部署やチームの目標と個人目標との関係は、次の様なケースが多いと思います。
- 全社の品質目標を達成するための部署やチームの目標を決める。
- 部署やチームの目標を達成するために個人目標を設定する。
そして、個人目標には、次の2つを考慮して設定していませんか?
- 部署やチームの目標達成につながる目標
- 部下の力量アップを図る目標
目標を決定する際には、上長が与える場合もあれば、本人に考えさせて決めることもあります。
ここでは、とある建設業の会社に就職したばかりの新人Aさんを例に、個人の力量アップに注目して目標を設定した例を紹介します。
個人目標設定の進め方:新人Aさんの場合
品質目標の説明をしていた時のことです。新人Aさん(以下の吹き出しでは社員)のチーム目標は、作業完了日つまり納期を守ることでした。
まだ入社して間もないけれど、仕事には慣れてきた頃かな?
仕事で迷惑をかけたとか、失敗したなと思ったことはありませんか?
現場に行くときに忘れ物をして、会社を(車で)出発してから取りに戻ることがありました。実は、今も忘れ物をしてしまうことがあります・・・。
そうですか。忘れ物をするとどんな迷惑がかかってしまうのですか?
忘れ物を取りに戻らないとその日の作業を始めることができないので、取りに戻るしかありません。
忘れ物を取りに戻った時間分、1日の作業時間が減ってしまいます。
朝から叱られて仕事始めというのも皆さん嫌でしょうが、現場での作業時間は5時迄と決まっているから、取り返すのは難しいですね?
そう思います。・・・。
Aさんのチーム目標は作業完了日、納期を守ることなのですが 、納期を守るためにAさんがやらなければならないことは何だと思いますか?
現場に行くときに忘れ物をしないこと。
それはどうしてかな?
忘れ物を取りに行く時間が無駄になり、その日の作業が始められなくて先輩にも迷惑をかけてしまうから。
それでは、忘れ物をしないためにどうするの?
しばし考え込むAさん。
持ち物のリストを作って、出発前に忘れ物がないか確認します。
記憶に頼らずリストで確認するのはよい方法ですね。
そのリストはどこに置くの?
(沈黙)・・・。
出発までに必ず見るところ、寄る場所とかないのかな?
「トイレは行くけど」と考えこみ、「リストがあれば、Aさんが持ち物チェックしたかを確認できるようになるな」等々、先輩の声も聞きながら考えた結果、
現場に行く車に置きます。
と、こんな感じです。
個人目標はこのレベルからスタートしました。まずは、目標を立てて行動させることがポイントだと思います。
なお、社長さんも同席していましたが、意見は言わず笑っているだけでした。新人のAさんに「持ち物のチェックをすること」を習慣づけたかったようです。
「社員に考えさせる」と言うは易し、社長には「忍耐」も必要であると納得させられもした経験でした。
新人Aさんが忘れ物をしなくなってきたら
その後、新人Aさんはリストを使って忘れ物をしなくなってきたと聞きました。
出発前の準備、事前の準備をすることが当たり前になってくると会社としてもレベルが上がったと考えてよいと思います。
さて、持ち物の事前確認が習慣レベルになってきたら、次の個人目標に取り組みます。あせらず、階段を上がるように1段づつ進めるのがポイントです。
忘れ物については、上長の確認や注意喚起をする間隔を1週間、1ヶ月、3ヶ月といったように広げていきます。習慣になるまで確認を続けます。これを、教育・訓練記録に残せば、社内での横展開や次の新人教育の参考にすることもできます。
このように、品質マネジメントの目標管理はかなり使えると考えています。実際にやりたいことができるように目標管理を利用することがポイントです。
また、実際にやったことを記録に残せば、教育・訓練の記録にもなります。まずは、日報に残すことから初めるのもよいと思います。教育・訓練の記録を作る、書くことには苦手意識のある人も、おそらく毎日書いている日報に、誰に何を教えた、教わったかを残すだけでもよいのです。
「日報はムダだ」という声も耳にしますが、日報をつけるルール(習慣)があるならば、有効活用した方がよいと考えています。
記録の大切さや重要性については、いずれ気づくことがあると思いますが、記録を残すことは一朝一夕には身につきません。まずは、今やっていること(日報や定例ミーティングとか)を利用できないか考えてみてください。
いろいろと欲張り過ぎるのも別の問題になってしまいますが、もし「ISOのために何かをしなければ」と思うことがあれば、それを無理なく、ついでにできることはないか考えてみてください。
ISOは特別なことを求めてはいないのです。
まとめ
部署やチームの目標と個人目標との関係は、
- 全社の品質目標を達成するための部署やチームの目標を決める。
- 部署やチームの目標を達成するために個人目標を設定する。
となることが一般的かと思います。
ここでは、とある建設業の会社に就職したばかりの新人Aさんを例に、個人の力量アップに注目して目標を設定した例を紹介しました。
- 個人目標設定の進め方:新人Aさんの場合
- 新人Aさんが忘れ物をしなくなってきたら
また、「社員に考えさせる」と言うは易し、社長には「忍耐」も必要であると納得させられもした良い経験でもありました。