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QMSと設計・開発:設計・開発のDR(設計審査)の要求事項

レビューの活用

ISO9001のレビューは、次の3つです。

  • DR(設計審査)
  • レビュー(検証)
  • 妥当性確認

レビューの実施状況は、会社の規模だけでなく、商品企画や設計・開発の進め方など様々です。

ここでは、経験の浅い設計担当者を想定して、設計・開発への顧客要求と設計・開発の管理についてのISO9001要求事項と設計・開発プロセスのポイントについて説明します。

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DR(デザインレビュー)とは

ISO9001:2015で要求事項となっている、設計・開発のDR(デザインレビュー、設計審査)について説明します。

DR(デザインレビュー)の言葉の意味(定義)は、次の通りです。

  • 設計・開発における様々なプロセスで行われる審査(設計審査等)、チェックや確認などの総称
  • 開発会議やデザインレビュー(DR)を含みます。
  • 検証や妥当性確認もレビューの1つ(1種)です。

言葉の定義だけではわかりにくいため、意訳すると次のようになります。

DRとは、

設計・開発の各プロセス(段階)において、各プロセスの関係者が集まり、

各プロセスで満たすべき項目(要求や仕様)をそれぞれの観点から評価し、

基準を満たしている(超えている)事を確認してから次のステップに進む方法

のことです。

設計・開発プロセスの一例は、

  • 企画→基本設計→試作→詳細設計→試作→量産

となります。

DRの効果

DRでは、次のことを行います。

  • 設計の成果物(図面や仕様書等)を作成するプロセスとその完成度を設計部署以外の部署(専門家)が審査します。(DRの参加者)
  • 機能・品質・コスト・納期などを、企画・設計・製造・品証など各分野の専門家(各部署の責任者や担当者)が各々の視点で設計の成果物により、設計の妥当性を評価します。(DRの参加者による設計の妥当性を評価)
  • 問題点や課題を明確にします。(問題点の抽出)
  • 設計・開発の次のプロセスに進める判断を決定します。

DRの効果を列挙します。

  • 各分野の専門家が参加するため、設計者視点では見落としがちな「つくりやすさ」や「メンテナンスのしやすさ」などを設計に盛り込むことができます。
  • 設計・開発に関連する各部署の責任者や担当者が集まるため、進捗状況の把握・共有をしたり、意思疎通の場としてコミュニケーションを深めることができます。
  • 後工程からの手戻りを防止する効果があります。

この様に、DRは、ISO9001の要求事項となっているため、QMSを導入している会社では、DRの実施時期、回数、参加者などを定め運用しています。

はかせ
はかせ

ISO9001の設計・開発がよくできている仕組みといわれる理由の1つは、DRだと考えています。

QMSやDRは役に立たないとか、意味がないとかといった言葉を耳にすることがありますが、その様な場合には「設計・開発のためのDRではなく、DRを行うことが目的となってしまっている」ことが少なくないようです。

ISO9001のQMSはよくできた仕組みであり、ツールでもあるので、自社に合わせて活用したいものです。

製品及びサービスに関する顧客要求のレビュー

ISO9001の要求事項となっているレビューについての要求について説明します。

ISO9001:2015のレビューについての要求事項は、項番8.2.3と8.3.4があります。

8.2.3 製品及びサービスに関する要求事項のレビュー(受注・契約の管理)

8.3.4 設計・開発の管理(設計・開発の管理)

まず、「8.2.3 製品及びサービスに関する要求事項のレビュー(受注・契約の管理)」について品質マニュアルの記載例を使い、ポイントを説明します。

品質マニュアルの記載例

要求事項をどの様に実現するか定めている品質マニュアルでの記載例を以下に示します。

  • 品質マニュアルでは、レビューをどの様に行うかについては、品質マニュアルでは、「設計・開発管理規定」に定めることにしています。

 

8. 運用(行動、日々の業務)

8.2 製品及びサービスに関する要求事項(受注・契約)

8.2.3 製品及びサービスに関する要求事項のレビュー(受注・契約の管理)

8.2.3.1 レビュー内容(製品の要求事項)

顧客要求を満たす製品及びサービスを提供できるかどうかを、「設計・開発管理規定」に従い、次の要求事項をレビューする。

このレビューは、製品及びサービスを顧客に提供することをコミットメントする前に実施する。

a)顧客が規定した要求事項

(これには提供及び提供後の活動に関する要求事項を含む)

b)顧客が明示してはいないが、指定された用途又は意図された用途が既知である場合、それらの用途に応じた要求事項

c)当社が規定した要求事項

d)製品及びサービスに適用される法令・規制要求事項

e)以前に提示されたものと異なる、契約又は注文の要求事項

契約又は注文の要求事項が以前に定めたものと異なる場合には、契約締結前に解決する。

顧客がその要求事項を書面で示さない場合には、顧客要求事項を受諾する前に確認する。

8.2.3.2 文書化した情報の保持(受注契約の記録)

該当する場合には、必ず、レビューの結果、及び製品及びサービスに関する新たな要求事項に関する文書化した情報を保持する(記録を残す)。

 

品質マニュアルやISO規定類については、以下のページをご参照ください。

レビューのポイント

製品及びサービスに関する顧客の要求は、上記品質マニュアルの8.2.3.1の、a)からe)をレビューすることです。

ここでの顧客要求のレビューのポイントを列挙します。

  • レビューの実施時期:
    • レビューは、契約や受注など、製品及びサービスを提供することを約束する前に実施します。
    • 例えば、見積時の仕様書で契約前に確認した内容が、変更されている場合には、その差異を明確にして顧客と合意することが必要です。
  • 顧客要求が書面提示されない場合の対応:
    • 例えば、口頭で注文を受けた場合など、顧客が要求事項を書面で提示しない場合には、注文を受ける前(受注前)に、会社側から顧客から聞きとった要求事項(ニーズ)などを記録して提示し、確認を得ることが必要です。
  • 顧客要求事項の変更管理:
    • 顧客要求事項の変更管理は、独立した箇条となっており、重視されています。
    • 追加の要求事項や要求事項の変更の際にもレビューを行います。
    • 追加や変更された要求事項の内容と対応、問題と解決方法などについても文書化した情報を変更し管理(保持)します。(記録を残すということです。)

設計・開発の管理についての要求

まず、「8.3.4 設計・開発の管理(設計・開発の管理)」について品質マニュアルの記載例を使い、ポイントを説明します。

品質マニュアルの記載例

要求事項をどの様に実現するか定めている品質マニュアルでの記載例を以下に示します。

8.3.4 設計開発の管理(設計開発の管理)

「設計・開発管理規定」に従い、設計開発のレビュー・検証・妥当性確認を行い、設計開発のプロセスを管理し、これらに関する文書化した情報を保持する。

設計・開発管理のポイント

設計・開発プロセスを管理するためのポイントを説明します。

なお、設計・開発のレビュー、検証と妥当性確認は、別のものであり、製品に合わせて個別に実施したり、組み合わせたりします。

設計・開発のアウトプット(成果物)を決める

設計・開発をはじめる前に、設計・開発の計画をします。

  • 計画した各プロセス(段階)でのアウトプット(成果物)を計画で明確にします。

各プロセスにおけるアウトプットが、計画された機能や性能を満たすことを確認します。

  • 各プロセスでのアウトプットの確認が、設計・開発プロセスの進捗を管理することにつながります。

設計・開発のプロセスにおけるレビュー

設計・開発計画で明確にした各プロセスにおいて、レビューを行います。

レビューを行うことが、手戻りを防ぐことにつながります。

設計・開発のアウトプット(成果物)の検証

設計・開発の各プロセスへのインプットとアウトプットの検証(レビュー)を行います。

製品の妥当性確認

妥当性確認は、設計・開発のアウトプットとしての製品が、当初の製品への要求を満たしているか確認することです。

設計・開発の検証よりも広い範囲や様々な視点において、より、現実的な(実際の製品使用状況に近い)状態における、品質や仕様の妥当性を確認することです。

妥当性確認は、設計・開発のアウトプットである製品図面や仕様書を確認することではなく、顧客要求を満足した製品となっているかどうかを確認することです。

レビュー、検証及び妥当性確認への対応

レビュー、検証及び妥当性確認において明確になった問題や課題に対して必要な処置をとります。

文書化した情報保持(記録を残す)

上述のレビュー、検証及び妥当性確認に関する、文書化した情報(記録)を残し、管理します。

製品を確実に提供する設計・開発プロセスのポイント

製品を確実に提供するためには、適切な設計・開発プロセスを確立し、実施し、維持することが必要です。

適切な設計・開発プロセスがどの様なものかは、対象となる製品やサービスによっても、会社によっても様々です。

ここでは、設計・開発を少し広い視野でとらえ、ISO9001の規格要求「3. 設計・開発」について考えます。

例えば、次のことも「設計・開発」に含まれると考えます。

  • 「8.2 製品およびサービスに関する要求事項」で顧客の要求事項を理解し、自社として追加すべきことを考える。
  • 「8.5 製品およびサービスの提供」で製造プロセス試行錯誤しながら製造基準を検討する。

顧客満足の達成基準(レベル)の設定

「顧客満足の達成基準(レベル)をどこ(どのレベル)に設定するか」について、考える時、

  • お客様の満足するレベルを少しだけ上回ることにより、その後のビジネス(リピートなど)につながる。

と考える場合があります。

お客様の要求をわずかでも上回り続けることは、これはこれで大変なことです。

しかし、できれば、Only Oneの強みになりえます。

お客様の期待を超えるとは

「設計・開発」という言葉から離れて、「お客様の期待を超えること」について考えてみます。

モノづくりメーカーであれば、成果が「モノ」として実在するので、設計や開発が何をするのかイメージしやすいと思います。

  • 例えば、設計のアウトプットは図面や仕様書であり、開発のアウトプットは試作品と考えることができます。

OEM中心の製造メーカーの場合、設計・開発は自らおこな合わない、製造委託元の要求通りに製品を作ることが求められるため、お客様の期待に応えることはイメージできても、期待を超えることはイメージしにくい様です。

  • OEM(Original Equipment Manufacturing)とは、相手先ブランド製造など呼ばれ、製造メーカーが他社ブランドの製品を製造することです。

確かに、使い勝手を良くするための製品改良や新製品開発の様な設計・開発は難しい部分があると思います。

しかし、「顧客満足を追求するために何ができるかを考え続ける」ことで、お客様の期待を超えるモノづくりにつながると考えています。

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まとめ

ISO9001のレビューには、DR(設計審査)、レビュー(検証)、及び、妥当性確認の3つがあります。

ここでは、経験の浅い設計担当者を想定して、設計・開発の顧客要求と設計・開発の管理についてのISO9001要求事項と設計・開発プロセスのポイントについて説明します。

  • DR(デザインレビュー)とは
    • DRの効果
  • 製品及びサービスに関する顧客要求のレビュー
    • 品質マニュアルの記載例
    • レビューのポイント
  • 設計・開発の管理についての要求
    • 品質マニュアルの記載例
    • 設計・開発管理のポイント
      • 設計・開発のアウトプット(成果物)を決める
      • 設計・開発のプロセスにおけるレビュー
      • 設計・開発のアウトプット(成果物)の検証
      • 製品の妥当性確認
      • レビュー、検証及び妥当性確認への対応
      • 文書化した情報保持(記録を残す)
  • 製品を確実に提供する設計・開発プロセスのポイント
    • 顧客満足の達成基準(レベル)の設定
    • お客様の期待を超えるとは
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