ISO9001の2015年版は、ISO9001:2026として2026年9月発行を目途に改訂作業が進められています。
実際に品質マニュアルや関連規定の見直しをはじめるのは、具体的な変更内容はわかりませんので、日本語版(JIS版)のISO9001:2026が発行されてから取り組む予定です。
とはいえ、ISO9001:2026の変更が気にならないわけではありません。
ここでは、品質マネジメントに関する気になることの1つ「品質文化」について、品質マネジメントとの違いと関係について説明します。
品質文化とQMSはおなじもの?
品質文化とQMSは同じものではありませんが、似て非なるものでもないと考えています。
むしろ、品質文化は、QMSを活用している上位のレベルのイメージです。
ISO9001の認証を例に品質文化のイメージを説明します。
次のような段階を経てレベルアップしていきます。
- 認証取得段階:
- 認証取得のために、ISO9001の要求事項を満足する品質マニュアルと関連規定を整備し、教育・訓練により周知し、QMSの運用をはじめます。
- 最初の更新審査(3年後):
- 内部監査とマネジメントレビューを利用して、品質マニュアルと関連規定と実務との整合性を高めたり、品質目標を設定しPDCAを回すことで、継続的な改善をします。
- 2回目の更新審査(6年後):
- QMSを活用したPDCA回せるようになってくると、QMSによる会社のパフォーマンス向上への取り組みをはじめます。
- 7年目以降:
- QMSによる品質管理が当たり前の仕組みとして定着をはじめます。この頃から品質文化といえる個人や組織としての品質の維持・向上を意識して日々の業務行い、継続的改善をしている状態へとなっていきます。
- ISO9001の要求事項を満たすための品質管理、品質マネジメントから、より高いレベルを目指した品質マネジメントを実践します。

品質文化とは、QMSを維持・改善していくことで、会社の品質管理がレベルアップした状態だと考えています。
QMSと品質文化の違い
QMS(ISO9001の品質マネジメントシステム)と品質文化の違いについて説明します。
品質マネジメントシステムとは
品質マネジメントシステムの目的は、製品の品質を管理し、品質を保証することといえます。
言葉としての品質マネジメントシステムの意味合いは、会社が提供する製品やサービスの品質を維持し、顧客満足を向上させるための仕組み(システム)であり、品質マニュアルや関連規定などのルールは体系化されています。
QMSの品質は経営とほぼ同じ意味であり、一般的な経営と違う点は次の通りです。
- 内部監査とマネジメントレビュー
- 文書化要求がある(品質マニュアルや関連規定など)
リスク管理、不適合や是正、継続的改善などは、QMSの認証を取得していない会社でも行っていることです。
品質文化とは
品質文化の目的とは、QMSと同じ様な品質を、自然に高めていく組織風土をつくることです。
- 会社のDNAとか、会社の文化ともいわれます。
言葉としての品質文化の意味合いは、品質とは重要なものであり大切なものでもあることを1人の社員から部署、会社全体で意識し、日々の業務で実践している状態のことです。
品質文化が定着しているような状態を列挙します。
- 製品の品質について、各社員が自分事としてとらえて、日々の業務をしている。
- 品質に関する問題は、個人や部署で隠さずに社内で共有し、前向きに改善することが当たり前となっている。
- 社長から部署、個人にいたるまで、品質についての共通認識がある(品質は重要で大切なものであると社内の誰もが認識している)。
QMSと品質文化との関係
QMSと品質文化とは別のものではなく、お互いに深い関係性があります。
ここでは、いくつかの視点で両者の違いや関係について説明します。
目的
QMSは、製品品質の管理(維持)と品質保証が目的です。
品質文化は、製品品質のより一層の向上(レベルアップ)や品質についての意識改革のイメージです。
形(表にみえるもの)
QMSは、品質マニュアルの組織図やQMS体系図、関連規定などに表された、製品品質を管理し、製品品質を保証するための仕組みであり、ルールです。
品質文化は、会社の価値観や行動様式(どの様な行動をするか)です。
取り組む手段・方法
QMSは、ISO9001の要求事項に適合したマネジメントシステム(会社の仕組み)をトップダウン(社長が決めて)で決め、品質マニュアル等を定めて導入します。
品質文化は、ルールではなく、品質は重要であるといった意識付けを行い、定着することでつくりあげていきます。
ISO9001の要求事項との関係
ISO9001は、QMSの要求事項(国際規格、JIS規格)です。
品質文化は、ISO9001のより高い運用を支える基盤(土台)に相当するものです。

すぐれた品質保証体制を人に例えると、ISO9001によるQMSの形(骨格)を備え、品質文化は強く柔軟な筋肉のイメージだと考えています。
まとめ
ISO9001の2015年版は、ISO9001:2026として2026年9月発行を目途に改訂作業が進められています。
ISO9001:2026になっても大幅な変更はないようですが、具体的な変更内容はわかりませんし、気にはなります。
ここでは、品質マネジメントに関する気になることの1つ「品質文化」について、品質マネジメントとの違いと関係について、以下の項目で説明しました。
- 品質文化とQMSはおなじもの?
- QMSと品質文化の違い
- 品質マネジメントシステムとは
- 品質文化とは
- QMSと品質文化との関係
- 目的
- 形(表にみえるもの)
- 取り組む手段・方法
- ISO9001の要求事項との関係

品質文化と品質マネジメントとは、同じものではありませんが、全くの別物でもありません。