「ISO9000、品質マネジメントシステムを導入して何年もたつが、今でもPDCAがうまく回っていない。」という声があります。
また、「マンネリ化、形骸化している。成果、効果を実感できない。」といった声は、業績の良い企業からも聞こえてきます。
この様な声の背景には、次のようなことがあるようです。
- 売り上げ目標達成が厳しくなってきた。
- ISO9000の認証維持は必要なのか?
- クレーム対応が続く。
- 品質マネジメントという割に何も変わっていないのではないか?
不満の原因は本当にISOですか?
そもそもですが、結果が出ない理由や原因には、
- 目標設定が間違っている、適切でない
- 計画に無理がある
- 実際にやっていることが間違っている
ことが往々にしてあります。
会社やプロジェクトがうまくいっているのは、これまでの活動の結果が見えているということで、必ずしもうまくいっているわけではありません。時には、今後の問題となりうるリスクの兆候に気づいていないことさえあるかと思います。
それでは、PDCAは何のために、どのように回していくのか?
以下、共有されたビジョンがPDCAを回すために効果的であることについて説明します。
ビジョンとは「何のために会社を作ったのか」
私には経営者の経験はありませんが、仕事での判断が必要な場合に、ビジョンが簡単な言葉で分かると実現したいことを具体的にイメージできて助かるのになと思うことがあります。
お客様の品質監査、外部審査、内部監査などで、顧客満足や品質方針・目標を説明する時に困ります。
ビジョンについて創業当初から考えてみると、社長個人の頑張りから社長を中心とした組織を活用するようになっていくと思います。
- 創業時は社長個人のビジョン実現のため、会社(人)を育て、モノづくりをして、その対価としてお客様からお金を頂き利益をあげる。
- 事業が順調に回り出し、社員の育成、モノづくりをどのように進めるのかについて、社長がすべてを判断するのにも限界が見えてきているし、他にも社長自らやらなければならないことに軸足を移し始める時期がきている。
この様な場合にも、会社運営のツールとして品質マネジメントシステムを利用・活用することができるのです。そして会社のビジョンが明確で具体的であればあるほど、品質マネジメントシステムは回しやすくなります。
まずは、ビジョンから会社の品質方針、品質目標を設定し、各部署に展開することを考え実行してみてはいかがでしょうか。
言葉は知ってるPDCA。実際の仕事、業務では何をする?
「PDCA」とは、仕事の進め方の1つです。
以下の4つの段階(工程、プロセス)を繰り返すことで、業務改善、作業の改善ができるようになり、仕事がスムーズに流れ続けやすくなります。
- Plan(計画):計画を立てる。
- Do(実行):計画を実行する、行動する。
- Check(確認):計画通り進んでいるか確認する。
- Action(改善):計画通り進んでいない、うまくできていないなら改善。必要なら目標を見直す、計画を見直す。
PDCAに慣れない初めのうちは、小さいPDCAをゆっくり回してみる。
徐々に慣れてきた。小さなPDCAを速く、うまく回せるようになったら、一回り大きいPDCA、あるいは、別のPDCAをやってみる。
習慣のレベルになったら、標準化して横展開してみる(次の段階です)。
ポイントは、
- まずは、1ヶ月、長くても3ヶ月で、できることをやってみる。
- 小さい目標でPDCA を回してみる。
- PDCAはD(実行)から初めた方がよい。
PDCAはまずは行動(Do)です。
やってみることが一番のポイントです。
具体的なビジョンがPDCAに与えるメリット
目標達成のため、優先順位をつけなければならない場面が出てきます。その際、ビジョン(目的)が具体的で、全社で共有されていれば、迷いは少なく現場側で決められることが多くなります。
「AかBか決めなければならない。」こんな場面を想像できませんか?
- 「目標達成のためには、部署売り上げに直結するA案だ。だが、初めての仕事、大きい案件、期間も長い・・・。 」
- 「どうしよう・・・ お伺いを立てる? もっと調べないと説明できないし・・・。エーイ、進めてしまえ・・・。」
- 「いや、やっぱり、やめておこう。なかったこと、いや、忘れたことに・・・。」
まさにマイナス思考、落ち込んだ、失敗した時、似たような経験がありませんか?
原因は、まさにケース・バイ・ケースでしょう。
中には、意思決定が遅い、ISOでいう内部コミュニケーションがうまくできていないといった場合もあります。この場合には、PDCA以前のマネジメントの問題や課題が隠れているようです。
PDCAは、ビジョン(目的)があると自力(現場)で確認(判断)し、回すことができます。
ビジョンが共有されていれば、各部署やチーム等小単位の現場でも同じ目的地(目的)を目指して進むことになります。山登りに例えると、全員頂上を目指しているが、登る道(ルート)は様々あるというイメージです。
逆にビジョンがないと、目的が「PDCAを回す」、つまり「ISOのためのISO活動」となってしまいがちです。当然、実務とは別の活動への道を進むことになり、現場では正直なところ余計な仕事と感じるようになる。これこそがISOの負の連鎖。
ビジョンがもやもやとしたイメージやスローガンから静止画へ、さらに色がついて動画となって動き出せば、大きな間違いにはならないと考えています。
例えばプロジェクトを立ち上げたとしても、必ず成功するわけではありませんが、行動して失敗しても、次につながる失敗であれば無駄な失敗ではない思うのです。
品質マネジメントシステムの用語の補足説明
ISO9000シリーズの品質マネジメントシステムに関する用語の説明をしておきます。
- 品質マネジメントシステム(Quality Management System)
- 品質に関する仕組み
- 品質に関して会社を指揮し管理するためのマネジメントシステム
- 品質
- 要求事項を満たす、満足する程度・度合
- 要求事項
- お客様が求める仕様など(顧客要求事項)
- 法令・規制上の要求
- 明文化されていない要求(暗黙の了解)を含みます
- 顧客満足
- お客様の期待が満たされている程度についてのお客様の受け止め方
- これを何で測るかは、会社やチームにより様々です。
- リーダーシップ
- 社長を含む全てのリーダーが、目的及び目指す方向を一致させ、メンバーが会社の目標達成に積極的に取り組むよう支援(サポート)すること
- 会社やチームの目標達成のためのメンバーの取組み、活動を支援すること
経営戦略の戦略ってなに?
戦略、元は軍事用語ですが、分かっているようで今一つ分かりにくく、説明がしにくい言葉、概念です。
最近は、戦略についての書籍が増えてきたようにも思いますが、経営について触れてはいるものの、世界で活躍している企業の例では、身近な会社の品質マネジメント(経営)について考えるには、あまりにも違いが大き過ぎます。
ここでは、戦略論の話をするわけではないので、「実際に行動するための計画とはどんなものか」という質問について、私がこれまでで一番分かりやすいと思う説明を紹介します。
一言でいうと「ビジョンが具体的にイメージされている計画」になります。
計画を実行している姿・形が1枚の絵になり、その絵が動き出す。これこそがビジョンであり、ビジョン実現のための段階を踏んでいく(階段を上がっていく)のが計画なのだと考えています。
例えば、「お客様が購入した商品を使って喜ぶ姿」のような具体的なイメージを共有するためにはできるだけシンプルで分かりやすいものである方がよいのです。
品質マネジメントシステムは、よい仕組みだと思いますし、決して難しいものではありません。経営、マネジメントができる経営者にとっては当たり前のこと、やってきた、やっていることがまとめられ、体系化されたものなのです。
初めてマネジメントや経営を意識するようになった方に、ツールとしても使えることをお伝えしたい。品質マネジメントを会社や自分を変えるチャンス、きっかけに利用してみてはいかがですか?
まとめ
ISO9000、品質マネジメントシステムを導入しているが効果が見えない、PDCAがうまく回っていない、マンネリ化している等の声が聞かれます。
せっかく取得したISO、会社や社員の成長のために積極的に利用したいものです。
ここでは、以下について説明しました。
- 不満の原因は本当にISOですか?
- ビジョンとは「何のために会社を作ったのか」
- 言葉は知ってるPDCA。実際の仕事、業務では何をする?
- 具体的なビジョンがPDCAに与えるメリット
- 品質マネジメントシステムの用語の補足説明
- 経営戦略の戦略ってなに?