「生産性」というとモノづくりの話だろうとか、「生産性を上げる」というと効率化の話題の様なイメージが強いかもしれません。
生産性を日頃意識する機会はあまりないのかもしれませんが、次の様な疑問を持ったことはありませんか?
- 個人の生産性を上げるとはどういうことなのか?
- 生産性を上げたつもりが、実は下がっているのかも?
- そもそも生産性とは何なのか?
ここでは、チームや会社の生産性のイメージを横に置いて、個人の生産性の考え方や生産性向上のやり方について説明します。
同じ作業をする2人の生産性のエピソード
工場の生産性は、工数や製造数などで生産の目安(指標)を決め、生産状況を監視したり評価したりしています。
ここでは、個人の生産性について説明しますが、次の様なケースに心当たりはありませんか?
同じ作業を見ていて気づいたこと
AさんとBさんは、ちょうど同じ時期に同じ作業を担当しています。
作業を始めて1か月後では気づきませんでしたが、3か月を過ぎた頃から作業の作業の質と量が目に見えて違っていることに気づきました。
AさんとBさん、作業ミスは同じように発生しているのですが、3か月後の両者を比べると次の様な違いが見られます。
- Aさん:
- 相変わらずミスは無くならないのですが、急な割り込み作業があっても対応している。
- Bさん:
- ミスを無くそうと自分用の(自己流の)マニュアルを作り、作業前に時間を確保して手順を確認し、時間をかけて作業のチェックをしているが、ミスはなくならない。
ここで、この作業の生産性について次の様に考えます。
- 「生産性を上げる」とは、より短い時間で同じ作業を終えること
生産性に注目して、AさんとBさんを比べてみると、
- Aさん:
- ミスをするが、最初の頃より短い時間で作業を終えることができている。
- 割り込み作業にも対応できるようになっている。
- Bさん:
- ミスをする。
- 作業前の準備とか、自己流のチェックをして作業時間が増えている。
つまり、生産性を比べると
- Aさんは、より短い時間で生産できるようになっている。(=生産性アップ)
- Bさんは、より長い時間(事前準備・確認、作業のチェック作業)を使って生産している。(=生産性ダウン)
ということになってしまいます。
「守破離」という言葉がありますが、
- Aさんは、素直に教えられた手順を守り作業を続けている。ミスをすると注意して作業をしている様子。
- Bさんは、教えられた手順を自分用のマニュアル(手順書)を作り作業をしている。ミスをすると、自分用のマニュアルにチェック項目を追加し作業工数を増やしている様子だが、ミスを繰り返している。
余談ですが、現場用の手順には、そうなってきた理由があります。「自分は違う」と思うだけでなく主張する方もみかけますが、新しいことを始めるのに個人の力量差はそれほど大きな差があるわけではありません。守破離で言う守を素直に続けるか、続けないかの差の方が個人の力量には大きな影響が出ますので、まずは、素直にそれを受け入れることが重要だと考えています。
個人の生産性の定義
ここでは、個人の生産性を定義し、生産性が上がったり、下がったりすることはどの様なことなのか説明します。
生産性の定義
生産性を下図の様に定義します。
- インプット:ある作業に投入する(自分の)時間
- アウトプット:ある作業の結果(成果物)
図1 生産性の定義
インプットには、次の様に質と量という考え方もあります。
- 量:時間の長短
- 質:集中できる時間(1日の中でも限られた時間、午前中の3時間とか)と作業時間
ここでは個人の生産性を評価するために、インプットを時間とします。
生産性が上がる場合
生産性が上がるケースには、2つあります。
1つ目の生産性が上がるケースは、下図に示す場合です。
- インプットは同じ(同じ時間を投入している)
- アウトプットが増える(成果物が増える)
理屈としては生産性が上がるのですが、実際にこれを実現しようとすると難しい(分かりにくい)と考えています。
図2 生産性が上がる場合(その1)
2つ目の生産性が上がるケースは、下図に示す場合です。
- インプットを減らす(より短い時間でやる)
- アウトプットが増える(成果物は変わらない)
つまり、アウトプットとしての結果は同じですが、インプットの時間を減らすということです。
生産性を上げたい場合には、
- インプットの時間を減らす。
- しかも、10%とかではなく、半分にして同じ成果を得る。
ように挑戦すると効果的です。
図3 生産性が上がる場合(その2)
生産性が落ちる場合
下図は、生産性が落ちるケースです。
- インプットが増える(より長い時間が必要になる)
- アウトプットは変わらない(成果物は変わらない)
例えば、作業ミスを増やすためにチェック項目を増やした。しかし、作業ミスがなくならない場合を考えてみます。
インプット時間が増えて、作業ミスは相変わらずあるということなので、実は生産性が落ちていることになります。
感覚的には、「作業ミスの対策をしたので、生産性は上がったか、悪くても変わらないだろう。」と思いたいところですが、実は「生産性が落ちていた」ということは少なくないようです。
図4 生産性が落ちる場合
生産性が変わっていない場合
下図は、生産性が変わらないケースです。
- インプットを増やした(より長い時間を投入する)
- アウトプットも増やした(成果物も増やした)
例えば、作業ミスを増やすためにチェック項目を増やした。インプットの時間が増えるので、成果物の量も増やした場合を考えてみます。
インプット時間を増やした分、アウトプットも増やしたので、生産性は変わっていないと考えました。しかし、これは考えている以上に難しいことです。
作業の質(作業者のレベル)は変わっていないのに、新たなチェック項目が増えて、しかも時間が増えた分成果物の量を増やしたことになります。
感覚的には、「生産性は変わらないはず。」と思いたいところですが、実は「生産性が落ちてしまう。」結果になりそうです。
図5 生産性が変わっていない場合
個人の生産性を上げるには
次の様な悩みを持つ方は少なくないと思います。
- 毎日、なぜか忙しい。
- 手を抜いている訳ではないのに終わらない。
- 経験を積んでも、納期を守れない。
- 頑張るだけでは疲れてしまう。
こうした悩みがある場合、
- 自分の時間がない。
ということになりがちです。
では、自分の時間を作るためにどうするか?
個人の生産性を上げるのが1つの方法です。
具体的にどうするのか?
同じことをするために投入する時間を減らします。しかも、10%とかではなく、半減します。
成果を倍にするのは難しいと考えています。
しかし、投入時間を半分にするために、どうすれば半減することができるか自分の頭で考えて、実行することなら、何となくできそうな気がしてきませんか?
チームや組織の生産性を上げるためにも、まずは、個人の生産性を上げる。
そのために、インプットにかける時間(投入する時間)を思い切って半減する。
個人の生産性が上がれば、チームや組織の生産性向上につながります。
生き残るのではなく、生き抜くために、個人の生産性を上げることが必要だと考えています。
まとめ
「生産性」というとモノづくりの話だろう、「生産性を上げる」というと効率化の話題の様なイメージが強いかもしれません。
チームや会社の生産性のイメージを横に置き、日頃意識する機会があまりない、個人の生産性の考え方と生産性向上について以下の項目で説明しました。
- 同じ作業をする2人の生産性のエピソード
- 同じ作業を見ていて気づいたこと
- 個人の生産性の定義
- 生産性の定義
- 生産性が上がる場合
- 生産性が落ちる場合
- 生産性が変わっていない場合
- 個人の生産性を上げるには