RoHS(ローズ)について相談されてしまったので調べてみました

RoHS(ローズ)、それは突然やってきました。

RoHSについて教えてください。

ネットで調べてみましたが、調べるほどに分からなくなってしまいました。

はかせ
はかせ

私もRoHSの担当ではないし、少し時間をください。

どうやら、自動車部品を扱う取引先の案件が出たため、(おそらく)自動車部品を扱うメーカーでは常識であろうRoHSに関する書類提出が必要になり、巡り巡って私のところに聞きにきたようです。

RoHS:Restriction of the use of certain Hazardous Substances

私はRoHSの担当者ではなく、製造管理規定を作るときに少しかじった程度で、実務となれば改めて調べることから始めるしかありません。

参考:製造管理規定

参考:製造管理の参考:製造の品質

早速、Googleさんのお世話になりながら調べ始めました。

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RoHSが要求していること

RoHSは、交流1000V以下、直流1500V以下で動作する電気電子製品に含まれる化学物質についての規制で、EUから始まりました。

RoHSの要求とは、「EUで販売する最終製品に含まれてはいけない規制物質についての要求」です。

「最終製品」とはEUで販売する製品のことであり、RoHSは最終製品を販売する会社への要求です。

「規制物質」には、次の様なものがあります。

RoHS 6鉛、水銀、カドミウム、6価クロム、特定臭素系難燃剤(PBB、PBDE)の6物質
RoHS 10RoHS 6に、フタル酸類の4物質(DEHP、BBP、DBP、DIBP)を追加した10物質

冒頭のRoHSの相談に戻ります。

はかせ
はかせ

問題となっている自社製品は、国内向けの製品でありRoHS対象製品ではありません。

当社が国内向けに販売する分には、RoHS対応品ではなくても問題にはならないはずです。

さらに担当営業に話を聞いてみると、

  • お客様の国内向け製品が急遽EUに輸出されることになり、RoHS対応が必要になった。
  • お客様が今度EUで販売する製品の一部に、当社の製品(国内向けの製品)を使っている。
  • お客様には「RoHSの規制物質が含まれていないこと」、「RoHS規制物質を含んでいないことを保証しろ」と言われている。
はかせ
はかせ

ようやく状況がのみ込めてきました。

正論で済めば簡単なのですが、少々やっかいな相談のようです。

RoHSに対応するということは、販売前から設計や製造についてご相談しながらでないと現実的には対応ができません。

しかも、当社が販売する製品がお客様向けの専用品ではなく、一般向けに販売している製品をお客様が使っているという状況です。

このため、RoHS規制の対象になるのは最終製品なので、「お客様の製品に組み込まれている当社製品は、RoHS対応品ではありません。」ということになるのですが、もう1つ必要なことがあります。それは、RoHSについてのお客様からの要求に対する対応です。

当然のことながら、お客様はRoHSについてはもちろんの事、RoHS対応品の製造についてもどのようなことが必要になるかはご存じで、口にはしないものの無理強いをしていることは分かっている様子です。

RoHS規制物質について成分分析をすると、分析結果報告書には「RoHS規制物質は、検査装置の検出限界以下」と明記されているのですが、「当社製品にRoHS規制物質が含まれていない。」ということではありません。

結局、当社のできる回答は次の2点となります。

  • 当社製品にRoHS規制物質が含まれていないとは言い切れません。
  • RoHS規制物質が含まれていないという保証もできません。
はかせ
はかせ

この話、最終的にどうなったかは分かりませんが、いくらお願いされても何とかしたいと思っても、「保証を求められても、保証できないこともある」ことについて、よい勉強になりました。

RoHSはなぜRoHS指令と呼ばれるの?

RoHSの要求の中で最も大きい要求と言われていることは、

EU加盟国は販売される電気電子製品に禁止物質が含まれないことを確実にしなければならない。

というもので、RoHSは欧州委員会がEU加盟国政府に対して指令するものなのでRoHS指令と呼ばれています。

RoHSの法的なポイントは2つあります。

法的効力はEU加盟国のRoHSについての各国法(国ごとの法)

1つは、欧州市場(EU)に販売される電気電子製品に対して法的効力を有するのは、

RoHS指令に基づきEU加盟各国が策定するRoHSについての各国法

であり、

RoHS指令

ではないということです。

このため、欧州に電気電子製品を販売する会社は、RoHS指令に加え、RoHS各国法への対応が必要になります。

つまり、各国法も読む必要があります。もっとも、EU加盟27ヵ国(2020年にイギリスが抜けて27ヵ国になりました)すべての(英語で書かれているとは限らない)各国法をどこまで読むかは、会社が個別に判断しているのではないでしょうか。

法の対象はEUで最終製品と販売される電気電子製品

もう1つは、RoHS指令の対象は、

EUに最終製品として販売される電気電子製品

対象であるということです。

つまり、RoHS指令は、

電気電子製品を構成する個々の部品に対して直接効力を持つものではない

ということになります。

はかせ
はかせ

RoHS指令の対象は、電気電子製品の最終製品であり、最終製品の部品ではないのですが、このことがRoHS規制物質の調査に際し少々面倒なことが起きる一因にもなっています。

RoHSはEUで電気電子製品を販売するために必要な法規制

製品を製造・販売するには、どんな種類の製品であれ販売先がどこの国であれ、何らかの法規制を受けます。製品の含有物質の規制は、食品や衣料では当たり前の規制です。

電機電子業界でRoHSが話題になる理由の1つに、これまでの電気電子業界では、法規制の対象ではなかった含有物質を規制する法だということが上げられます。

RoHSの規制物質には、電気電子製品の性能を上げる、価格を抑える、製品寿命を延ばすために使っている鉛や可塑剤などがあり、その使用を禁止されたため話題になっているという面があります。

さらにもう1つの理由として、規制物質の使用を禁止する理由が、

廃棄物が不適切に処理されても環境及び作業者に害が及ばないようにするため

というものだからです。

「廃棄物が不適切に処理されても」とは、気持ちは分かる様な気もしますが、法として要求されるとなると、「ちょっとそれは別の話でしょう。」と言いたくもなります。

はかせ
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環境及び作業者に害が及ばないように、廃棄物を適切に処理するのが当たり前だと思っているので、違和感があるのだと考えています。

繰り返しになりますが、RoHSの対象は、

 

RoHSはEUで販売される最終製品

です。

そこで、EUで販売する最終製品について法(RoHS指令)を守るためには、

製品の設計・調達・製造・品証・発送・販売といった製造業のあらゆる場面で全工程の管理を徹底する。

ことが必要になります。「全工程の管理を徹底する」とは、言うは易し実行するのはとても大変です。製造業としての実力の差だと言われればそうかもしれませんが、これがどれだけ大変なことかは、製造についてご存知であれば想像できると思います。

はかせ
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RoHS対応品ですということが、どれだけ大変なことなのか、分からない人には、おそらく説明しても分からないかと思います。

以上説明してきたことをまとめると、最終製品ではない個々の部品に対してRoHS各国法が直接適用されることはないため、最終製品に採用された(使われてしまった)部品を供給する会社は、供給先の企業からの要求にだけ対応すればよいことになります。

仮に、RoHS規制物質が、自社製品(部品)に混入していた場合、部品を供給した会社は、RoHSについての法の罰則を受けることはなく、部品を供給した会社との売買契約に従い対応することになります。

内容によっては損害賠償を求められるかもしれません。しかし、最終製品の製造会社は、市場からの製品回収、EU加盟国の当局との対応、風評や様々な損失、社内の責任問題や体制再構築など、その損害や責任の比は比べることができないものと思われます。

RoHSの対象は最終製品、当社の製品は部品として使われているだけなのに

最終製品を構成する部品や部材、その原料などを製造する部品や素材メーカーにはRoHS各国法が適用されないのですが、お客様から依頼されるRoHS規制物質についての調査には対応することになります。

お客様からの依頼で行うRoHS規制物質の調査は、EUで最終製品を販売していない部品や素材メーカーにとって作業的には大変な面があります。

部品や素材メーカーは、部品や素材を納めているお客様からの様々な要求について、期限(納期)までの回答を求められます。

下図は、部品や素材メーカーから最終製品を販売するメーカーまでのモノの流れの一例です。

D社(素材)→C社(単一部品)→B社(組立部品)→A社(最終製品の販売)

RoHSの調査についてどのように伝わっていくのか考えてみます。

  • A社(最終製品の販売)は、「RoHSの法規制が求める要求事項」を正しく認識していて、何のためにRoHS規制物質の調査をお願いしているのか説明している。
  • B社(組立部品)は、A社から直接「RoHSの法規制が求める要求事項」について伝えられているので、RoHS規制物質の調査の必要性は理解している。

さて、C社(単一部品)、D社(素材)となるとどうなっていくでしょうか。

B社(組立部品)は、単一部品を扱うC社がおそらく複数あります。C社に対してもA社から説明を受けたように説明するのは現実的には難しいであろうことが想像できます。

  • C社(単一部品)は、B社(組立部品)からRoHSの調査票を渡されて、できるだけ早くの回答をお願いされ、とにかく調査票を期限までに出そうとします。
  • D社(素材)は、C社(単一部品)から調査票を渡され、ここでも急ぎの回答を求められます。

A社(最終製品の販売)が懇切丁寧にB社(組立部品)に説明したとしても、B社(組立部品)からC社(単一部品)、C社(単一部品)からD社(素材)へといわゆる伝言ゲームになっていきます。しかも、組立部品、単一部品、素材メーカーとなるにつれその会社数が増えていきます。伝言ゲームに加え、倍々ゲームも始まるのです。

B社(組立部品)への要求はA社(製品販売)の1社だけかもしれません。これが、C社(単一部品)、D社(素材)となると、同じような要求が複数どころか多数集まることになり、しかも期限はどんどん短くなります。そして、調査票を処理することに忙殺されてしまいます。

このため、RoHS規制物質の調査では、次のようなことが起きています。

  • A社から「RoHS規制10物質は使わないこと」という要求がB社に伝わります。
    • A社は、RoHS規制10物質をCAS No.(化学物質の識別番号)で管理しています。
  • B社は、A社のCAS No.で管理された調査票を使い回答します。
  • B社は、C社に確認します。
  • C社には、B社ほどA社の要求が伝わりませんし、調査票にしても様々な会社から要求があり回答を作るだけでも大変な作業になります。

調査票を使わないRoHS規制物質調査方法の1つに、chemSHERPAというものがあります。

参考:chemSHERPA(https://chemsherpa.net/)

以前、たった1つの製品のために、chemSHERPAのデータを要求されたことがあります。お客様は、「chemSHERPAのデータを提出して下さい。」と丁寧なのですが、それまでchemSHERPAというものがあることすら知らない担当者にとっては分からないことばかりで、試行錯誤しながら何とか提出しましたが、久しぶりに勉強しました。

  • 化学物質について
    • 化学は好きでしたが仕事で化学の知識を使うことはなかったので思い出すまで時間がかかりました。
  • chemSHERPAツールの使い方
    • 資料はありますが、いかんせん量が多いのでざっと目を通して概要を理解し、何をすればよいのか把握するまでに時間がかかりました。
  • chemSHERPAのツールやデータベースがバージョンアップ
    • バージョンアップすると新しいバージョンでデータ作成が必要になり面倒でした。
はかせ
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各社各様のエクセルの調査票が送られてくるよりは、chemSHERPAの方がツールの使い方を1つだけ覚えればよいのはメリットかもしれません。

RoHS規制も製品(部品)も変わっていくのにどこまでやればいいのだろうか

RoHS担当になると、すぐに「どこまでやればいいんだ」という壁にぶち当たります。

はかせ
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いきなりのRoHSの調査は、「ぶち当たる」というイメージでした。

RoHSによる法規制を順守しよう思い実際に始めてみると、次のような変更の多さに悩まされます。

  • 適用除外が変わる。
  • 対象物質が追加される。
  • 社内製品は常に入れ替わる。
  • 顧客との取引も常に変わり続ける。

つまり、対象製品も管理レベルも常に見直し続けなければならないということです。

この記事では、EUのRoHSのみを扱っていますが、RoHSはEUだけではありません。検討範囲、プロジェクトならスコープの範囲が広がるばかりです。RoHS担当者にとっては、RoHSの仕事の範囲は増える一方です。

さらに、「社内で他に聞く人がいないからお願いします。」と言われ何とか答えてしまうと、「当面頑張ってなんとかしてくれ」と言われるだけで、適任者の異動や採用も現実的にはないという厳しい現実しか見えてきません。

「どこまでやればいいんですか?」と聞いたところで、「これから先、RoHS規制物質を製品に混入させないように頼むよ」という答えでは、かえって仕事が増えるばかりです。

増え続ける仕事から身を守るため、必要に迫られ、実際のところどこまでやればいいのか自分で考えることになります。

RoHS対象製品とリスクについて考える

「何とかしなければならない。しかし、頑張れば何とかなるという量ではない。」という現実を前に、対象製品とリスクについて考えてみます。

対象製品がいくつあるか、どこまでリスクを許容(受容)するか考えるとは、例えば次のようなことです。

  • 対象製品はEU向けの新製品のみとする。
  • RoHS規制物質が含まれないことを求めるのではなく、規制範囲をクリアしてどこまでマージンをとるのかを整理する。

やろうと思えば、RoHS規制物質が含まれないように徹底した混入防止管理も可能です。ただし、コストがかかります。これは、混入管理を徹底すればするほど利益がどんどん減るということです。

ここで、現実的にどこまで混入管理をするのかという(経営)判断が必要になります。

混入よる会社のリスクと利益について判断しなければならないため、RoHS規制物質の管理は、担当者や担当部署(品証部)の判断ではなくなります。RoHS規制物質の管理が、経営判断となることがポイントです。

RoHSと会社の利益について整理します。

  • RoHS規制物質を含まないことを目指して、設計・調達・製造・品証・発送・販売の全ての局面について徹底的に管理すれば、当然ながらそのための管理コストが増え利益が減ります。
  • 逆に、利益優先を徹底してしまうと、混入リスクを低いレベルで管理することになり、RoHS規制物質による事故(RoHS規制物質の混入)の発生確率は上がっていきます。

つまり、会社としてのRoHSについてのリスクマネジメントが必要となり、RoHS担当者は、経営層の判断を求めることが必要になります。

RoHS規制物質混入ゼロの意味

RoHS規制物質が混入するリスクを恐れるあまり、「RoHS規制物質が混入していないこと」、つまり、「RoHS規制物質がゼロであること」を求め始めると、一体何のために混入管理をしているのか分からなくなっていきます。

RoHS規制物質の検査をしかるべき検査機関に依頼しても、結果は「RoHS規制物質は計測機器の計測限界より少ないです。」としか報告書には記載されません。

「RoHS規制物質がゼロであることを証明する。」ことは、技術的にとても難しいことなのですが、「ゼロでなければダメだ」とか「含まれていないことを保証しろ」と言い出す人がいたりするともうどうにもなりません。次の打つ手がないので、何もできないという結果になります。

そこで、RoHSを担当することになってしまったら、次のようなプロセスで進めるのがよさそうです。

  • RoHSの法的要求事項を理解する。
  • 自社にどんなリスクがあるのか把握する。
  • どこまで管理するのか仮定(想定)する。
  • 予想される事態、その時何をしなければならないかをまとめる。
  • これらを整理して、経営層に報告して判断を求める。

その後は、

  • 過剰な(無駄な)管理をしないため
  • 事故を未然に防ぐため

RoHSについて変更があるときはもちろん、年1回とか定期的に見直すことをおすすめします。

なお、RoHS 1発効は2006年です。幸いにして、RoHS担当の前任者がいるならば、

  • 前任者がやっていることを確認する。
  • 現時点の状況に合わせて運用する。

と割り切って始めてみてはいかがでしょうか。

RoHS規制物質をゼロに近づけるために様々な管理を徹底する対応方法は、負荷が増えていく割にそれに見合った成果や効果を得ることは期待できないと考えています。

RoHS規制物質の混入レベルを厳しくするだけでなく、規制物質全体に網をかけることをバランスよく進めることが現実的な対応になると考えています。

まとめ

ここでは、RoHS指令について、以下の項目でせつめしました。

  • RoHSが要求していること
  • RoHSはなぜRoHS指令と呼ばれるの?
    • 法的効力はEU加盟国のRoHSについての各国法(国ごとの法)
    • 法の対象はEUで最終製品と販売される電気電子製品
  • RoHSはEUで電気電子製品を販売するために必要な法規制
  • RoHSの対象は最終製品、当社の製品は部品として使われているだけなのに
  • RoHS規制も製品(部品)も変わっていくのにどこまでやればいいのだろうか
    • RoHS対象製品とリスクについて考える
    • RoHS規制物質混入ゼロの意味
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