ISO9001の2015年版は、ISO9001:2026として2026年9月発行を目途に改訂作業が進められています。
実際に品質マニュアルや関連規定の見直しをはじめるのは、具体的な変更内容はわかりませんので、日本語版(JIS版)のISO9001:2026が発行されてから取り組む予定です。
とはいえ、ISO9001:2026の変更が気にならないわけではありません。
ISO9001は、2015年版では経営との統合やパフォーマンス発揮も求められており、2025年には気候変動に関する追補も出ていることから、より高いレベルの経営(マネジメント)を目指すことを求められていると考えています。
より高いレベルの会社(組織)を目指すには、経営層と社員の行動の判断に際し倫理的な面も求められてきます。
ここでは、品質マネジメントにおける倫理的行動について説明します。
倫理的行動とは
私の場合、倫理というと哲学や道徳の世界が思い浮かんできてしまうので、倫理的行動とは何かGoogle先生に聞いてみました。
看護関係のリンクが多いようですが、難しい言葉を使わずにいうならば、
- 社会人として生活するための一般的な決まりごと
となります。
会社の倫理的行動というと、
- 社会における会社に求められる行動の基準やルール(規範)
と考えています。
会社の行動基準やルールとなると、これらは社長(経営層)が決めることであり、社長自ら社員に周知・徹底していくことといえます。
倫理的行動を考えるヒント(事例)
倫理的行動について言葉で説明してもなかなか伝わらないので、とある事例を例に、倫理気行動について考えてみます。
とある会社で社有車について車を「結構派手にこすった」自損事故?があったそうです。
- リース車でしたが修理の際、運転者はこすったことが分かったはずだとはっきり言われたそうです。
問題なのは、社有車をこすったことではありません。
社有車をこすったことの報告がなかったことです。
管理部門から「こすったことが問題なのではなく、その後使う人が困るからこすったら連絡してほしい。」との主旨の全社メールを出したりしたそうですが、結局誰がやったかはわからないままうやむやに。
しかし、悪いことは続くもので、前回こすったリース車がリース切れで新車となり1か月もたたないうちに、またも「結構派手にこすった」自損事故?が発生したそうです。
前回同様管理部門もがんばったようですが、結局誰がやったかはわからないままうやむやに。
さて、あなたが次の立場ならどうしますか?
- 社有車を使うメンバーのいる部署長や部門長だったら
- 管理部門の長だったら
- 当事者(こすった本人)だったら
この他に、社長(経営層)の立場もありますが、正直なところ難しいかと思います。
しかし、難しいのであるならば、社長自ら行動(アクション)を起こさなければいけない状況であるともいえます。
つまり、倫理的行動は、社長(経営層)自ら取り組むことであり、リーダーシップが必要なことだとは思いませんか?
倫理的リーダーシップとは
倫理的行動をとるために必要な倫理的リーダーシップについて説明します。
倫理的リーダーシップについて、Google先生に聞いてみると、倫理的リーダーシップには次のような5つの原則があるようです。
適当な出典がみつからなかったので、私の思う倫理的リーダーシップを説明します。
以下、社長(経営層)の立場に求められる倫理的リーダーシップの原則です。

私の力量不足なのだとは思うのですが、倫理的リーダーシップの原則は各々別のものではなく、言語化できていないのですが共通するものがあるようです。
嘘を言わない
嘘を言わない、子供の頃に家や学校で教えられることです。
嘘を言わないことが求められるのは、次のように嘘を言うとどうなるかを想像するとわかりやすいと思います。
- 社長が嘘をつくと、社員は社長の言うことを信じなくなります。
- 社長の言うことを信じていなくても、信じているように振る舞うことはできます。
- 上から下は見えにくいものですが、下から上は見えやすいものです。
公平に接する
公平であることは説明しにくいのですが、贔屓(ひいき)しないということです。
社長(経営層)の言動は、事実に基づくものであり、社長が個人的にはと枕詞をつけて言ったとしても、社長が言ったという事実は変わらないということです。
社長と仲がよいといったことを社員が口にする場合には、(会社の規模にかかわらず)何か大きな問題が隠れているような場合が多いようです。
聞く耳をもつ(尊重する)
社長は孤独です。
- 代表取締役は、経営層の中でも孤独なのではないでしょうか。
わかりやすいのが人事評価です。
人事評価の結果、役職や給与を決定するのは社長なのですから、社長に何か聞かれたら、聞かれた方は即座に自分の不利益とはならない答えを探すのではないでしょうか?
上限関係のある当事者間では、何気ない質問と回答から、下位の者は言語化はできなくても、意外に様々な情報を得て感じているものです。
チーム(社員としてのコミュニティ)
社長(経営層)の行動が利他的(社員のため)なものでないと、社員が利他的な行動をするようにはならないものです。
よい例えではありませんが、社長が私利私欲を優先している場合、隠しているつもりでも社員には伝わってしまいます。
極端な言い方になりますが、上位の者が私利私欲を優先するのであれば、下位の者も自分のためを無意識の場合も含めて優先してしまうものです。
社長(経営層)の行動が利他的なものであることを社員に伝え、社員に求め、社員が実践するようになるには、社長(経営層)自らの日頃の行動の積み重ねが必要です。
誠実であること
誠実であることは、モラルがある(徳がある)あるいは、正直であることでもあります。
誠実な人であるとは、社長である前に、社会人として、個人としても誠実な人だということです。
逆説的な言い方になりますが、誠実でない社長(経営層)のもとで、誠実な社員が働き続けたいと思うでしょうか?
内部監査の7原則と倫理的行動
品質マネジメントにおける倫理的行動といってもイメージがつかみにくいので、倫理的行動が求められる内部監査の7原則と倫理的行動について説明します。
内部監査の7原則は、次の通りです。
- 高潔さ:専門家(監査員)であることの基礎
- 公正な報告:ありのままに、かつ、正確に報告する義務
- 専門家としての正当な注意:監査の際の広範な注意及び判断
- 機密保持:情報のセキュリティ
- 独立性:監査の公平性及び監査結論の客観性の基礎
- 証拠に基づくアプロ-チ:体系的な監査プロセスにおいて、信頼性及び再現性のある監査結論に到達するための合理的な方法
- リスクに基づくアプロ-チ:リスク及び機会を考慮する監査アプロ-チ
内部監査の7原則そのものが内部監査員や内部監査責任者がそうありたいと目指す目標のようなものだと考えています。
内部監査員として、各原則に反していないか判断する基準や実際にとる行動は、まさに倫理的行動そのものだと考えています。
内部監査の7原則についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
まとめ
ISO9001は、2015年版では経営との統合やパフォーマンス発揮も求められており、2025年には気候変動に関する追補も出ていることから、より高いレベルの経営(マネジメント)を目指すことを求められていると考えています。
より高いレベルの会社(組織)を目指すには、経営層と社員の行動の判断に際し倫理的な面も求められてきます。
ここでは、品質マネジメントにおける倫理的行動について、以下の項目で説明しました。
- 倫理的行動とは
- 倫理的行動を考えるヒント(事例)
- 倫理的リーダーシップとは
- 嘘を言わない
- 公平に接する
- 聞く耳をもつ(尊重する)
- チーム(社員としてのコミュニティ)
- 誠実であること
- 内部監査の7原則と倫理的行動

自社、自部署、あるいは、個人の立場で、倫理的行動とは具体的にどのようなことを意味するのか、意見交換してみるとよいと思います。