売れる商品を企画できた商品企画担当者のお話です。
ここでは、新商品を開発するために、まずは会社の製品群全体と開発力の把握から始めた開発ロードマップについてまとめています。
時間はかかりましたが、とても良い経験となりました。
商品企画担当になった頃の社内状況
商品企画に異動となった頃、営業は久しぶりのヒット商品の売れ行きに喜んではいたものの、3年も経つと陳腐化やマンネリ化で、次の新商品への期待や要望が強くなっていました。
一方、技術は拡大した商品群のメンテナンス開発で手一杯、仕事は多く忙しいにもかかわらず、静かに疲弊しつつあり、自分で自分を守らざるえない状況になりつつあるように見えました。
このような状況ですから当然の結果として新商品の開発は停滞しており、社内、特に商品企画や販売促進、そして技術も暗い雰囲気でした。
そんな中、商品企画未経験者が開発ロードマップを作り始めたのでした。
時代は変わっている!技術主導の製品開発が残したもの
お客様が変わってきた?
かつて、営業は技術をお客様のところに連れて行き、お客様の要望を聞いて機能追加を行い、お客様のやりたいことさえできれば売れた時代があったそうです。
ところが、いつのまにか、
- 使わない機能はいらないから、その分安くできないの?
- もっと使いやすくして欲しい。
といったお客様の声が増えてきていました。
振り返ってみると、パソコンの普及と時を同じくして、時代は大きく変わり始めていたように思います。
機能追加の要求がなくなったわけではありませんが、それはとても専門的な機能であり開発にも時間がかかるだけでなく、何でもできる汎用機での対応が技術的にも難しくなってきていたのでした。
社内の様子が変わってきた?
お客様要望と言う名の営業の声により、機能追加と製品ラインナップを拡大し続けた結果、以下のことが表面化していました。
- 部品の製造中止による開発(メンテナンス開発)で現場は疲弊
- 要求が専門的で多岐に渡り、開発コストは膨れるばかり
- 生産台数や販売台数に誰も触れない
- かつての成功体験を語る今の管理職
- 新商品が必要との主張ばかりで沈黙している技術
これらが、商品企画に異動になったときの現実であり出発点でした。
さて、ではどうする!時間を稼ぐ売れる新商品企画の誕生
現実と事情は分かりました。さて、ではどうしますか?
- 売れている商品も陳腐化は進んでいますがそれでも売り続けたい?
- いつまで作れる?
- いつまで部品は入手できる?
- 現在売っている商品を製造できるのはいつまでですか?
これらの質問に答えてくれる人はいませんでした。
仕方ないので現状調査から、直近1年は主力製品を柱に開発ロードマップ(当初は製品ライフサイクルを意識していました)を作り始めたところ、見えてきたのは、
- 必要なのは時間!
- 時間を稼ぐための新商品を開発すればよい!
ということでした。
開発ロードマップという絵を見せたことで、商品企画の中では現状認識を共有することができました。
当時、新商品開発について思いついたことを列挙すると、
- 主力製品の後継機種開発の時間を稼ぐのが最優先
- お客様のニーズと社内リソースを紐づけて商品イメージを作る。
- 商品イメージを実現する手段を明確にする。
- 社内リソース(人)はできるだけ使わない(使えない)。
- 新規の開発はしないで既存の資産を利用する。
- 社内でできるけれど、今はできないことを社外リソースで実現する。
といったことです。
ざっくりまとめると、
「既存技術と購入品(パソコンとか)を組み合わせて、お客様のやりたいことができる新商品を企画する。」
これが商品企画担当者としての最初の目標になりました。
売れる商品企画実現までにはいろいろありました
新商品を開発するという情報が社内で動き出すと、持論(自論)と批評が飛び出してきます。後ろからだけではありません、正面からも刺されてしまうこともあります。
- こんなモノを営業は求めているのではない。ライバルメーカーと同じことができて安い新商品が欲しいのだと従来からの主張を繰り返す。
- 「うまくいかないよ。」と下を向く技術
いいこともありました。
- 「ここから先は、オレがやる。」と協力してくれたベテランの技術
- 別プロジェクトで忙しい中、開発を引き受けてくれた技術
- いろいろと思っているだろうに見守ってくれていた営業
多くの人の協力により、お陰様でリリース予定を守ることができました。
助けて(おそらく見かねて手伝って)頂いた方には、今も感謝しかありません。
結果を出せば、売れれば営業の意見も変わる
提案した商品企画の結果は、新商品在庫日に1台目出荷、その後も社内の予想を良い意味で裏切る受注となり、主力製品の派生モデルとしてその後もモデルチェンジを重ねることができました。
商品企画担当として「社内リソースを最小限にした新商品を開発し、予定通りリリースする。」と宣言し、結果的には有言実行したことになりましたが、多くの方の協力あってのことです。
これ以後、商品企画への風向きが変わってきたようです。
後日談:開発ロードマップのその後
売れれば売れたで、主力製品に比べ原価率が良くないとか、経営的な指標での指摘が出ていたようです。
偉い人に面と向かっては言えませんが、
「新商品が出したかったのでしょう。利益は出ていませんか?売れていますよね?」
と担当者は思っているし、商品企画を担当していた執行役員は大変だったようです。
1つ目の売れる商品企画と並行して、開発ロードマップの作成も進めていました。
- 対象期間を1年から3年間へ
- 主力製品から主要ラインナップへと対象商品を拡大
こうして作り上げてきた開発ロードマップでしたが、個人の願望を入れた瞬間に信頼を失うことになります。私利私欲とまでは言いませんが、客観性が欠けた意見が入ってしまうとそれはもはや個人の意見であり、判断(開発)の軸にはなりえないからです。
好きな絵を描いて報告しても、部下に説明しても、カリスマでもあるまいし同意や共感は得られないと思うのですが・・・。
ありがちですが、今もって私にはそうする理由が分かりません。上から下はなかなか見えませんが、下から上は案外よく見えるものです。
こんな風に思うのも、私の考え方が独特なせいなのかもしれません。喜ぶ顔を見るのが好きでうれしいだけなのですが・・・。
なお、ずいぶんたってからですが、「企画担当者以外の人が開発ロードマップを使うことまで考えなかったのは、片手落ちだったかもしれない。」と思うことがありました。開発ロードマップは商品企画にとっては便利でしたが、技術からすれば(余力を含め)開発力を査定されているようなものですから。
まとめ
商品企画のため必要に迫られ作った開発ロードマップは、設計開発のライフサイクルを明確にするものでもありました。
ここでは、以下について説明しました。
- 商品企画担当になった頃の社内状況
- 時代は変わっている! 技術主導の製品開発が残したもの
- お客様が変わってきた?
- 社内の様子が変わってきた?
- さて、ではどうする!時間を稼ぐ売れる新商品企画の誕生
- 売れる商品企画実現までにはいろいろありました
- 結果を出せば、売れれば営業の意見も変わる
- 後日談:開発ロードマップのその後