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ものづくり白書2020から:中小企業のモノづくりについて考える

モノづくり4.0

2020年版の「ものづくり白書」が公開されています。

正式名称は、

「令和元年度 ものづくり基盤技術の振興施策 第201回国会(常会)提出」

となっています。(以下、モノづくり白書2020と呼びます。)

はかせ
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国会提出文書らしく、表題が和暦、PDFで302ページあります。

表題(タイトル)の「令和元年度」を見て、昭和と平成も終わっているのに西暦ではないことに気づき、変わっていないなとの第一印象でした。

マネジメントレビューの参考になればと思い、まずは目次に目を通すことから始め、気になったところについてまとめています。

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「モノづくり白書」とは

表紙が令和となっていることに「役所だな」と感じつつ、「モノづくり白書2020」の冒頭の説明を簡単にまとめると、次のようになります。

ものづくり白書2020は、法律(ものづくり基盤技術振興基本法)にもとづく、令和元年度(2019年度)に実施した施策について、閣議決定後、国会に提出される年次報告書

一言でいえばお役所の報告書です。

はかせ
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年月日は、西暦併記の元号表示ならよいのですが、ビジネス文書は西暦を必ず入れて欲しいと思っています。

白書や公共事業の文書には元号が使われているイメージがありますが、仕事に使う文書や公文書は、印鑑と共に文書や文書内での年月日が分かりやすい西暦表示を優先して欲しいものです。

はかせ
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確認はしていませんが、法律等に「年月日は元号で表記すること」となっているのでしょうか。

参考までに「ものづくり白書2020」の冒頭の説明には、以下の様に書いてあります。

本報告は、閣議決定を経て国会に提出する年次報告であり、表題は元号表記となっているが、本文に関しては、経済活動において西暦表記が用いられることが多いこと、海外データとの比較となる部分もあること、グラフにおいては西暦表示の方がなじみやすいと考えられることから、原則として、西暦表記を用いている。

引用:ものづくり白書2020より

はかせ
はかせ

暗記や暗算(足し算、引き算)は苦手なので、和暦と西暦の変換はとても煩わしいです。

 

ものづくり白書(2011年から2020年版)は、以下の経済産業省ウェブサイトにあります。

2020年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告) (METI/経済産業省)
2020年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)
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「ものづくり白書2020」の言葉の定義(説明)

ものづくり白書2020の凡例には、ものづくり基盤技術や中小企業の定義があります。以下に一部抜粋します。

なお、関係する法令は、以下のサイトで確認できます。Google検索でも出てきます。

e-Gov 法令検索
電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。
トップ | e-Govポータル
e-Govは、各府省がインターネットを通じて提供する行政情報の総合的な検索・案内サービスの提供、各府省に対するオンライン申請・届出等の手続の窓口サービスの提供を行う行政のポータルサイトです。

参考:ものづくり基盤技術振興基本法

参考:ものづくり基盤技術振興基本法施行令

「ものづくり基盤技術」とは

「ものづくり基盤技術」とは、工業製品の設計、製造又は修理に係る技術のうち汎用性を有し、製造業の発展を支えるものとしてものづくり基盤技術振興基本法施行令で定めるものをいう。

「ものづくり基盤産業」とは

「ものづくり基盤産業」とは、ものづくり基盤技術を主として利用して行う事業が属する業種であって、製造業又は機械修理業、ソフトウェア業、デザイン業、機械設計業その他の工業製品の設計、製造もしくは修理と密接に関連する事業を行う業種に属するものとしてものづくり基盤技術振興基本法施行令で定めるものをいう。

「中小企業」とは

「中小企業」とは、おおむね、資本の額又は出資の総額が3億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社を指す。

はかせ
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中小企業といってもその規模は、資本金3億円以下、家族経営から300人以下と差がとても大きいですね。

「サービス業」とは

狭義のサービス業とは、内閣府「国民経済計算」の経済活動別分類によるサービス

  • 例:教育、研究、医療・保健衛生、公共サービス、対事業所サービス、対個人サービスなど

広義のサービス業とは、狭義のサービス業に、「卸・小売、金融・保険、不動産、運輸・通信」などの各業を併せたもの。

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まずは第一印象:総論を読んでみて

総論「不確実性の時代における製造業の企業変革力」を読んでみて、新型コロナウィルスについて触れてはいるものの、特に目新しい点もなく、2019年度のモノづくり白書と大きな違いはないと判断しました。

「ものづくり白書2020」の概況

「ものづくり白書2020」では製造業を対象に、新型コロナによる危機が進行しており、供給面、受容面の両面に影響が出ていると分析しています。

供給面では、

  • 国外の生産拠点から製品や部品等の途絶や減少
  • マスクが身近なところですが、様々な製品に影響が出ている。

需要面では、

  • マスクの様に急激に需要が増えたため供給不足になっているものもある。
  • 新型コロナによる工事の先送り、工事用資材の先送りによる需要減が表面化している。
  • 工事が再開する場合には新型コロナ対策も必要となり、コストアップ要因ともなっている

これまでにも経済や自然災害などによる危機はありましたが、新型コロナの影響や克服には、これまで以上に大きな変革が求められています。

その理由として、次のことが挙げられています。

  • 新型コロナ対策には移動や人との接触に制限が出る。
  • これまでと同様の危機対応においても、さらに行動の制限が加わる状況となっている。

また、「高まる不確実性への対処と変革への取組のあり方に焦点を当てて分析をしている」とあるのですが、今さら在り方と言われてもかなり先の未来のためなのかと考えてしまいました。

これまでの白書が提起した4つの危機感

「モノづくり白書2020」では、第4次産業革命という言葉が出てきます。

定義は、以下の内閣府のホームページにあります。

内閣府ホームページ 日本経済2016-2017 -好循環の拡大に向けた展望- 平成29年1月

内閣府政策統括官(経済財政分析担当)

1 第4次産業革命とは

第1節 第4次産業革命のインパクト - 内閣府
内閣府の政策(経済財政、科学技術、防災、沖縄・北方、共生社会(含む少子化)、男女共同参画、安全関連(食品・原子力・交通)等)、統計・調査(GDP統計、世論調査等)、白書・年次報告書、パブコメ・意見募集等を掲載。

上記リンク先の「付図2-1 第4次産業革命のインパクト」によると、第1次から3次の産業革命は、次のようになります。

  • 第1次産業革命:蒸気機関による工業化
  • 第2次産業革命:電力による大量生産
  • 第3次産業革命:情報通信技術革命

第4次産業革命については、

  • コアとなる技術革新
    • ビックデータ、IoT
    • AI、ロボット等
  • 新サービスの例
    • データ活用によるカスタマイズ 商品、保守点検、健康管理等
    • 自動車、住居等のシェアリング
  • AIによる自動運転、資産運用等
  • IT活用による新たな金融サービス(フィンテック)

とあり、特に目新しいものはありません。

2018年~2020年の「ものづくり白書」の課題

2018年版ものづくり白書で、第4次産業革命の中で日本の製造業が直面している課題を挙げ、

2019年版では、第4次産業革命における戦略を提起し、

2020年版では、不確実性の時代において取るべき戦略について述べています。

また、2020年版では、「新型コロナによる事業環境の大きな変化、非連続的変革の必要性やデジタル化のインパクトについての経営者の認識の高まりを上げ、日本の製造業に求められる新たな在り方を模索している。」ということで、新型コロナや5Gなどの言葉は出てくるのですが、2020年版のモノづくり白書だからといって、何か目新しいことが書いてあるわけではないと読み取っています。

はかせ
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よく聞く生物学の例え話ですが、「生き残るのは環境の変化に適応した生物である」ということは、日本の製造業においても最近の話ではありません。

また、当たり前なのですが「経済産業省・厚生労働省・文部科学省が一体となって、白書で提言した施策を実施していく」と書かれています。

はかせ
はかせ

私の感覚が偏っているのかもしれませんが、関係省庁の仕事をするためのものづくり白書のような印象を受けました。

2018年から2020年までのものづくり白書の課題を下表に示します。

2018年 2019年 2020年
第4次産業革命が到来する中での我が国製造業が直面している課題 2019年の4つの危機感で提起した課題や方向性とその後の環境変化を踏まえ、第4次産業革命下における戦略 我が国製造業が、この不確実性の時代において取るべき戦略
①「人材の量的不足に加え質的な抜本変化に対応できていないおそれ」 ①「世界シェアの強み、良質なデータを活かしたニーズ特化型サービスの提供」 ①企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)強化の必要
②「従来『強み』と考えてきたものが、成長や変革の足かせになるおそれ」 ②「第四次産業革命下の重要部素材における世界シェアの獲得」 ②企業変革力を強化するデジタルトランスフォーメーション推進の必要
③「経済社会のデジタル化等の大きな変革期の本質的なインパクトを経営者が認識できていないおそれ」 ③「新たな時代において必要となるスキル人材の確保と組織作り」 ③設計力強化の必要
④「非連続的な変革が必要であることを経営者が認識できていないおそれ」 ④「技能のデジタル化と徹底的な省力化の実施」 ④人材強化の必要
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「ものづくり白書2020」の環境と課題、戦略

「ものづくり白書2020」における環境と課題、戦略について説明します。

日本の製造業ととりまく環境と課題

日本の製造業を取り巻く環境は、かつてない規模と速度で急変しつつあり、かつ極めて厳しいものとなっており、この環境変化の「不確実性」こそが、我が国製造業にとって大きな課題となっています。

はかせ
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最近始まったことではなく、2000年代には言われていたように思います。

「ものづくり白書2020」が提起する日本の製造業の戦略

日本の製造業が、この不確実性の時代において取るべき戦略について、以下の4点を提起しています。

はかせ
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なじみのない言葉も出てきますが、特別な内容ではないと考えています。

企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)強化

環境や状況が予測困難なほど激しく変化する中では、企業には、その変化に対応するために自ら変わっていく能力が最も重要なものであり、このような能力は「企業変革力」と呼ばれます。

不確実性の時代における我が国製造業の戦略の1つ目が、「企業変革力の強化」です。白書で説明していることを以下に列挙します。

  • 企業変革力の理論の概説
  • 我が国製造業の企業変革力の分析
  • その強化策の具体的な事例による説明

取って付けたような感じはしますが、次のことを提唱しています。

  • 新型コロナにより顕在化したサプライチェーンの脆弱性については、柔軟性や多様性等の観点から、サプライチェーンを再構築し企業変革力を高める。

企業変革力を強化するデジタルトランスフォーメーション推進の必要

IoTやAIといったデジタル技術は、生産性の向上や安定稼働、品質の確保など、製造業に様々な恩恵を与えるものですが、

  • デジタル技術が企業変革力を高める上での強力な武器である

ことを強調しています。

企業変革力を飛躍的に増幅させるものの例として、

  • 脅威や機会をいち早く感知するのに有効なリアルタイム・データの収集やAIの活用
  • 機会を逃さず捕捉するための変種変量生産やサービタイゼーション
  • 組織や企業文化を柔軟なものへと変容させるデジタルトランスフォーメーション

ここでも取って付けたように、次のように新型コロナが出てきます。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、臨時休校や医療現場での感染予防の観点から、

  • 遠隔教育や遠隔医療など、リモート化の取組を求めるニーズが高まっている。
  • 我が国のデジタルトランスフォーメーションの必要性が加速している。

ことを踏まえ、将来の感染症に対して強靱な経済構造を構築し、中長期的に持続的な成長軌道を確実なものとする必要がある。

つまり、

  • 単に新しいデジタル技術を導入するというのではなく、それを企業変革力の強化に結びつけられる企業が、この不確実性の時代における競争で優位なポジションを得ることができる。

としているのですが、白書によると次の課題があります。

  • 我が国製造業は、IT投資目的の消極性、データの収集・活用の停滞、老朽化した基幹系システムの存在といった課題を抱えている。
はかせ
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何となく誘導されているような感じがします。

設計力強化の必要

はかせ
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設計力強化と言いながら製造の話になっていることに違和感を感じたのがこの部分です。

ここに何かヒントがあるのではないかと期待していたのですが。

迅速で柔軟な対応を可能にする企業変革力を強化する上では、設計力を高めることが重要であるとし、次のことを述べています。

  • 急激な環境や状況の変化に迅速に対応する上では、製品の設計・開発のリードタイムを可能な限り短縮することが必要となる。
  • 製品の品質・コストの8割は設計段階で決まり、工程が進むにしたがって、仕様変更の柔軟性は低下する。

また、いわゆる職人技について、次のように強みではあるが限界が見えつつあると分析しています。

  • これまで、我が国製造業の強みは、製造現場の熟練技能(いわゆる「匠の技」)にあるとされてきた。
  • 2019年ものづくり白書でも指摘したように、「匠の技」を支えてきた人材の高齢化等により、製造技能の継承が問題となるなど、現場の熟練技能に依存することの限界が見えつつある。

また、不確実性の高まりや製品の複雑化により、設計部門への負荷が著しく増大していることを指摘しています。

次のように、「日本の製造業には、設計力を強化する必要に迫られている。」ということまではよいのですが、

  • この設計力を高める上では、部門間や企業間を横断する連携が不可欠である。
  • バーチャルエンジニアリング等、デジタル技術の活用が大きな力を発揮する。

設計力を高めるための分析については、疑問が出始めます。

  • 我が国製造業の設計力は、近年の不確実性の高まりにもかかわらず、あまり向上していない。
  • 3DCADによる設計が十分に進んでおらず、協力企業への設計指示を図面で行っている企業が過半を占めている実体が明らかとなった。

そして、結論が次のようになっています。

  • 不確実性の時代において、設計のデジタル化が遅れていることは、我が国製造業のアキレス腱となりかねない。
  • デジタル化による設計力の強化が急務である。

「設計力を高める」ということが、「デジタル化による設計力の強化」とイコールとなっていることに違和感の原因があるようです。

3DCADを使うことで、設計者の入力工数は増えます。

だからこそ、3DCADに入力したデータをシミュレーションなどによる設計や、類似製品への展開などに活用しないと3DCADの導入が図面を作る工数が増え、コピペで図面を各モデラーが出現し、完全の設計力は上がるどころか粗製乱造で落ちているのが現実ではないのでしょうか。

人材強化の必要

はかせ
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ここでも、課題から結論までが短絡化しているように思います。

人材強化の必要性にについては異論はありませんが、その内容が関係省庁の施策ありきのように思うのは考えすぎでしょうか。

日本の国製造業のデジタル化を進める場合にボトルネックは、人材の質的不足であり、このデジタル化に必要な人材の能力として、システム思考と数理の能力を挙げています。

そして、デジタル化に必要な人材の確保と育成の方策については、次のことを挙げています。

  • 労働政策の観点からは、デジタル技術革新に対応できる労働者の確保・育成を行い、付加価値の創出による個々人の労働生産性をより高めることが重要である。
  • 教育の観点からは、ものづくりの基盤となる実践的・体験的な教育・学習活動を一層充実させるとともに、「数理・データサイエンス・AI」のリテラシー教育を進めるなど今後のデジタル社会において必要な力を全ての国民に対して育んでいくことが重要である。

まとめ

ものづくり白書といいながら、製造業の中小企業が何をしたらいいのかがイメージできず、読むのに時間がかかった割には得るものが少なく残念な気持ちが残りました。

ここでは、ものづくり白書2020について、以下の項目で説明しました。

  • 「モノづくり白書」とは
  • 「ものづくり白書2020」の言葉の定義(説明)
    • 「ものづくり基盤技術」とは
    • 「ものづくり基盤産業」とは
    • 「中小企業」とは
    • 「サービス業」とは
  • まずは第一印象:総論を読んでみて
    • 「ものづくり白書2020」の概況
    • これまでの白書が提起した4つの危機感
    • 2018年~2020年の「ものづくり白書」の課題
  • 「ものづくり白書2020」の環境と課題、戦略
    • 日本の製造業ととりまく環境と課題
    • 「ものづくり白書2020」が提起する日本の製造業の戦略
      • 企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)強化
      • 企業変革力を強化するデジタルトランスフォーメーション推進の必要
      • 設計力強化の必要
      • 人材強化の必要
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