管理責任者なら、ある程度はISO9000シリーズの要求事項について知っておきたいものです。
そこで、いまさら感はありますが、経営との統合を求める2015年版ISO9001の主な変更点について振り返り、品質マニュアルを使い変更点を確認します。
また、関連規定と合わせて、2015版ISO9001の変更点について改めて読み直すことは、現状とあるべき姿などを改めてみつめるきっかけにもなると考えています。
ここでは、ISO9001:2015の主な変更点について「わかりやすい品質マニュアル(ISO9001:2015対応版)」を例に説明します。
5 リーダーシップ
リーダーシップは、社長だけでなく部署長にも求められています。
また、内容がより具体的なものになっています。
5.1.1 一般
以下の様にc)とj)の内容が具体的になりました。
c)品質マネジメントシステム要求事項を当社の事業プロセスに統合させる。
- 品質マネジメントシステム要求事項を会社経営の仕組みの一部として機能させるということでです。
j)その他の関連する管理層(部署長)がその責任の領域においてリーダーシップを実証するよう、部署長の役割を支援する。
5.1.2 顧客重視
以下の様に、内容が具体的になりました。
社長は、顧客重視についてリーダーシップを発揮し、責任を果たすため、顧客のニーズ及び期待が満たされている程度について、顧客がどのように受け止めているか監視する。
顧客要求事項及び法令・規制要求事項を明確にして顧客との約束を守り、製品・サービスの品質や顧客満足に影響する「リスクへの対策」及び「機会を生かすための活動」に取り組み、顧客満足の向上を要員に常に意識させる。
6 計画
6でQMSの計画を作り(Plan)、8で実行(Do)し、9で確認(Check)、10で改善(Action)することになります。
6.1 リスク及び機会への取組み
マネジメントレビューで、リスク及び機会を明確にし、計画を立てます。
6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定
部署品質目標も同様の考え方です。
6.2.1 品質目標の確立
品質目標決定時の考慮事項が具体的に示されています。
a)品質方針と整合している(品質方針を実現する手段となっている)。
b)測定可能である(目標の進捗や結果が、数値やその他の方法で判断できる)。
c)適用される要求事項(製品に求められている品質、法令・規制など)を考慮に入れる。
d)製品及びサービスの適合、並びに顧客満足の向上に関連している。
e)監視する(目標の進み具合をチェックする)。
f)伝達する(目標で定めた内容や結果を、関係者に伝える)。
g)必要に応じて更新する(状況が変わった場合には、目標の内容を変更する)。
6.2.2 品質目標の計画
品質目標実施計画作成時の考慮事項が具体的に示されています。
a)実施事項
b)必要な資源(必要な要員、そのために使用する設備など)
c)責任者
d)実施事項の完了時期(それぞれの実施事項の完了予定時期)
e)結果の評価方法(実施した結果を評価する方法)
7 支援
組織の知識(会社のノウハウ)が追加されています。
7.1 資源
「7.1.6 組織の知識」とは、各プロセスを運用し、要求事項を満たす製品及びサービスを顧客に提供するために必要な知識のことです。
7.2 力量
力量の対象が「製品要求事項への適合」から、「品質パフォーマンス」に拡大されています。
7.3 認識
社長及び部署長には、a)からd)を認識させるために教育・訓練等を行うことが求められています。
a)品質方針
b)関連する品質目標(各要員・部署の仕事に関係する品質目標)
c)パフォーマンスの向上により得られる便益を含む、品質マネジメントシステムの有効性に対する自らの貢献(製品及びサービスの質の向上と品質目標達成ために、どのような役割を担っているか)
d)品質マネジメントシステム要求事項に適合しないことの意味(決められたルールを守らないと、どの様な問題が起こるか)
7.4 コミュニケーション
品質マネジメントシステムに関連する内部(社内)と外部(社外)のコミュニケーションについての要求です。
コミュニケーションの手段として会議体を利用する場合には、会議の開催ができない場合の代わりの手段を取ることが必要になります。
8 運用
8.3 製品及びサービスの設計・開発
- 「8.3.2 設計・開発の計画」のe)、g)、h)、i)が強化されました。
e)製品及びサービスの設計・開発のための内部資源及び外部資源の必要性
g)設計・開発プロセスへの顧客及びユーザの参画の必要性
h)以降の製品及びサービスの提供に関する要求事項
i)顧客及びその他の密接に関連する利害関係者により期待される、設計・開発プロセスの管理レベル
- 「8.3.3 設計・開発へのインプット」のd)、e)が強化されました。
d)組織が実施することをコミットメントしている、標準又は規範(codes of practice)
e)製品及びサービスの性質に起因する失敗により起こり得る結果
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理
要求事項の内容が、詳細化・強化されました。
- 8.4.1 一般(外注・購買の管理)
- 8.4.2 管理の方式及び程度(外注・購買の管理方法)
- 8.4.3 外部提供者に対する情報(外注・購買先との約束)
8.5 製造及びサービス提供(製造工程)
- 「8.5.1 製造及びサービス提供の管理」の製造及びサービス提供を、管理された状態で実行することについて、管理された状態に、g)が追加されました。
g)ヒューマンエラーを防止するための処置を実施する。
- 「8.5.3 顧客又は外部提供者の所有物」に外部提供者が追加されています。
- 「8.5.5 引渡し後の活動」とは、製品及びサービスに関連する引渡し後の活動(アフターサービス)に関する新しい要求事項です。
8.6 製品及びサービスのリリース
残すべき文書化した情報が明確になり、「合否判定基準を伴った、適合の証拠」が含まれるようになりました。
8.7 不適合なアウトプットの管理
- 「8.7.1 不適合なアウトプットの識別・管理」の対象が、製品、サービスのみならず、「アウトプット」で統一されました。
9 パフォーマンス評価
9.1 監視、測定、分析及び評価
- 「9.1.1 一般(確認・分析・評価の方法)」は、意図した成果を達成しているか否かを計るために監視・測定し、その結果を分析・評価して課題を明らかにすることです。
評価が新たな追加事項となりました。分析した結果の評価が重要ということです。
- 9.1.3 分析及び評価(分析と評価)
データを分析だけでは不十分、それを評価することが新たな要求となりました。
10 改善(業務の改善)
10.1 一般(改善の目的)
「ISO9001:2008年版の8.5.3 予防処置の手順」で、たとえば改善提案などはこの箇条に該当します。
10.3 継続的改善(継続的な改善活動)
品質マネジメントシステムの有効性に加え、「適切性」、「妥当性」が追加されました。
まとめ
管理責任者なら、ある程度はISO9000シリーズの要求事項について知っておきたいものです。
そこで、いまさら感はありますが、経営との統合を求める2015年版ISO9001の主な変更点について振り返り、品質マニュアルを使い変更点を確認します。
ここでは、ISO9001:2015の主な変更点について「わかりやすい品質マニュアル(ISO9001:2015対応版)」を例に以下の項目で説明しました。
- 5 リーダーシップ
- 5.1.1 一般
- 5.1.2 顧客重視
- 6 計画
- 6.1 リスク及び機会への取組み
- 6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定
- 6.2.1 品質目標の確立
- 6.2.2 品質目標の計画
- 7 支援
- 7.1 資源
- 7.2 力量
- 7.3 認識
- 7.4 コミュニケーション
- 8 運用
- 8.3 製品及びサービスの設計・開発
- 8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理
- 8.5 製造及びサービス提供(製造工程)
- 8.6 製品及びサービスのリリース
- 8.7 不適合なアウトプットの管理
- 9 パフォーマンス評価
- 9.1 監視、測定、分析及び評価
- 10 改善(業務の改善)
- 10.1 一般(改善の目的)
- 10.3 継続的改善(継続的な改善活動)