ISO9001品質マネジメントシステムでは、パフォーマンス改善にQMSが役立つものであることが要求され、内部監査では監査対象部署や会社全体のパフォーマンス改善に役立つ情報を提供できる「業務改善に役立つ内部監査」を目標にしています。
内部監査員に対し、パフォーマンス改善については次の様に説明することで、内部監査が改善に役立つ良い機会となり、内部監査によるパフォーマンス改善につなげたいと考えています。
- パフォーマンス改善に注目する
- 注目したプロセスの課題を明らかにする。
- 改善点(のヒント)を見つける。
とはいうものの、内部監査に限った話ではありませんが、同じことを繰り返しているといつの間にかマンネリ化が進んでしまいます。
マンネリ化は対応を誤ると、マンネリ化から脱するためには、マンネリ化しなければしなくて済んだ苦労だけでなく長い時間も必要になります。マンネリ化を防ぎ、パフォーマンス改善に役立つ内部監査にしたいものです。
ここでは、内部監査のマンネリ化を防ぐ方法として、4Mやパフォーマンス改善に注目した取り組みについて説明します。
なお、本文中のISO9001やISO19001の用語や要求事項については、正確性よりも分かりやすさを重視した説明となっていますので、ご注意ください。
静かに進むマンネリ化
内部監査に限りませんが、「しかたない」や「これでいいか」と妥協するとマンネリ化が始まります。
内部監査責任者として、監査員を教育・訓練し、計画を立て、実施していても、思わず妥協したくなることはあります。振り返ってみると、自分自身で気づかないうちに妥協しそうになっていることもあります。
内部監査のマンネリ化の例を上げてみると、
- 内部監査員のマンネリ化(これは、個人差や経験の要素が強いです。)
- 被監査部署(部署長)のマンネリ化(品質目標を立て計画・実施し、継続的に改善できている部署から、形だけの取り組みすら怪しい部署でもマンネリ化は進みます。)
- 内部監査責任者のマンネリ化(内部監査計画や監査報告書がワンパターンとなり、内部監査を行うことが目的となっていきます。)
この様なマンネリ化が進むと、結果的に内部監査をやってもパフォーマンス改善に役立つ指摘が少なくなり、内部監査の形骸化が進む理由の1つになってしまいます。
4Mによる内部監査の見直し
内部監査員個人による進め方の違いはあっても、定型化(ワンパターン化)は避けられません。
内部監査のマンネリ化を防ぐために、モノづくりや品質管理で出てくる4Mを内部監査に当てはめてみると、次の様になります。
人(Man)
人は、内部監査員、被監対象部署(部署長含む対応者)になり、以下の視点があります。
- 責任と権限
- モチベーション
- 教育・訓練
- 評価体制
- 対人関係
機械(Machine)
機械は、リモート内部監査など次の様な新しい監査方法への対応も必要になっています。
- 内部監査のためのICT環境
- ICT環境を利用するためのICT機器の操作
- リモート内部監査のために事前に準備することや監査時の確認方法
材料(Material)
材料は、内部監査に使う道具(資料)になり、以下のものがあります。
- チェックリスト
チェックリストの形骸化は内部監査の形骸化にもつながります。
そこで、チェックリストについても、監査後に分かりにくかった、使いにくかったことを記録し、監査前に一通り見直すようにしています。
方法(Method)
方法は、 監査計画や監査方法(共通チェックリスト利用)になり、以下のものがあります。
- 監査計画
- 監査手順
リモート内部監査は、対面とは違った準備が必要ですし、監査時の会話の仕方や確認方法を事前に確認しておかないと、時間が足りなくなりがちです。
パフォーマンス改善に注目した内部監査
内部監査のマンネリ化は、マネジメントレビューを含めた会社全体の大きな品質マネジメントシステムに影響があります。つまり、QMSのリスクの1つと考えています。
例えば、「今年はいいや」と内部監査員の教育や準備を怠ると、当然のことながらマンネリ化した内部監査になりますし、内部監査結果も当たり障りのないものになってしまいます。
これは、マネジメントレビューへのインプット情報の1つである内部監査が、マンネリ化してしまうということです。
内部監査のマンネリ化は、QMSのリスクの1つ
内部監査のマンネリ化を防ぐために、マンネリ化した場合の問題(リスク)やマンネリ化しない内部監査のメリットについて説明します。
例えば、内部監査がマンネリ化してくると、
- ISOの活動に前向きに取り組んでいる部署は形式的な対応になりがちです。
- いまだISOを理解していない部署(いわゆる問題部署)はできていないことに気づかないままとなります。
いずれにしろこれらのことが続くと悪い影響が出てきます。
前向きに取り組んでいる部署の内部監査が形骸化してしまうのは、意外に思われる方もいるかと思いますが、部署単独で自律的な改善活動を続けることは簡単ではないためだと考えています。
マンネリ化した状態から抜け出すのは、思っている以上に難しいものです。少しづつ積み上げた継続的改善でもそれが崩れるのはあっという間です。
内部監査責任者が気を緩めずマンネリ化を防ぐことで、監査員もマンネリ化しないようになると考えるのは自分に甘い判断でしょうか?
マンネリ化を防ぐ視点としてのパフォーマンス改善
内部監査のマンネリ化(リスク)を防ぐために、パフォーマンス改善に注目します。
- 内部監査員は、ルールへの適合ではなく、被監査部署のパフォーマンスを改善する情報を見つけるという視点があります。
- 内部監査責任者は、被監査部署の監査結果をすべて総括し、全社的なパフォーマンス改善のための情報を見つけます。
パフォーマンス改善の情報を見つけることは、監査員だけでは難しいかもしれませんが、被監査部署の協力を得ることで実現の可能性が高まると考えています。
ここでいう被監査部署の協力を得るとは、良好なコミュニケーションを取れることであり、業務改善に向けて前向きのやり取りができると言う意味合いです。
さらに、パフォーマンス改善と合わせて、リスク(その反面としてのチャンス)について考えてみることも、業務改善に向けた取り組みにつながります。
ちなみに、ISO9001の箇条6.1(品質マニュアルの6.1)には、「改善を達成するために取り組む必要があるリスク及び機会の決定」とあります。内部監査を積極的に利用するという考え方が大切です。
まとめ
ISO9001品質マネジメントシステムでは、パフォーマンス改善にQMSが役立つものであることが要求されています。
内部監査では、監査対象部署や会社全体のパフォーマンス改善に役立つ情報(業務改善に役立つ内部監査結果)を提供できるようにしたいと考えています。
ここでは、内部監査のマンネリ化を防ぐ視点としての4Mとパフォーマンス改善について以下の項目で説明しました。
- 静かに進むマンネリ化
- 4Mによる内部監査の見直し
- 人(Man)
- 機械(Machine)
- 材料(Material)
- 方法(Method)
- パフォーマンス改善に注目した内部監査
- 内部監査のマンネリ化は、QMSのリスクの1つ
- マンネリ化を防ぐ視点としてのパフォーマンス改善