質や品質管理(QC: Quality Control)、ISO9001なら品質マネジメントなど、普段何気なく使う言葉なのですが、「品質って何ですか?」、「品質管理について教えてください。」と聞かれると、答えにつまってしまいます。
品質や品質管理は、モノづくりだけでなく様々な業界や職種においても必要なことです。
ここでは、これから初めて品質や品質管理について学ぶ方を想定して、品質を優先する考え方について説明します。
品質優先とは
品質には設計や製造の品質がありますが、品質管理で製品のバラツキを小さくしようとする場合、担当者や一部の部署、あるいは、検査を厳しくしても、製品のバラツキが一時は小さくなることはあるかもしれませんが、その状態が維持されることはほぼありません。
製品の品質管理を徹底する場合には、モノづくりに関わる全ての方、会社であれば社長以下全社員で取り組む必要があります。
これは、製品の品質管理を徹底することが、製品の品質を優先するという考え方が徹底されていることと同じことだからです。
品質を優先するということは、
- 良い品質の製品(サービス)提供を、短期的な利益追求や売上げ拡大よりも優先するということ。
です。
製品の品質以外にも、
- コストを低減(コストダウン)する。
- 在庫を減らす。
- 納期を守る。
ことも、会社がビジネスを継続し存続するためには必要なことです。
しかし、製品の肝心の品質が悪いままでは、
- コストが上がる。
- 在庫が増える。
- 納期が遅れる。
という結果につながってしまいます。
また、製造(モノづくり)は、1人ではできません。会社内だけをみても各社員にはそれぞれの役割があり、その役割を全員が果たさなければ10点満点中10点の製品をお客様に提供することはできないのです。
例えば、作業A、作業B、作業Cという各々10点満点の仕事を、Aさん、Bさん、Cさんが担当するとします。
製品の品質は、3つの作業の足し算ではなく、次の様に掛け算で決まります。
- 作業Aは10点で満点(作業Aの品質を達成)ですが、これが9点だった場合、後工程の作業B、作業Cでは、作業Aの-1点を取り戻すことができません。
- 作業Bで、Bさんが作業Aのアウトプットが9点であることに気づけば、次の工程に流れず、不良品が流出することを止めることはできます。しかし、この不良品は手直しをするか廃棄するかなど、10点満点であれば発生しない作業(ロス)につながります。
- 例えば、作業Aから作業Cすべて9点だとすると、0.73(=0.9×0.9×0.9)つまり10点満点であれば7点の製品品質ということになってしまいます。
では、品質を上げるために、10点満点でいいところを11点を目指すべきかというと、次の理由によりこれは違うと考えています。
- 作業Aでは11点とれた場合、製品としての品質にプラスの影響があるのであったとしても、作業そのものが変わったということです。見方を変えれば、作業担当者が定められた通りの作業をしなかったということになります。
- 製品の品質向上や作業ミス削減に役立つことであるならば、作業を変える前に作業を変えることによる影響を事前に検討する必要があります。
つまり、製品品質を上げるためなら何をしてもよいということではないということです。
製造(モノづくり)は、1人でできるものではないということを理解していれば分かっていただけるのではないでしょうか。
品質管理を全社で推進していくためには、製品の品質や品質を優先するという考え方や目指す方向を全社員に周知・徹底させていく必要があります。品質を優先するという価値観を共有するということです。
ISO9001(品質)であれば、会社の品質方針や品質目標を社長が定め、これを各部署、各担当者にブレイクダウンして日々の活動に活かしていくということです。
品質を優先することを表す言葉として、品質至上といった言い方もあるようです。品質第一と言うと安全第一と競合してしまいますので、私は品質優先が分かりやすいと考えています。
マーケットインとプロダクトアウト
2000年代にはよく聞いたように思いますが、最近はあまり聞かなくなったマーケットインやプロダクトアウトですが、その考え方は今でも通用するものです。
品質を優先するという考え方の根底には、製品を提供する側の論理(短期的な利益追求や売上拡大など)を優先するのではなく、製品を購入し実際に使うお客様から見た論理を優先しようとする考え方があります。
マーケットインとは、お客様の論理を優先する考え方がマーケットイン、製品提供側の論理を優先する考え方がプロダクトアウトです。
品質管理の記事で説明した総合的な品質(QCDとPSME)をお客様の論理を優先する(お客様の立場に立つ)マーケットインで説明します。
お客様の側に立つとは、総合的品質(QCD+PSME)の意味が次の様になります。
- Q:お客様が求める品質
- C:お客様が支払うコスト
- D:お客様が求める納期
- P:お客様にとっての生産性
- S:お客様を含む関係者全員の安全とモラル
- M:お客様を含む関係者全員の安全とモラル
- E:お客様にとっての環境
つまり、全てをお客様本位でとらえ、これらの目標をお客様の論理で達成していこうとすることがマーケットインの考え方になります。
なお、安全については、人の命に係わることなので全てに優先されるため、安全第一という言葉が使われています。
品質第一という言い方もあるようですが、安全第一との無用の混乱を避けるため、品質優先と呼ぶようになっています。
まとめ
品質というと難しいイメージを持つ方が多いようですが、品質や品質管理は様々な業界や職種においても必要なことです。
ここでは、これから品質や品質管理について学ぶ方を想定して、品質を優先する考え方について以下の項目で説明しました。
- 品質優先とは
- マーケットインとプロダクトアウト