品質について、

  • 「設計の品質(ねらいの品質、いわゆる設計図)」
  • 「製造の品質(できばえの品質、できあがった物)」
  • 「顧客の品質(お客様にとっての品質)」

に分けて説明します。

設計開発では、お客様から要求される品質(いわゆるカタログスペックなど)と使用上の品質(使い方などに関する品質)を考慮して設計し、設計品質として図面で明確にします。

例えば、CADで作成した図面や、パソコンの立体表示(3D表示)で確認します。

製造では、設計品質(図面)を目標に製造します。

図面では、直線も曲線も自由に描くことができます。例えば図面の円は真円ですが、実際のモノに対してはどこまで真円に近づけるかを決め、図面に指示された様に加工します。

つまり、実際のモノづくりでは、図面の寸法(長さなど)に対し、ある幅が許容されています(公差と呼ばれています)。このようにして製造されたモノの品質が製造の品質と呼ばれています。

検査では、図面通りモノができ上がっているかを確認し、合否を判定します。製造の品質(製品)が、設計の品質(図面)に対し適合している(図面通り作られている)かを判断することになります。

不合格であれば出荷できません。検査を担当する品質保証部門は、簡単に言えば、図面通りにモノが作られているかどうかを判断しているのです。例えばモノの長さが検査の基準値内に入っていれば合格、外れていれば不合格となるのであり、検査員が特別な判断をしているわけではありません。

設計品質(ねらいの品質)

  • 設計品質(ねらいの品質)とは、お客様に要求された品質に対して、設計技術や生産能力、経済性(コスト)を考慮して設計を行う上でねらった品質のことです。
  • 設計品質は、製造の目標としてねらう品質、設計図により規定された品質のことで、例えばカタログに記載される品質です。

製造品質(できばえの品質、適合の品質)

  • 製造品質(できばえの品質)とは、設計品質を目標に製造した結果、実際に作り出されお客様に提供される製品の品質のことです。
  • 製品品質(適合の品質)は、お客様の要求品質や設計品質に対してどのくらい適合しているかという尺度でその品質の良否が判断されます。

顧客品質(お客様にとっての品質)

  • 顧客品質には、お客様の要求品質(こうあって欲しい)に加え、使用品質(使って分かる品質)が含まれます。
  • 使用品質とは、実際に製品を使用するとき、使用したときの品質のことです。
  • お客様の要求品質とは、お客様から求められる品質、品質に対するお客様の要求度合いのことです。

検査でモノづくりの品質は良くならない

検査でモノづくりの品質は良くなりません。検査をいくら厳しい基準で実施しても、製造の歩留まりが悪くなる(出荷できない製品、いわゆる不良在庫が増える)だけで、品質が良くなるわけではありません。

ここで、お客様からある商品の製作を受注した場合の品質について考えてみます。ここでは、営業、設計、製造、保管、出荷までの5工程(プロセス)があるものとします。

お客様に届いた商品の品質は、各工程の採点結果の積(掛け算の結果)とします。

工程全体のレベルが低い場合

それぞれの工程担当者が10点満点中9点の仕事をしたと考えます。

営業×設計×製造×保管×出荷= 0.9×0.9×0.9×0.9×0.9

結果は約0.6。つまり10点満点で6点の成果物(完成品)にしかなりません。

各工程では10点満点中9点なので悪くはないと思うかもしれませんが、実際は10点満点中6点となります。これでは、お客様に商品を受け取っていただくことは無理だと思いませんか?

設計ミスをした場合

製品は設計通り完成したが、設計にミスがあり誤った寸法(長さ)の製品ができてしまった場合を考えてみます。

設計が10点満点中9点の仕事をしたと考えます。

営業×設計×製造×保管×出荷= 1.0×0.9×1.0×1.0×1.0

結果は0.9。つまり10点満点で9点の成果物(完成品)になります。

お客様が「それでもいいよ。」となれば売れるかもしれませんが、お客様から商品の受け取りを断られても謝るしかないのではないでしょうか?

検査で全ての不良品を見つけられるか?

不良品が市場に出ると、「何を検査している」、「もっと検査しろ」といった意見を耳にすることがあります。

検査でやっていることは、 極論すれば、次の2つです。

  • 仕様書・図面通りできているかどうかを確認(合否判断)すること
  • 検査で不合格品を見つければその製品の出荷を止めること

検査漏れのため不良品が市場に出てしまう場合もありますが、検査を強化しても限界があるのです。

例えば、製造品の一部を抜き取り検査している場合、抜き取りの対象に不良品が含まれていなければ、不良品が社外に流出してしまいます。

それでは全数検査すればよいのかというと、次の様にそう簡単な話ではありません。

  • 人が検査している場合、見落としを100%防ぐことはできません。
  • 完成品では、見えない、測れないこともあります。

つまり、検査は万能ではないのです。

このため、製造の工程内で不良品をみつけ、次工程に10点満点中10点の良品のみを送る、不良品を作らないことが大切なのです。

はかせ
はかせ

機械(ロボット)を使えれば、見落としなしの全数検査を実現できますが、コスト(投資)とのバランスになると考えています。

以上まとめると次の2点になります。

  • たった1つの工程(プロセス)であっても、10点満点中9点の仕事をしてしまうと、その減点分を他の工程で取り返すことはできない。
  • 作ってしまった不良品を検査ですべて見つけることも現実的には難しい。

各工程で10点満点中10点の仕事をすることを徹底するのは、人が関わっている以上難しいことだとは思います。自動車業界は、モノづくりの会社としてかなり徹底できていると思いますが、それでもリコールがなくならないのは、ある意味経営的、予防的な判断があるにせよ、モノづくりの難しさ、奥深さを表していると考えています。

まとめ

ISO9000シリーズの品質は、モノでけでなく、ソフトウェアやサービスに加え、ISO9001:2015版では経営品質にまで広がっています。

ここでは、以下について説明しました。

  • モノづくりの品質(満足度、採点、評価)は、設計品質(いわゆる設計図)と製造品質(でき上がった物)、顧客品質(お客様にとっての品質)からなり、顧客要望から設計開発、製造を含む全体に関連していること
  • 検査だけ強化しても品質は上がらないこと
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