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QM-9100版品質マニュアル:プロジェクト・マネジメント規定(QM9100版)

品質マニュアルQM9100

ISO9100:2016版対応の「QM-9100版品質マニュアル」の関連規定の1つ、「プロジェクト・マネジメント規定(QM9100版)」の一例です。

ISO9100:2016要求事項「8.1 運用の計画及び管理」を、「プロジェクト・マネジメント規定(QM9100版)」としてまとめています。

実際の設計・開発に合わせて、より具体的な内容を規定や標準としてルール化していく必要があると考えています。

太字の部分は、ISO9100対応のため、追加・変更した部分です。なお、要求事項の注記の一部も含みます。
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1.目的

本規定は、品質マニュアル「8.1 運用の計画及び管理」について、当社における設計・開発に係るプロジェクト・マネジメントについてガイドラインを定め、当社の設計・開発、製造及びアフターサービス含むプロセスを効率的に運用することを目的とする。

2.適用範囲

本規定は、当社の設計・開発業務に適用する。

プロジェクト・マネジメントは、原則として技術部が主管となる。

3.プロジェクト・マネジメントに関する用語の定義

本規定に関する用語のうち、特にISO9100で追加された用語の補足説明を以下に示す。

用語 補足説明
模倣品(counterfeit part)
  • 模倣品とは、正規製造業者または承認された製造業者の純正品として故意に偽った無許可の品
  • いわゆるニセモノ、コピー品
クリティカルアイテム(critical items)
  • クリティカルアイテムとは、安全性、性能、形状、取付け、機能、製造性、耐用年数などを含めた、製品及びサービスの提供及び使用に重大な影響を与えるアイテムのこと
  • 定義では、「適切なマネジメントを確実にするため、特定の処置が必要なアイテム」
キー特性(key characteristic)
  • キー特性とは、部品などのバラツキが、製品の取付け、形状、機能、性能、耐用年数又は製造性に重大な影響を与え、バラツキを管理するために特定の処置が必要な属性又は特性のこと
  • 例えば、ある重要の部品の寸法については、公差範囲の中央値であることを求められる場合があり、この場合工程能力指数を高めて欲しいという要求になり、バラツキの要因を調査・対策することが求められるということ
  • [参考]工程能力指数とは:対象工程が、定められた規格内で、どの程度均一でばらつきを小さく生産できるかを表す指標
製品安全(product safety)
  • 製品安全とは、製品が人々への危害又は財産への損害につながる許容できないリスクを生じることなく、設計又は意図した目的を満足すること
  • 運航安全に直結する項目
別要求事項(special requirements)
  • 特別要求事項とは、顧客(組織)によって識別、又は、明確化された要求事項
  • 満たされない高いリスクを伴うために、運用リスクマネジメントプロセスの対象にしなければならない要求事項
はかせ
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上記用語が関連する要求事項については、以下のページをご参照ください。

4. 製品やサービスに関する要求事項との明確化(運用の計画及び管理)

要求事項を満たした製品及びサービスを提供し、品質マニュアル「6.計画(事業計画)」で決定したリスクに備え機会を活かすために必要な事項(ルール)について以下に示す。

運用の計画及び管理には、プロジェクト・マネジメントの考え方を適用する。

製品及びサービスに関する要求事項や必要な基準について、以下の通り設定する。

a)製品及びサービスに関する要求事項(製品仕様、サービス内容など)の明確化

b)プロセス、製品及びサービスの合否判定に関する基準の設定

c)製品及びサービスの要求事項への適合を達成するために必要な資源の明確化

d)b)の基準に従った、プロセスの管理の実施

e)次のために必要な文書化した情報の明確化、維持及び保持

f)クリティカルアイテムをマネジメントするために必要なプロセス及び管理の明確化。そのプロセスは、キー特性が識別されている場合の工程管理を含む。

g)運用の計画及び管理に対して影響を受ける組織機能の代表者の参加

h)製品及びサービスの使用及び保守(整備)を支援するためのプロセス及び資源の明確化

i)外部提供者から取得する製品及びサービスの明確化

j)不適合な製品及びサービスの顧客への納入を防止するために必要な管理の確立

はかせ
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上述のa)~j)について、社内の例示等で具体的に示した方がよいと考えています。

4.1 製品及びサービスに関する要求事項(製品仕様、サービス内容など)の明確化

製品及びサービスに対する要求事項の明確化には、必要に応じ以下の事項を考慮する。

  • 人の安全及び製品安全
  • 製造性及び検査性
  • 信頼性、アベイラビリティ及び保全性(整備性)
  • 製品に使用される部品及び材料の適切性
  • 製品に組み込まれるソフトウェアの選定及び開発
  • 製品の旧式化・枯渇(obsolescence)
  • 異物の混入防止、検出及び除去
  • 取扱い、包装及び保存
  • 使用されなくなった際の製品のリサイクル又は最終廃棄

4.2 プロセス、製品及びサービスの合否判定に関する基準の設定

プロセスを管理するための判断基準、製品やサービスの合否判定基準を下表に例示する。

製品の特性及び規定要求事項に応じて、設計検証や工程管理の補助として、統計的手法を用いることを考慮する。

設計検証
  • 信頼性、保全性(整備性)、製品安全など
工程管理
  • キー特性の選定及び検証
  • 工程能力の測定
  • 統計的な工程管理
  • 実験計画
検証
  • 故障モード・影響及び致命度解析(FMECA)

4.3 製品及びサービスの要求事項への適合を達成するために必要な資源の明確化

製品及びサービスを顧客に提供するために必要な設備や要員など

4.4 4.2の基準に従った、プロセスの管理の実施

4.5 次のために必要な文書化した情報の明確化、維持及び保持

  • プロセスが計画どおりに実施されたことを確かめることができる。
  • 製品及びサービスの要求事項に適合していることを実証できる。

4.6 クリティカルアイテムをマネジメントするために必要なプロセス及び管理の明確化。

ここでのプロセスは、キー特性が識別されている場合の工程管理を含む。

4.7 運用の計画及び管理に対して影響を受ける組織機能の代表者の参加

4.8 製品及びサービスの使用及び保守(整備)を支援するためのプロセス及び資源の明確化

4.9 外部提供者から取得する製品及びサービスの明確化

4.10 不適合な製品及びサービスの顧客への納入を防止するために必要な管理の確立

組織、顧客要求事項並びに製品及びサービスに応じて適切に、資源及びスケジュールの制約内で、要求事項を受容可能なリスクの下で満たすために、スケジュールどおり計画した順番で実施すべき事項を含め、体系化され、管理された方法で製品及びサービスの提供を計画し、マネジメントする。

  • これらの活動は、当社のプロジェクト計画、プロジェクト・マネジメントのことである。

(1)運用の計画の主なアウトプット

この計画の主なアウトプットを、「品質マネジメントシステム体系図」に示す。

この計画のアウトプットの1つは、特定の製品、サービス、プロジェクト又は契約に適用される。品質マネジメントシステムのプロセス及び資源を規定する文書化した情報を、品質計画書と呼ぶ場合がある。

(2)運用の計画の変更

運用の計画を変更する際は、計画変更により悪影響が生じないよう計画的に変更する。

悪影響が発生した場合には、変更により発生した結果をレビューし、必要な場合には悪影響を軽減する対策をする。

外部委託したプロセスも管理する。

(3)要求事項に対する作業の継続的な適合

要求事項に対する作業の継続的な適合を確実にするため、次の事項を実施する。

  • 一時的又は恒久的な作業移管を計画及び管理するためのプロセスを確立、実施し、維持する。
  • プロセスによって、作業移管の影響及びリスクを確実にマネジメントする。

なお、当社から外部提供者へ、又は、外部提供者から他の外部提供者への作業移管については、「品質マニュアル 8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理(外注・購買、調達、物流サービス)」参照。

当社のある施設から他の施設へ、外部提供者から当社への作業移管の管理については、「品質マニュアル 8.5 製造及びサービス提供(製造工程)」参照。

 

はかせ
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以下、「運用リスクマネジメント」、「形態管理」、「製品安全」、「模倣品の防止」は、ISO9100の追加要求事項です。

また、要求事項の中で「組織並びに製品」の「組織」は、自社のみでよいのか、協力会社などを含めたものなのか不明確なので「組織」としています。

5.運用リスクマネジメント

適用される要求事項の達成に向けた運用リスクを管理するため、組織並びに製品及びサービスに応じて適切に、次の事項を含むプロセスを計画し、実施し、管理する。

a)運用リスクマネジメントのための責任の割当て

b)リスクアセスメント基準(発生確率、影響の程度、リスクの受容等)の決定

c)運用を通してリスクの特定、アセスメント及びコミュニケーション

d)決定したリスク受容基準を超えるリスクを軽減する処置の特定、実施及び管理

e)軽減処置を実施した後の残留リスクの受容

なお、ここでいうリスクについて以下に補足する。

  • 運用リスクマネジメントは、本規定の製品及びサービスの提供に必要な運用プロセスに関連するリスクに限定し、適用する。
    • 「品質マニュアル 6.1」では、組織の品質マネジメントシステムの計画を策定する場合のリスク及び機会に取り組むことを示している。
  • 一般に、航空、宇宙及び防衛産業では、リスクは、一般的に発生確率及び結果の重大性の観点で表現される。

6. 形態管理(コンフィギュレーションマネジメント)

製品ライフサイクルを通じて、物理的及び機能的属性の識別及び管理を確実にするため、組織並びに製品及びサービスに応じて適切に、形態管理のプロセスを計画し、実施し、管理する。

このプロセスは、次の事項を実施する。

a)識別された変更の実施を含む、製品識別及び要求事項へのトレーサビリティを管理する。

b)文書化した情報(例えば、要求事項、設計、検証、妥当性確認及び合否判定に関わる文書類)が、製品及びサービスの実際の属性に整合している。

7. 製品安全

組織は、組織及び製品に応じて適切に、製品ライフサイクル全体で製品安全を保証するために必要なプロセスを計画し、実施し、管理しなければならない。

これらのプロセスの例は、次の事項を含む。

  • ハザード(hazards)の評価及び関連するリスクのマネジメント(5.運用リスクマネジメント参照)
  • 安全クリティカルアイテムの管理
  • 製品安全に影響を与える発生した事象の分析及び報告
  • これらの事象の伝達及び人々の訓練

8. 模倣品の防止

組織及び製品に応じて適切に、模倣品又は模倣品の疑いのある製品の使用、及びそれらが顧客へ納入する製品に混入することを防止するプロセスを、計画し、実施し、管理する。

模倣品防止プロセスには、以下の事項を考慮する。

  • 模倣品防止プロセスに関わる人々への模倣品の認識及び防止の訓練
  • 部品の旧式化・枯渇(obsolescence)の監視プログラムの適用
  • 正規製造業者もしくは承認された製造業者、承認された販売業者又は他の承認された提供元より外部提供される製品を取得するための管理
  • 正規製造業者又は承認された製造業者に部品及びコンポーネントのトレーサビリティを保証するための要求事項
  • 模倣品を検出するための検証及び試験方法
  • 外部情報源からの模倣品報告の監視
  • 模倣品の疑いのある製品又は検出された模倣品の隔離及び報告

9.記録の管理

プロジェクト・マネジメントに関する記録は、「品質文書管理規定(QM9100版)」により管理する。

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まとめ

ISO9100:2016版対応の「QM-9100版品質マニュアル」の関連規定の1つ、「プロジェクト・マネジメント規定(QM9100版)」の一例について説明しました。

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