2023年6月、2023年版の「ものづくり白書」が公開されました。
正式名称は、
「令和4年度 ものづくり基盤技術の振興施策 第211回国会(常会)提出」
です。(以下、「ものづくり白書2023」といいます。)
国会提出文書のためか表題は和暦ですが、本文は原則西暦表記となっています。PDFで268ページあります。
コロナ禍によるモノづくりへの影響や、マネジメントレビューの参考になればと思い、「ものづくり白書2023」を読んでみて、私が気になったことをまとめています。
製造業に影響のある変化と重要な取り組み
モノづくりと製造業のビジネス環境は変化を続けています。
これらの変化により重要になってくる取り組みについて説明します。
モノづくり環境の変化により重要になる取り組み
「ものづくり白書2023」では、モノづくり環境の変化として以下の3点が挙げられています。
- ロシアによるウクライナ侵攻等による国際情勢の不安定化に伴う、サプライチェーン寸断リスクの高まり
- 脱炭素の実現に向けた世界的な気運の高まり
- 約11万人の人手不足、原材料やエネルギー価格高騰に伴う生産コスト削減・適正な価格転嫁の重要性増加
国際情勢の不安定化によるサプライチェーン寸断リスクは、ウクライナ侵攻だけではありません、ほぼ回復してきているようですがコロナ禍によるものも含まれていると考えています。
これらのモノづくり環境の変化により重要になってくる取り組みとして、以下の3つが挙げられています。
- 迅速な生産計画の変更・資源の再配分によるサプライチェーンの強靭化・生産能力の安定的確保
- サプライチェーン全体のカーボンフットプリントの把握
- 省人化・自動化による生産性の向上・省エネ化
これらを受けて、
- 個社単位での対策は困難・非効率であり、デジタル技術による、サプライチェーンに係る事業者全体の取組の可視化・連携が重要。
とつなげられています。
モノづくり環境の変化に対応するために重要な取り組みであることは理解できますが、これを20名規模のモノづくり会社に当てはめて考えた結果、思いついたことを以下に列挙します。
- 一般的に「個社単位での対策は困難・非効率」なのでしょうが、自社でもできることに取り組んでいるのではないでしょうか?
- 取り組みとして人を省く省人化や自動化はありですが、これは量産できるモノづくりの話であって、多品種少量短納期のモノづくりでは、量産とは違った景色となりますし、対応も変わってくるのではないでしょうか?
- 生産性の向上・省エネ化は何を指しているのか漠然としていて、モノづくりにおいて生産性の向上・省エネ化は当たり前のことで特別な対策ではないのでは?
と、疑問ばかりです。
「ものづくり白書2023」は、日本全体のものづくりについての白書なので、具体性に欠けるのはある意味仕方のない面もあると考えています。
サプライチェーンとかカーボンフットプリントについては、実際には大企業でもできることできないことがありますし、言葉だけが一人歩きしているように私は感じています。
製造業のビジネス環境の変化
モノづくりのビジネス環境の変化として以下の2点が挙げられています。
- 製造に関わる全ての工程を標準化・デジタル化し、サービスとして製造事業者に販売するビジネスモデルの誕生
- そのサービスを活用して、生産性・エネルギー効率性の向上を実現する製造事業者の登場
ビジネス環境による変化に対し重要となる取り組みには、以下が挙げられています。
- データに基づきサービスを改善し、顧客との関係の長期化、利益獲得手段を多様化
- 市場調査・企画から製造・物流・販売までの一連のプロセスを最適化し、競争力を強化
そして、これらの取り組みにより、
- サプライチェーンに係る事業者や消費者が、お互いにデータを共有できるようになったため、サービス事業者、製造事業者、消費者の利益向上を実現。
とあります。
では、小規模のモノづくり会社では、どういうことになるのでしょうか?
「できることをできる範囲で始めること」と私は考えています。
モノづくりIoTについては、以下の記事をご参照ください、
また、「ものづくり白書2023」からは外れますが、モノづくりに関わる人々を繋ぐ「ものづくりコミュニティ」MAKERS LINKの取り組みは興味深く見ています。
MAKERS LINKは、株式会社栗原精機の栗原さんのTwitterで知りました。
日本と海外の状況
日本と海外を比較してどうするのかと「ものづくり白書2023」を読み進めました。
「ものづくり白書2023」によると、日本と海外の状況は以下の様に分析されています。
- 日本の状況:
- 現場の高度なオペレーション・熟練技能者の存在によって、現場の部分最適・高い生産性に強みを持つ。
- 企業間のデータ連携・可視化の取組ができている製造事業者は2割程度。
- 海外の状況
- 海外の先進企業は、データ連携や生産技術のデジタル化・標準化に強みを持ち、企業の枠を越えた最適化を実現。
- 欧州では、サプライチェーンの最適化の実現を目的とする、製造事業者のデータ連携基盤が発足。
日本と海外の状況から、次のことが導かれています。
- 現場の強みを活かしつつ、サプライチェーンの最適化に取り組み、競争力強化を図ることが必要。
- GXの実現にも不可欠となる、DXに向けた投資の拡大・イノベーションの推進により、生産性向上・利益の増加につなげ、所得への還元を実現する好循環を創出することが重要。
こちらも、当たり前のことが書かれているとしか受け取れませんでした。
海外を含めたモノづくりであれば、私は次の様に考えています。
- ものづくりの主役は、かつて米国から日本へ、日本から中国へと言われていました。今では、大きな流れとしては中国からインド、そしてアフリカと、人口の増えている地域が主役になるようです。
- 日本のものづくりの国内回帰は、ビジネス規模(市場)を限定(選択)した結果という面もあると考えています。
- アジアにおける製造業の規模として、自国の市場が大きいという面もあり中国は大きい。
- 中国以外のアジア諸国に生産拠点ができて、拡大していると考えています。
では、小規模のモノづくり会社では、どういうことになるのでしょうか?
「できることをできる範囲で始めること」と私は考えています。
参考:「ものづくり白書」のリンク先
ものづくり白書を読んでの感想は、人により様々だと思います。
概要もありますので、以下のリンク先をご参照ください。
「2023年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)」
まとめ
2023年6月、2023年版の「ものづくり白書」が公開されました。
コロナ禍によるモノづくりへの影響や、マネジメントレビューの参考になればと思い、「ものづくり白書2023」を読んでみて、私が気になったことを以下の項目で説明しました。
- 製造業に影響のある変化と重要な取り組み
- モノづくり環境の変化により重要になる取り組み
- 製造業のビジネス環境の変化
- 日本と海外の状況
- 参考:「ものづくり白書」のリンク先