ISO9001(JISQ9001)品質マニュアル類の改訂を進めたり、内部監査などを利用して会社全体の品質マネジメントシステムを改善するヒントになるのではと思い、JISQ9100を読み進めています。
ISO9100(日本語版はJISQ9100)は、航空、宇宙及び防衛分野向けの品質マネジメントシステム(ISO9001)のセクター規格です。
日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016
品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項
Quality management systems- Requirements for aviation, space and defense organizations
ここでは、ISO9100(JISQ9100:2016)とISO9001(JISQ9001:2015)との違いについて、「4 組織の状況」、「5 リーダーシップ」及び「6 計画」について説明します。
ISO9100の「4 組織の状況」
ISO9100(JISQ9100:2016)の「4 組織の状況」において、ISO9001(JISQ9001:2015)に追加されている内容を説明します。
ISO9100の「4 組織の状況」において、ISO9001に追加されているのは、「4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス」の4.4.1と4.4.2の2箇条です。
ISO9100の4.4.1の追加部分:QMSへの要求
ISO9100の4.4.1に追加されている部分を引用します。
組織の品質マネジメントシステムは、顧客及び適用される法令・規制上の品質マネジメントシステム要求事項も取り扱わなければならない。
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
ISO9100の品質マネジメントシステムには、お客様や適用される法令・規制上のQMS要求事項についても求められているということです。
お客様や適用される法令・規制上のQMS要求事項については、ISO9001では自社の判断による裁量の部分がありますが、ISO9100では具体的に要求されています。
ISO9100の4.4.2の追加部分:文書化要求
ISO9100の4.4.2に追加されている部分を引用します。
組織は、次の事項を含む、文書化した情報を作成し、維持しなければならない。
− 密接に関連する利害関係者の全般的記述[4.2 a)参照]
− 境界及び適用可能性を含む、品質マネジメントシステムの適用範囲(4.3 参照)
− 品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織全体への適用の記述
− これらのプロセスの順序及び相互関係
− これらのプロセスに関する責任及び権限の割当て
注記 品質マネジメントシステムに関わる上記の記述は、文書化した情報の一つの情報源にまとめることができ、また、品質マニュアルと呼ばれる。
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
ISO9100の品質マニュアルには、文書化した情報への要求が追加されています。
上記引用について補足します。
- 4.2 a:品質マネジメントシステムに密接に関連する利害関係者
- 4.3:品質マネジメントシステムの適用範囲の決定
ISO9001でも文書化要求はありますが、ISO9100では文書化要求される内容がより具体的に要求されています。
ISO9100の「5 リーダーシップ」
ISO9100(JISQ9100:2016)の「5 リーダーシップ」において、ISO9001(JISQ9001:2015)に追加されている内容を説明します。
ISO9100の「5 リーダーシップ」において、ISO9001に追加されているのは、次の箇条です。「5.1.2 顧客重視」と「5.3 組織の役割、責任及び権限」です。
ISO9100の「5.1.2 顧客重視」の追加部分
ISO9100の「5.1.2 顧客重視」に追加されている部分を引用します。
d) 製品及びサービスの適合並びに納期どおりの引渡しに関するパフォーマンスが測定されている、また、計画した結果が達成できない、又は達成できる見込みがない場合には、適切な処置がとられている。
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
私の理解で意訳すると、以下の全てを具体的に計画し実施することを要求しています。
- 製品及びサービスの品質を満足(適合)する
- (設計・開発から生産・出荷までの計画に沿った)納期通りの引き渡し
- 計画の進捗管理
- 計画通りに進まない場合の対応について事前に計画し、適切に対応する
新製品開発のプロジェクト管理について、明確かつ具体的にすることを求められているイメージです。
ISO9100の「5.3 組織の役割、責任及び権限」の追加部分
ISO9100の「5.3 組織の役割、責任及び権限」に追加されている部分を引用します。
トップマネジメントは、組織の管理層の中から特定の管理責任者を任命しなければならない。管理責任 者は、上記の要求事項に関する監督(oversight)を行う責任及び権限をもたなければならない。
管理責任者は、品質マネジメントの問題を解決するために、組織上の自由をもち、かつ、トップマネジメントへ制約なく接触できなければならない。
注記1 管理責任者の責任には、品質マネジメントシステムに関する事項について、外部と連絡をとることも含まれ得る。
注記2 管理責任者は、上記の責任及び権限をもつ限り、一人である必要はない。
引用先:「日本工業規格(日本産業規格) JIS Q 9100:2016 品質マネジメントシステム− 航空,宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項」より
トップマネジメントに関する追加要求です。
トップマネジメントに対し、管理責任者の責任や権限を明確にすることを要求しています。
また、管理責任者に対し、品質マネジメントの問題解決における組織上の理由やトップマネジメントに制約なしに接触できることを求めています。
責任や権限について、トップマネジメントに加え管理責任者に対しても具体的な要求をしています。
ISO9100の「6 計画」
ISO9100(JISQ9100:2016)の「6 計画」については、ISO9001(JISQ9001:2015)に追加されている要求事項はありません。
参考:日本産業標準調査会の「JIS検索」
JIS規格は、ネットで見ることができます。
日本産業標準調査会(JISC)の「JIS検索」のリンク先を紹介します。
検索の仕方は、以下のリンク先を参照してください。
まとめ
ISO9001(JISQ9001)品質マニュアル類の改訂を進めたり、内部監査などを利用して会社全体の品質マネジメントシステムを改善するヒントになるのではと思い、JISQ9100を読み進めています。
ここでは、ISO9100(JISQ9100:2016)とISO9001(JISQ9001:2015)との違いについて、「4 組織の状況」、「5 リーダーシップ」及び「6 計画」について以下の項目で説明しました。
- 目次ISO9100の「4 組織の状況」
- ISO9100の4.4.1の追加部分:QMSへの要求
- ISO9100の4.4.2の追加部分:文書化要求
- ISO9100の「5 リーダーシップ」
- ISO9100の「5.1.2 顧客重視」の追加部分
- ISO9100の「5.3 組織の役割、責任及び権限」の追加部分
- ISO9100の「6 計画」
- 参考:日本産業標準調査会の「JIS検索」