「ISO9001とは何ですか?」、「品質マネジメントとは何をすることですか?」と聞かれることがあります。
相手によって言い方や文言は違ってきますが、次のように答えています。

品質マネジメントとは、「社長が自らのビジョンを実現するためにリーダーシップをとり、顧客を重視し、業務を改善し続けること」です。
品質マネジメントというとモノづくりや製造業に限った話ではありません。
また、ISO9001の認証取得・維持のため、何か特別なことを要求されているわけでもありません。
ここでは、これまで内部監査責任者として、あるいは、内部監査や内部監査員教育を通じて重視してきたことについて、自分の経験を振り返りながら説明します。
QMSを使う、使いこなすための内部監査
内部監査では、内部監査対象部署の業務範囲内で監査することになりますが、内部監査員としては、内部監査対象部署が品質マニュアルの組織図やQMS体系図の中でどの様な位置づけであることを意識することが必要になります。
「会社全体の中での位置づけを意識すること」を説明するために次のような主旨の説明をしています。
ISO9001の品質マネジメントシステムの要求事項に従い、品質マニュアルを作ると、会社の組織(組織図)と会社全体の仕事の流れ(QMS体系図)が体系化され、どの部署が何をしているのかを見える化することになります。
各部署の品質目標を計画的に達成していくことが、全社の品質目標達成につながります。
どの様に部署の品質目標を達成し、継続的に改善する手段として、PDCAを回します。
最初は小さい目標を短期間で達成することを目指します。この段階は、QMSを使う力(力量)を身に着けます。
小さいPDCAを回し継続的改善ができるようになってきたら、より大きな目標のPDCAを回していくことになります。この段階に入ると、QMSを使いこなす段階に入ったことになります。
内部監査で例えれば、QMSを使う力を身に着ける段階での内部監査は、品質マニュアルや関連規定を守りモノづくりを進めることができることです。
QMSを使いこなす内部監査では、より大きな目標や継続的改善のレベルを向上させるようなヒントや参考になる情報提供などが求められるようになります。
現場重視
内部監査は、品質マニュアルや関連規定などのルール、提示された文書や記録、現場などを観察した結果に基づき行います。
現場を重視する理由には、QMSを利用することで、部署のメンバーの力量を向上させ、部署全体の力量と成果を上げて、会社全体のレベルを向上させるためには、現場や現状を知ることがが不可欠だからです。
また、監査対象部署では、気づいてない、あるいは、解決できないような問題について、何が原因になっているかを観察するにも現場が重要です。
例えば、ルール通りに業務を行ていないことをみつけたところ、監査対象部署では、次のような説明(いいわけ)をはじめることがあります。
- 関連規定ではそのようなルールになっているが、現実的にはできない理由の説明
- わかってはいるが、多忙で周知や徹底ができない。
業務改善を目的とした内部監査では、内部監査員には次のようなことを求めています。
- 内部監査の場では、監査対象部署の立場に寄り添うこと
- ルールとの不整合については、表面的なことだけでなく、なぜこのような状況になっているのか、現場をよく見て話しを聞くこと
事実に基づく評価と判断
評価は程度決めること、判断は良否などを決めることです。
内部監査では、次のような場面に出会うことがあります。
- ルール通りではあるし、やってはいるし、程度は別にしてできてもいるが、以下のルールややり方などが有効なことを示す客観的な証拠がみつからない。
- 今のままでも悪くはないけれど、工夫や改善の余地がありそうだが、効率的ではないようですがと聞くのもおかしい。
この様な場合には、現場では当たり前すぎて気づいていないだけかもしれないので、そうしている理由を聞いたりすることもあります。
このような、ある意味探るような質問をする場合には、内部監査員には、個人の主観ではなく、事実に基づいて質問や確認をするように求めています。

内部監査対象部署の業務改善になることだから、個人の主観で質問したり指摘したりしてもよいと考えるのは間違いであることを内部監査員には、繰り返し説明しています。
内部監査責任者としての心がけ
内部監査責任者としては、どこまでできるかは別にして、
- せっかく認証を取得して維持しているQMSをツールとして使うことで、会社全体のパフォーマンスを発揮・向上させるような内部監査
にしたいと考えています。
QMS、品質マネジメントシステムの品質は経営の意味合いですし、マネジメントとは、自らみつけたり気づいたりした課題を自ら解決することを続けることです。
品質マネジメントは、個人の範囲でも、チームや部署、会社全体に適用することができます。

認証維持のためではなく、個人やチーム・会社などの組織のレベルを上げるツールとして使いたいものです。
ISO9001は、マネジメントのツールとしてよくできています。
内部監査員はチームメンバー?
内部監査員と内部監査をされる部署との関係は、監査をする側とされる側ではなく、監査対象部署のパフォーマンスを向上させるチームの一員や協力者でありたいと考えています。
このためには、内部監査員は内部監査対象部署と信頼関係とまではいいませんが、少なくともコミュニケーションがとれることが必要です。
業務改善のための内部監査の役割を大げさに言うならば、年に1回の内部監査の場が、業務改善のヒントや個人の力量や部署のパフォーマンス向上のための場になるイメージです。
業務改善、個人の力量や部署のパフォーマンス向上につながる品質目標を立て、PDCAを回していけるようになると、1年に1回の内部監査でも、改善されていることなどに気づくこともあります。
内部監査員も経験を積んでくると、内部監査をこなすだけでなく、個人差はありますが広く観察したり考えたりできるようになります。

内部監査員や内部監査責任者として、部署の改善(以前よりよくなっていること)に気づくと嬉しいものです。
大変だけれども、これからも頑張ろうと思い励みにもなります。
まとめ
品質マネジメントとは、「社長が自らのビジョンを実現するためにリーダーシップをとり、顧客を重視し、業務を改善し続けること」です。
品質マネジメントというとモノづくりや製造業に限った話ではありませんし、ISO9001の要求事項は何か特別なことを要求しているわけでもありません。
ここでは、これまで内部監査責任者として、あるいは、内部監査や内部監査員教育を通じて重視してきたことについて、自分の経験を振り返りながら、以下の項目で説明しました。
- QMSを使う、使いこなすための内部監査
- 現場重視
- 事実に基づく評価と判断
- 内部監査責任者としての心がけ
- 内部監査員はチームメンバー?