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パフォーマンス改善に取り組むために必要な内部監査員の力量

内部監査の活用と監査員教育

ISO9001品質マネジメントシステムでは、パフォーマンス改善にQMSが役立つものであることが要求され、内部監査では監査対象部署や会社全体のパフォーマンス改善に役立つ情報を提供できる「業務改善に役立つ内部監査」を目標にしています。

内部監査員に対し、パフォーマンス改善については次の様に説明することで、内部監査が改善に役立つ良い機会となり、内部監査によるパフォーマンス改善につなげたいと考えています。

  • パフォーマンス改善に注目する。
  • 注目したプロセスの課題を明らかにする。
  • 改善点(のヒント)を見つける。

ここでは、パフォーマンス改善に取り組む内部監査員に必要な力量について説明します。

なお、本文中のISO9001やISO19001の用語や要求事項については、正確性よりも分かりやすさを重視した説明となっていますので、ご注意ください。

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パフォーマンス改善に取り組む内部監査員の力量

内部監査でパフォーマンス改善に取り組もうとすると、内部監査員の力量を考慮する必要があります。

内部監査員は、被監査部署のパフォーマンス改善に役立つ情報を見つけて、被監査部署に説明できることが必要になるからです。

つまり、パフォーマンス改善(業務改善)につながる内部監査に必要な力量について、次のことがいえます。

  • 単にルールへの適合を判断するだけでは力量不足
  • 被監査部署の基本的な業務フローや実務について知っている。
  • 被監査部署の関連部署との関係(関わり)についてもある程度分かっている。

ここで、内部監査員の知識や力量の評価基準の1例を紹介します。

内部監査員の知識や力量の評価基準の例

内部監査員の力量評価項目の例を下表に示します。

レベル 評価基準
内部監査員の指導ができる。
リーダーとして内部監査ができる。
指示を受けながら内部監査ができる。
チェックシートを利用して記録を残せる。
力量不足(監査等の知識、会話によるコミュニケーション等)

以下、内部監査員として重要なスキルなどについて説明します。

内部監査員として重要なスキル(これがないとリーダーは任せられない)は、次の3つと考えています。

  • コミュニケーションが取れる(被監査部署、監査チーム、監査責任者)
  • 正確な記録を残せる(チェックリストをエビデンスとして使える)
  • 時間管理(時間内に終える。予想外の事態に対応できる。)

内部監査員としてあればよい知識は、ISO9000シリーズに関する知識で次の通りです。

  • ISO9001の要求事項の説明ができる
  • ISO規定類について説明できる
  • 内部監査に関する基礎知識(ハンドブックレベル)を知っている

内部監査を実施する際にあるといいのが観察力で次の通りです。

  • 全社的な視点で観察できる。
  • 対象部署について会話や記録、現場を観察できる。
はかせ
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観察内容についての説明は省きますが、ここでの観察力とは、話をしながらとか、対象の記録を見ながらとか、移動しながら現場を見るなどの機会を利用して様々なことを感じ記録に残すことを意味しています。

監査目的を達成できるかは人に依存

内部監査計画で監査目的を明確にしますが、監査目的を達成できるかどうかは、監査員、監査チームリーダー、監査責任者などの人に依存します。

「JISQ19011 マネジメントシステム監査の指針」の「7.1 一般」には、結構厳しいことが求められています。

「7.1 一般」をそのまま引用しても分かりにくいので、私が監査員に説明する場合の内容について説明します。

1つ目は、「内部監査の成否は、人(監査員、監査チーム、監査責任者)に依存する。」ということです。

例えば、信頼できない監査員や監査責任者の内部監査では、パフォーマンス改善のためだと言っても、被監査部署としては次の様に思われてしまうことが予想されます。

  • 素直に聞き入れることができない。
  • 何を指摘されるのかと警戒心の方が強い。
  • 指摘されなければよいと思い、その様に行動する。

2つ目は、「監査員の力量は、総合的に判断することが必要だ。」ということです。

例えば、内部監査員セミナーを受ければ監査員ができるようになると思っている監査員候補者や管理職もいるようですが、それは無理というものです。

ISO審査員講習を受ければ、要求事項に対する適合を判断する審査員はできるかもしれませんが、内部監査員講習を受けたところで、実際の内部監査は、実在の部署が対象なで、各社でも各部署でも様々だからです。

3つ目は、「監査計画や監査目的を考慮する。」ことで、当たり前のことです。

当たり前のことなのですが、内部監査を担当させてみると、いわゆる上から目線でISOの知識を織り交ぜながら監査を始める方もいますので、監査責任者としては見極めが必要です。

はかせ
はかせ

内部監査員としては不適切でも、事情により内部監査を担当させることもありますが、監査には必ず監査責任者として同席し、監査時のまとめ(最終会議)や報告書でフォローするようにしています。

監査員に求められる資質「7.2.2 個人の行動」から

「JISQ19011 マネジメントシステム監査の指針」の「7.2.2 個人の行動」から、監査員に求められる資質について説明します。

「7.2.2 個人の行動」には、倫理的である等含む専門家としての行動を示すことが望ましいとあるのですが、正直なところこの様なことができる人はいるかもしれませんが、実際に内部監査員にこのまま求めることはありません。

「7.2.2 個人の行動」をそのまま引用しても分かりにくいので、私が監査員に説明する場合、以下の項目を例にして、「業務改善に役立つ姿勢と、信頼してもらえる人間性(コミュニケーションがとれる)ことが重要」だと説明しています。

  • 信頼できる、誠実である、正直である。
  • 心を広くして別の考えを考慮する。
  • 外交的に振る舞え、接する。(話しやすい、相談しやすいという意味)
  • 観察力が高く、小さな変化にも気づく(指摘目的ではないこと)
  • 状況を察知し理解する。(察知力ですが、説明は難しいです)
  • 適応性が高く、状況に合わせた対応ができる。
  • 粘り強く話を聞き伝え、目的に集中する。(監査目的を忘れず、聴く姿勢)
  • 自立的に考えて、役割を果たす。(内部監査員として自分の頭で考えること)
  • 不屈の精神でミッションを達成する。(あきらめないこと)
  • 改善に対して前向きで、意欲的に学ぶ。(素直であること)
はかせ
はかせ

監査責任者としては、監査員の力量に合わせ、よいところ(力量)を伸ばすように心がけています。

監査員の知識・力量を獲得する手段「7.2.4 監査員の力量の獲得」から

「JISQ19011 マネジメントシステム監査の指針」の「7.2.4 監査員の力量の獲得」から、内部監査員の力量を判断する経験について説明します。

「7.2.4 監査員の力量の獲得」をそのまま引用しても分かりにくいので、私が考慮する内部監査員の経験について説明します。

内部監査員の経験には、次の通りです。

  • 内部監査員研修(社外、社内)の受講経験
  • 技術的、管理的、専門的職位での業務経験・年数
  • これまでのQMS(ISO9000シリーズ)に関連する分野や業種についての教育・訓練及び経験
  • 内部監査の実務経験
はかせ
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経験については参考にはしますが、経験があるから内部監査ができるわけではありませんので、内部監査員教育を通して知識を確認したり、内部監査のOJTの場を利用して力量の確認をしています。

内部監査員の評価基準:定性的評価と定量的評価

内部監査員の評価基準について、定性的評価と定量的評価について説明します。

「JISQ19011 マネジメントシステム監査の指針」の「7.3 監査員の評価基準の確立」には、定性的評価と定量的評価について記されています。

例えば、

  • 定性的評価:訓練(OJT)や職場での実務における行動(振る舞い)、知識・技能
  • 定量的評価:業務経験年数、業務ついての教育担当年数、内部監査員研修の実績(内容と件数)、内部監査の実績(内容と件数)

私の場合ですが、定性的評価と定量的評価については次の様に考えています。

  • 定量的評価は、あくまでも参考情報として扱います。
  • 定性的評価は、他部署(品質保証部以外)の監査員候補者の場合には、教育時の様子、訓練としてのチェックリスト作成であれば提出時期と内容、実際の監査でのOJT(指示したことの結果など)を考慮しています。

また、OJTを始める前に、本人にOJTの内容(こんなことをさせる予定)にいついて説明し、同意を得てからにしています。

OJT実施時は、監査に支障の出ないように事前準備と現場で対応できる準備をしておきます。

監査員、監査チームリーダー、監査責任者の力量

監査員の力量について考える場合、監査員、監査チームリーダー、監査責任者とで当然求めることが違ってきます。

これを図にすると下図のイメージになります。

内部監査員等に必要な力量のイメージ

内部監査員等に必要な力量のイメージ

図1 内部監査員等に必要な力量のイメージ

さらに、様々な業務内容に関する知識や経験も関係してきますが、基本は上図のイメージになると考えています。一言でいうと「総合的に判断する」ということです。

内部監査員としての力量

監査員の力量は、内部監査ガイドの内容は理解していることが前提で、以下のように考えています。

リンク先:

監査員としての力量は、次の通りです。

  • チェックリストを使い、コミュニケーションをとりながら記録を取れること。
  • 被監査部署の業務フローと関連規定について知っていること。

監査リーダーとしての力量

監査リーダーになると、さらに以下のことが必要になります。

  • パフォーマンス改善につながる指摘ができるように、言葉などに注意し発言すること。
  • 監査員に適時指示を出し、自ら確認できること。
  • 部署のパフォーマンス改善であっても、関連部署を含めた基本的な業務フローと関係規定類について知っていること。
  • 時間配分とトラブル対応ができること(ここでは、トラブルになりそうだったったら監査責任者に一報を入れること)
はかせ
はかせ

品質マネジメントシステムのパフォーマンスとしてしまうと、なかなか個々の監査員では対応が難しいと考えていますので、内部監査責任者が監査計画時に、具体的な確認項目として指示することが必要になると考えています。

内部監査員に必要な知識

内部監査員に必要な知識を大きく2つに分けて以下に列挙します。

ルールに適合しているかどうかを判断できる知識

  • ISO9001の規格要求事項についての知識:被監査部署からのISOに関する基本的な質問に答えられる。
  • 品質マニュアルと関連規定についての知識:関連規定の各業務の基本フローが分かっていて説明できる。

パフォーマンス(有効に実施され、維持されている)に関する知識

  • 関連規定と被監査部署と関連部署を含めた基本的な業務フローについて説明できる。
  • ISO9001に関する知識:2015版の時は組織の知識といった新しい言葉について自分の言葉で説明できる。
  • 品質マニュアルのQMS体系図について説明できる。
  • パフォーマンス改善に関する知識:部署毎、関連部署を含めた範囲、全社でのパフォーマンスについて説明できる。

改めて内部監査においてパフォーマンス改善を目的とする理由

最後に繰り返しになりますが、内部監査においてパフォーマンス改善を目的とするのは、内部監査で部署や全社的なパフォーマンス改善を意識することで、部署(会社)のパフォーマンス改善のための行動につながる情報(指摘)を、内部監査で提供することができるようになるからです。

これにより、マンネリ化を防ぎ、顧客満足を追求しながら継続的改善につながります。

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まとめ

「業務改善に役立つ内部監査」を目標にして、内部監査員に対し、パフォーマンス改善については次の様に説明することで、内部監査が改善に役立つ良い機会となり、内部監査によるパフォーマンス改善につなげたいと考えています。

  • パフォーマンス改善に注目する。
  • 注目したプロセスの課題を明らかにする。
  • 改善点(のヒント)を見つける。

ここでは、パフォーマンス改善に取り組む内部監査員に必要な力量について以下の項目で説明しました。

  • パフォーマンス改善に取り組む内部監査員の力量
    • 内部監査員の知識や力量の評価基準の例
  • 監査目的を達成できるかは人に依存
  • 監査員に求められる資質「7.2.2 個人の行動」から
  • 監査員の知識・力量を獲得する手段「7.2.4 監査員の力量の獲得」から
  • 内部監査員の評価基準:定性的評価と定量的評価
  • 監査員、監査チームリーダー、監査責任者の力量
    • 内部監査員としての力量
    • 監査リーダーとしての力量
  • 内部監査員に必要な知識
    • ルールに適合しているかどうかを判断できる知識
    • パフォーマンス(有効に実施され、維持されている)に関する知識
  • 改めて内部監査においてパフォーマンス改善を目的とする理由
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