2020年2月、今更ながらではありますが「環境マニュアル」が完成しました。
環境マニュアルを作る前提として、
- 対象組織については、「品質マニュアル」で想定した20名規模のモノづくりメーカーとすること
は決めていたものの、作り始めてみると、
- 環境関連の法令だけでななく、専門用語の理解なども必要なこと
が分かり、改めて要求事項を読み直すなど意外に時間がかかりました。
環境マニュアルを作ってみた結果分かったことですが、
- 品質マニュアルと環境マニュアルを合わせた統合マニュアルが、使用者にとっては使いにくくなる理由
についても理解を深めることができました。
なお、統合マニュアルについては、以下の記事をご参照ください。
以下、環境用語に悩まされるなど試行錯誤しながら作った「環境マニュアル」作りについて時系列で説明します。
時は2022年の秋、諸々の事情があり、統合マニュアルの見直しに着手。品質から手をつけていますが、環境も見直さないわけにはいかないようです。
検討が無駄にはならなかったということでもありますが。
ある年の初夏:相談
次の様な相談がありました。
品質と環境のISO認証を持っている会社が、グループ会社となるのだが、当社のISOとの関係をどうしたらよいのか教えて欲しい。
そこで、マニュアルを見せていただくと、
- 品質と環境を合わせた「統合マニュアル」で運用している。
- 設計・開発に関し適用除外がある。
- 改訂履歴を見ると、審査でマニュアルについて指摘を受けて改訂している。
- 「統合マニュアル」を読んでも、具体的に何をしているのかは(思っていた通り)分からない。
ことが分かりました。
この時点で、コンサル任せで品質と環境の認証を取得してしまった可能性が高いと判断していました。
これでは、実際の現場を見て、話を聞いてみないと先には進めないなと判断し、静観(放置)していました。
ある年の初秋:現状確認
しばらくして、現地で実際の状況を確認することになり、統合マニュアルや関連規定も含めて見てきました。
私は、「ISO9001:2015では、適用除外はない」と考えていましたが、現場を見てお話を聞かせて頂き以下のことが分かりました。
- 適用除外については、設計だけでなく、製造工程を含め顧客の指示通りのモノづくりをしているとのことで、納得しました。製造工程の設計さえも顧客の指示通りでは、図面からモノを作る力量はないと判断するしかないと思います。
- 定められた工程に従い、モノを作ることはできている。自動車の部品も作っているだけに、決めたことを実行する点については問題なさそうだ。
- 検査記録は2年で破棄しているという。発注者(お客様)の指示通りに作っているので、発注者の受入検査で十分ということなのだろうと判断しました。
さて、現状は分かったが、次にどうするか。
そこで、「統合マニュアル」と関連規定のすべてを見せていただけないかとお願いしました。
ある年の秋:統合マニュアルの分析
「統合マニュアル」と関連規定が送られてきたので、ざっと目を通してみたもののよく分からない。少なくとも3回は呼んだのですが、結論は次の通りとなりました。
- 「統合マニュアル」を読んでも、品質のことなのか環境のことなのか、両方に関することなのかは、大体しか分からない。
仕方ないので、関連規定の共通点、相違点を洗い出すことにしました。これも地味に時間がかかりました。
- 品質と環境の両方に関連する共通規定
- 品質マネジメントにのみ関連する規定
- 環境マネジメントにのみ関連する規定
そして、分かったことは次の通り。
- 「統合マニュアル」は、「品質マニュアル」に「環境マニュアル」の項目を追記した形となっている。このため、「統合マニュアル」からは、品質なのか環境なのか、それとも共通なのかを読み取るのは、ほぼ無理と判断しました。
- 品質マネジメントについては、適用除外が含まれているので、親会社の品質マネジメントに含めるには、工場として扱えば何とかできる。
- 環境マネジメントに関する部分は、拠点の場所を考慮する必要があるので、ISO14001の認証を維持するなら、「統合マニュアル」のまま維持した方が審査費用を払っても(ISO事務局としては)メリットがあると判断しました。
この頃、環境マネジメントシステムについては、要求事項から改めて勉強し始めたのですが、
- ISO14001:2004と2015とでは結構違う。
ことが分かりました。
これは、付属書からも明らかなのですが、
- 2015版のEMSは、2015版のQMSと同様のマネジメントシステムになっている。
ことを改めて再確認しました。
ある年の初冬:作成方針を決める
親会社に統合するかどうかは経営判断になるため、
- 「統合マニュアル」の再構築
について検討を始めました。
具体的には、以下の方針で進めます。
- 「統合マニュアル」は、「品質マニュアル」と「環境マニュアル」に分ける。
- 「環境マニュアル」は、グループ会社のみを対象とする。
ということで、「環境マニュアル」を作成するため、具体的な作業を開始しました。
ある年の年末:作成方針の見直し
「環境マニュアル」作りから始めたのですが、いざ始めてみると、環境マネジメントの場合、法規制や地域により含める内容が変わってくるため、環境関連規定も同時に作らないと形にならないことに気付きました。
そこで、次の様に「環境マニュアル」作りを進めることにしました。
- 品質マネジメントと共通のことについては、親会社の品質マニュアルに合わせる。
- 環境関連規定の内容を整理し、「環境マニュアル」にできるだけ含める。
「環境マニュアル」を作り始めて、意外に時間がかかっている理由の1つに、次のようなことがあります。
- 環境用語(環境マネジメントと環境法令の専門用語)に慣れること
環境用語が難しいとうよりは、言葉の定義や附則の内容が分かりにくいので、「環境マニュアル」と関連規定で使われている意味を正確に知ろうとすると、言葉の意味の確認で時間だけが過ぎていきました。
そこで、環境用語について正確に知ることは後回しにして、まずは「環境マニュアル」と関連規定の形を作ることを優先しました。
そして、「環境マニュアル」の完成が見えてくる頃には、附則も参考になることに気付きました。規格だからやむを得ないのでしょうがとっつきにくいです。
「環境マニュアル」作りの感想
Googleさんに頼っても情報は今一つ、実際に「環境マニュアル」作りに取り組んでみて、初めて理解が進みました。
実際に「環境マニュアル」を作ってみて、環境マネジメントらしいルール作りは、以下の3つになりました。
- 環境側面に関すること
- 緊急事態に関すること
- 環境法規制に関すること
なお、「品質マニュアル」と共通化できる規定については、「環境マニュアル」に補足説明を入れるようにしてまとめていきました。
「品質マニュアル」に加筆・修正をしない方針で「環境マニュアル」を作りました。
こうして、何とか「環境マニュアル」を完成することができ、公開することができました。
環境マネジメントで分かりにくかったこと
環境関連法令については、面倒ではありますが特に難しいとは感じませんでした。
法令や拠点のある地域の条例など、定められているルールを知り、守ることが主となっているからだと考えています。
イメージしにくかったのは、次に説明する「環境工程図」です。
環境工程図については、???から始まりました
「環境工程図」、言葉だけでは全くイメージできませんでした。
調べていくうちに、「環境工程図」について手順としては理解できるものの、具体的に何をすればよいのかを理解するのに時間がかかりました。
結局、私の勧めるPDCAのように、まずはやってみる、手を動かしてみるのが、結局近道のようです。
間違ったとしても、自分で考え、悩み、手を動かしていれば、なぜそうしたのかも明確になるからです。
コンサルに言われた通りにやっていると、なぜそうしたのか、決めたのかが分からないままになりがちです。
コンサルを使うことが悪いと言っているわけではありません。
「環境マニュアル」を実際に作ってみて、「言ったことしかしない」という弊害を避けるためにも、考えさせる努力は必要だと再認識する良い経験となりました。
まとめ
ここでは、ISO14001について規格から読み直し、環境用語に悩まされ、試行錯誤しながら自分の頭で考え手を動かして作った「環境マニュアル」作りを、どんな風に進めていったかを時系列でまとめました。
- ある年の初夏:相談
- ある年の初秋:現状確認
- ある年の秋:統合マニュアルの分析
- ある年の初冬:作成方針を決める
- ある年の年末:作成方針の見直し
- 「環境マニュアル」作りの感想
- 環境マネジメントで分かりにくかったこと
- 環境工程図については、???から始まりました