検証機関向けのJIS規格である「JISQ17029:2022 適合性評価」について、QMS(品質マネジメントシステム)のだ妥当性確認と検証について見直す際の参考になると思い、以下の記事をまとめました。
その後、「JISQ17029:2022 適合性評価」を要求事項と考えた場合の認証やいわゆる自己宣言について、以下の疑問を持ちました。
- QMSは審査機関によりJISQ9001(ISO9001)の要求事項を満たしているかの審査をするように、検証機関向けのJIS規格である「JISQ17029:2022 適合性評価」についても審査や認証取得はあるのか?
- 自己宣言というものができるのか?
そこで、改めて「JISQ17029:2022 適合性評価」を読み直し、自分の考えについてまとめました。
なお、私はISO9000シリーズなどの審査機関での経験はありませんので、この記事はあくまでも私見ですのでご了承ください。
「JISQ17029:2022 適合性評価」とは
「JISQ17029:2022 適合性評価」の正式名称は、次の通りです。
JIS Q 17029 適合性評価
妥当性確認機関及び検証機関に対する一般原則及び要求事項
以下、「JISQ17029:2022 適合性評価」について簡単に説明します。
妥当性確認と検証とは
「JISQ17029:2022 適合性評価」は、妥当性確認と検証を行う機関に対する要求事項であり、この規格により活動することで、妥当性確認や検証について一貫性を確保し、信頼性の向上を期待できるとされています。
- 妥当性確認とは、これから行おうとする調査などが妥当であること
- 検証とは、これまでに行った調査などが正しいこと
「JISQ17029:2022 適合性評価」が制定された背景
「JISQ17029:2022 適合性評価」が制定された背景について簡単に説明します。
2012 年頃から、ISO (国際標準化機構)において、妥当性確認及び検証に関する用語及び概念について調査を行いました。
調査の結果、以下の状況であることが分かり、これを改善するために、ISO(国際標準化機構) においてISO/IEC 17029開発に着手しました。
- ISO の各分野のTC(専門委員会)において、妥当性確認及び検証に関する内容を含む規格が別々に開発されている。
- 80 以上もの妥当性確認及び検証に関する定義が乱立している。
なお、詳細(といっても概要ですが)は、以下の記事をご参照ください。
実際にQMSを運用していると、妥当性確認や検証は、例えば部署や担当者によっても意味することが違い、妥当性確認や検証として具体的に何をやっているかを明確にしないと話が前に進まないことがあります。
「JISQ17029:2022 適合性評価」による審査はあり?
現時点で審査機関による「JISQ17029:2022 適合性評価」に基づく審査はないと考えている理由について、ISO9001によるQMSを想定して私の考えを説明します。
「JISQ17029:2022 適合性評価」を開発した目的
「JISQ17029:2022 適合性評価」が、妥当性確認や検証の定義が乱立する現状から作られたました。
このことから、適合性評価としての妥当性確認及び検証の定義を定め、ガイドライン的な位置づけとして、ISOの各分野で使われている様々な(80以上もの)妥当性確認及び検証の定義を集約する狙いがあると考えています。
序文から
序文を読むと、以下に引用した部分からは、「JISQ17029:2022 適合性評価」が、QMSなど妥当性確認・検証の中で参考にすべきものと考えています。
私見ですが、「JISQ19011 マネジメントシステム監査のための指針」をQMSの内部監査の参考規格として運用するイメージです。
この規格(JISQ17029:2022)の要求事項は、一般的なものであり、個々の妥当性確認・検証のためのプログラムを実行する必要がある。
出典:「JISQ17029:2022 適合性評価」より
また、この規格を適用しない例として、「JISQ9001のQMSにおける設計の妥当性確認・検証」があげられています。
規格全体から
規格の中では、妥当性・確認の定義にはじまり、具備すべき要件などについて書かれています。
その中で、「妥当性確認・検証の声明書」という言葉が使われています。
声明(書)については、改めて次項でと自己宣言との違いを含め説明します。
妥当性確認・検証の声明
「JISQ17029:2022 適合性評価」では、「妥当性確認・検証の声明書」の様に、妥当性確認や検証についての声明についての記述がみられます。
声明とは
声明とは、
- ステートメント(statement)
- 意見や意思を社会に対して発表すること
です。
声明なので、審査機関のような第三者の審査を受けて認証するものではないと考えています。
自己宣言とは
例えば、QMS(JISQ9001:2015)には、自己宣言について以下の様に、規格要求事項として明記されています。
序文0.1一般 内部及び外部の関係者がこの規格を使用できる。
次のいずれかの方法により適合を実証することができる。
1.自己決定し、自己宣言
2.利害関係者に確認を求める
3.自己宣言についての外部による確認を求める
4.外部機関に認証登録を求める
出典:「JISQ9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」より
「JISQ17029:2022 適合性評価」には、自己宣言について記述されていないので、自己宣言ではなく、あくまでも声明になると考えています。
付属書Bから
「JISQ17029:2022 適合性評価」の付属書Bには、参考として「JIS Q 17000:2022 適合性評価―用語及び一般原則」とこの規格に規定する用語及び考え方では、以下の通りとなっており、「JISQ17029:2022 適合性評価」についての声明だということが分かります。
- JISQ17000の適合の表明に対して、妥当性確認の声明書・検証の声明書
- JISQ17000の適合性評価活動の証明機能対して、妥当性確認・検証の声明書の発行
まとめ
検証機関向けのJIS規格である「JISQ17029:2022 適合性評価」を要求事項と考えた場合の認証やいわゆる自己宣言について次の疑問をもち、改めてJIS規格を読み直しました。
- QMSが審査機関によりJISQ9001(ISO9001)の要求事項を満たしているかの審査をするように、検証機関向けのJIS規格である「JISQ17029:2022 適合性評価」についても審査を受け認証を受けられるのか?
- 自己宣言というものができるのか?
ここでは、「JISQ17029:2022 適合性評価」と認証や自己宣言について、以下の項目で説明しました。
- 「JISQ17029:2022 適合性評価」とは
- 妥当性確認と検証とは
- 「JISQ17029:2022 適合性評価」が制定された背景
- 「JISQ17029:2022 適合性評価」による審査はあり?
- 「JISQ17029:2022 適合性評価」を開発した目的
- 序文から
- 規格全体から
- 妥当性確認・検証の声明
- 声明とは
- 自己宣言とは
- 付属書Bから