2023年から「ISO9001 品質マネジメントシステム-要求事項」の改訂作業が、ISO(国際標準化機構)の技術専門委員会(TC176)で進められています。
2025年9月には、ISO9001:2026(DIS)の邦訳版「ISO/DIS 9001:2025 品質マネジメントシステム-要求事項」が発売され、「DIS(国際規格案)なので今後の改訂作業で変更される可能性がある」との前提でISO9001:2026に関するセミナー開催が増えてきています。

私の場合、品質マニュアル改訂は、日本語版のJISが発行されてから本格的にとりかかることにしていますが、セミナー案内などで気になる言葉(キーワード)についてはGoogle先生に聞いたりしています。
ここでは、2025年11月現在のISO9001改訂スケジュールと、ISO/TC 176のWebサイトやISO9001改訂に関するセミナー案内などで私が個人的に気になっている言葉について説明します。

ISO9001/ISO14001の改訂情報は、JSA(日本規格協会)グループのWebサイトを参考にしています。
他に、海外の審査機関では、少々専門的ですがテュフ(テュフ ラインランド ジャパン株式会社)のWebサイトを参考にしています。
なお、どちらの会社とも公私ともに関係はありません。
ISO9001:2026の改訂スケジュール
2025年11月現在、ISO9001:2026のDIS(国際規格案)の投票が行われています。
今後は、
- 2026年4月~6月:FDIS(最終国際規格案)投票
- 2026年9月:発行予定
その後、日本語版(JIS版)が発行となります。
ISO規格の作り方については、以下のページをご参照ください。
ISO9001:2026改訂のポイント(気になる言葉)
大きく変更はされないといわれていますが、何とかQMSを回している身としては、頭を悩ますだけでなく、うまく取り込まないと「ISOを維持するためだけの活動」をすることにもなりかねないなと感じています。
2025年10月現在のISO9001:2026年版の情報のうち、個人的に気になるキーワードを列挙します。
品質文化と倫理的行動
社長によるリーダーシップとコミットメントに、「品質文化」と「倫理的行動」の促進が追加され、社員が認識することも求められます。
企業理念と品質方針、品質目標とを関連づけるストーリーをわかりやすく表現したり、説明しやすくしておく必要があると考えています。
リスクと機会、事業中断への対応
2015年版の「リスク及び機会」は、説明がしにくい表現となっていました。
2026年版では、リスクと機会とが明確に分けられ、わかりやすくなります。
事業中断への対応についてより強く求められるようになり、リスク管理の実効性についもて考慮する必要がありそうです。
ISO9001:2025の追補で追加された気候変動は、マネジメントレビューのインプット情報で考慮することで対応しましたが、どこまでかつどの様にQMSに組み込んでいくかは検討が必要だと考えています。
また、次のような外部環境の変化への対応(リスクと機会の管理)も求められます。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)
- 外部委託
- AI活用
変更の計画
変更の計画に、変更マネジメントの概念が考慮事項として追加されます。
状況の変化に応じて計画を柔軟に見直す体制が必要になります。
変更をマネジメントするにしても、何をどこまで管理するか検討が必要です。
文書の保持と維持が利用可能な状態にするに統一
2015年版での文書の保持と維持は、言葉として使い分けようとするとわかりにくくなるだけで、無理に使い分けない運用としていました。
2015年版の保持と維持は、英語でもわかりにくかったのですが、2026年版はわかりやすくなります。
- 保持(retain)
- 維持(maintain)
- 証拠として(as evidence)利用できるようにする(be available)
2026年版では、文書や記録を説明に(証拠として)利用できるようにするになるのは、文書管理をわかりやすくするよい改善点だと考えています。
顧客満足
顧客満足に加え、顧客からのフィードバック(SNSやレビュー)、苦情も重要な情報源として位置づけられるようになります。
継続的改善
継続的改善そのものに変更があるわけでなく、成果を上げること、実行と検証について明確になります。
組織の状況
社内・社外の課題と利害関係者のニーズの特定に加え、モニタリングと見直しが求められるようになります。
モニタリングと見直しをやっていないわけではないですが、何をどこまでやるかは考えておく必要がありそうです。
パフォーマンス評価
分析と評価が、データ収集だけでなく、本質的なことに基づく意思決定が重視されるようになります。
また、内部監査やマネジメントレビューについて、以下の点でわかりやすくなりそうです。
- 内部監査について監査目的を明確にすることが求められ、体系的に整理されます。
- マネジメントレビューの項目が整理されます。
ISO9001:2026年版の個人的イメージ(2025年11月現在)
ISO9001:2026は、2015年版と比べて大枠の変更はないといわれています。
しかし、Google先生に聞いてわかるISO9001の2026年版改訂に関する情報(キーワード)からは、次のような質的なレベルアップを求められるように感じています。
- 経営との統合を求められた2015年版の品質マネジメントの要求は、「会社としてあるべき姿に向かう」姿勢が求められている。
- 2026年版では、「会社としてあるべき姿に向かうために実際に取り組んでいる」ことを求められている。
個人的な印象なので、説明(言語化)が難しいのですが、
- 2015年版では、自社で決めたやり方で取り組んでいればOK
- 2025年版では、自社で決めたやり方を含め、実際に成果のでる取り組みをしているかが求めれるようになる。
イメージです。
QMSの品質が経営と同じ様な意味をもつため、QMSとは経営マネジメントの仕組みと考えるならば、要求事項として求めることも2015年から2026年の10年間でレベルアップしたともいえます。
とはいえ、ISO審査対応という面で、形式的には要求事項を満足していると説明してきた場合、2026年版の対応は、単純な品質マニュアルの改訂にとどまらず、関連規定を含めた見直しが必要になるのではないかと考えています。
会社としてのあるべき姿だとは思いますが、顧客満足を確実に向上させるための継続的改善の仕組みなどによる会社のパフォーマンス向上を実現する仕組みが求められているイメージです。
まとめ
2023年から「ISO9001 品質マネジメントシステム-要求事項」の改訂作業が、ISO(国際標準化機構)の技術専門委員会(TC176)で進められています。
2025年9月には、ISO9001:2026(DIS)の邦訳版「ISO/DIS 9001:2025 品質マネジメントシステム-要求事項」が発売され、「DIS(国際規格案)なので今後の改訂作業で変更される可能性がある」との前提でISO9001:2026に関するセミナー開催が増えてきています。
ここでは、2025年11月現在のISO9001改訂スケジュールと、ISO/TC 176のWebサイトやISO9001改訂に関するセミナー案内などで私が個人的に気になっている言葉について、以下の項目で説明しました。
- ISO9001:2026の改訂スケジュール
- ISO9001:2026改訂のポイント(気になる言葉)
- 品質文化と倫理的行動
- リスクと機会、事業中断への対応
- 変更の計画
- 文書の保持と維持が利用可能な状態にするに統一
- 顧客満足
- 継続的改善
- 組織の状況
- パフォーマンス評価
- ISO9001:2026年版の個人的イメージ(2025年11月現在)

