ISOやモノづくりの現場での取り組みの中に5S活動があります。
モノづくりの現場で徹底すべき、整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)のことです。
「5Sとは、整理・整頓・清掃を続け清潔にすることで、躾が身に着くこと」とも言えそうですが、まずは3Sから取り組むのがよいと考えています。
ここでは、5Sへの取り組み方を含めて説明します。
5Sとは
5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)のローマ字表記の頭文字をとったものです。職場において徹底すべき5項目で、モノづくりだけでなく様々な仕事の基本と言えることです。
ISO9001(品質マネジメント)の品質には、いわゆるモノだけでなくサービスを対象となっています。5Sについてもモノづくり以外、例えばサービス表などでも重要なキーワードとなってきています。
5Sの内容を下表に示します。
5S | 内容 |
---|---|
整理 | 必要な物と不要な物に分け、不要な物は捨てること。 |
整頓 | 必要な物を決められた場所(定位置)に置くこと。 いつでも取り出したり、使えたりする状態にしておくこと。 |
清掃 | 常に清掃をして、きれいな状態に保つこと。 |
清潔 | 整理、整頓、清掃を維持すること。 |
躾(しつけ) | 決められたことを正しく守る習慣が身につくこと。 |
5Sについて補足します。
整理、整頓、清掃までは、文字通りです。
清潔は、上表のとおり、整理・整頓・清掃を維持することです。
躾については、整理・整頓・清掃・清潔について、特に意識することなく実施できるようになることです。整理、整頓、清掃、清潔の各々について習慣化するまで続けることです。
5Sの躾については、躾ではなく、習慣のSとしたり、セーフティやスピードなどのSとする場合もあるようです。
5Sの躾は、習慣のSの方が分かりやすいと考えています。
5Sについては、「たかが整理・整頓、されど整理・整頓」というイメージがあります。
5Sの前に、まずは3Sの徹底から
5Sのすべてに初めから取り組み、徹底させることは意外に難しいものです。
そこで、まずは、5Sのうちの3S「整理、整頓、清掃」に取り組みます。
具体的には、次のことに取り組みます。
- 不要な物を捨てる整理
- 必要な物を定位置で管理する整頓
- きれいな状態を維持する清掃
3Sがある程度徹底された状態になると、次の様に残り2つのSについてもある程度できている状態になっている様です。
- ある程度清潔になっている。
- 整理、整頓、清掃、清潔をある程度のレベルを維持することのできる躾ができている。
5つのSの全てのレベルを高くしていくことが目標だとしても、これから5Sに取り組む場合や、なかなか5Sが徹底されていないレベルから取り組む場合には、まず「整理、整頓、清掃」の3つのSを徹底していくのが現実的な取り組み方になると考えています。
5S活動はレベルを高くすることよりも、継続すること、さらに続けて、習慣化するまで継続することが重要だと考えています。
まずは、整理・整頓から、以下、5Sについて詳しく説明します。
整理とは
5Sの始まりは整理から、「整理」とは、必要な物と不要な物を分け、不要な物を捨てることです。
現場を見回すと、
- 前回はいつ頃使ったのか分からない物
- 誰が管理しているものなのか分からない物
- 何に使うのか分からない物
がありませんか?
いつも見ている人は、見慣れた景色なので、うっかりすると見落としてしまいます。
必要な物と不要な物を分けるためにどうするか、一例を紹介します。
まずは、誰の物か、誰(部署)が管理する物かを明らかにします。
- 使われていない物や不要と思われる物に、ラベル(赤い養生テープ等、識別できれば十分です)を貼ります。
次に、以下のことを社内に周知します。
- 赤いテープの貼ってある物が必要な場合には、管理者名を書くこと。
- 記名がない場合は捨てること
1か月後に巡回して、次のことを確認します。
- 赤いテープに記名の無いものは廃棄品置き場に移動(移動できない場合は「廃棄品」と明記)する。
- 赤いテープに記名のある物の管理者に、何に使うか確認する。
- 必要な物は、保管場所を決めて移動する。
- 保管場所は、毎日、毎月、定期的に使う物を使う場所の近くとする。
定期的に確認して、不要品がないか、新しい物が増えていないかなどを確認する。
- 残すのか、廃棄するのか決まらない物や保管場所の決まらない物を公開(掲示)します。
ここまでやって、ようやく管理者が本気を出して取り組むようになるようです。
廃棄するか保管するかについては、現場にもよりますが、定期的に使うことはない、あると便利だといった類の物、半年使わない物は廃棄してもよいと考えています。
また、資源の有効活用の視点から、売れる物は売り、リサイクルできる物は分別してリサイクルします。
いざ廃棄しようとすると、「捨てるのはもったいない」、「こんな時にあると使える」と言いだす人もいますが、使わない物を保管するスペースは、いわゆるデッドスペースです。会社にとって利益にならないだけでは済まず、実は必要な物を置けない、保管できない等マイナスの影響があります。
現場のスペースや空間を無駄に使うことは、会社にとって損失になることを繰り返し教育していく必要があります。
これは、躾に含まれる内容かもしれませんが、捨てるのがもったいないと言うのであれば、無駄な物は買わない、買ったものは大切に扱うことを周知・徹底していくことも必要です。
整頓とは
整理で必要な物が明確になり、不要な物がなくなったら、次は整頓です。
「整頓」とは、いつでも誰でも、必要な物が必要な時に、すぐ取り出せるように定位置を決めて保管することです。
整頓は、定位置を決めて保管することが基本です。
以下、整頓のキーワードを紹介します。
定位置
必要な物を保管する場所が定位置です。
家に住所があるように、すべての「物」に番地までの住所(置き場所)を付けます。
社員がいかに効率的に動けるかという作業動線を考慮し、例えば、よく使う物や重量物は使用場所の近くに、使用頻度の低い物は保管場所をまとめるなどして、レイアウトを決めていきます。
定量
定量とは、物の有無と量が見た目ですぐに分かる状態にすることです。
工具や治具が定位置になければ、使用中であることが分かります。
使用する部品や消耗品などは、保管する最大量か最小量を決めると、現在の使用状態(残量や補充のタイミング)がすぐに分かります。
また、使用後不足していれば補充することを忘れないといった利点もあります。
定方向
定方向とは、物を置く向きを一定にすることです。
向きを揃えると、取り出しや戻す作業がスムーズになります。
また、定位置に違う物があった場合に気づきやすいという利点もあります。
表示
ここでいう表示の対象は、定位置に置く物です。
例えば、定位置に置くすべての工具に工具名を入れ、保管場所にも名前を明記します。
表示があれば、その物を普段使わない人でも、表示の着いた物を決められた保管場所から取り出したり、戻したりすることができます。
清掃とは
清掃とは、ゴミやホコリがない、機械や道具などが汚れていない、いわゆるピカピカの状態を維持することです。
清掃は、定期的に行います。
どのレベルまで清掃するかは、会社や現場により様々ですが、最初は大きなゴミから、最終的にはホコリや汚れを取るところまでありますので、段階的に進めることになります。
ゴミ、ホコリ、汚れの定義の一例を紹介します。
- ゴミ:両手で持てるもの(粗大ごみ、不要な小物など)
- ホコリ:吹けば飛ぶもの
- 汚れ:こびりついて取れないもの(油汚れなど)
掃除の方法は、掃除機、ほうきによる掃き掃除、雑巾がけなどがありますが、例えば汚れは、雑巾がけをしないと取れないので、毎日の掃除と週末や大掃除などをうまく組み合わせて実施するなどの工夫が必要です。
工場の掃除を例にすると次の様なイメージになります。
- 毎朝10分間全員で清掃する。
- 週5日なので、5つのエリアに分け、毎日1エリアづつ全員で清掃する。
清潔とは
ここでいう清潔とは、3S「整理、整頓、清掃」が維持されている状態のことです。
3Sを継続し、チェックする取り組みを続けることで、清潔を保つことができます。
3Sを定着させるための活動について紹介します。
全員参加の改善活動
3Sが定着するとは、全社員が3S「整理、整頓、清掃」が習慣のレベルになるということです。
そこで、3Sに改善活動を組み合わせて、改善提案を元に改善状況を毎月確認します。この時、全員が参加することがポイントです。
改善提案は誰が行ってもよいものですが、改善提案を実施する際には、「誰が、いつまでに、何をするか」を明確にします。この時、改善による効果も具体的に明記しておきます。
全員参加による毎月の改善活動では、次のことを実施します。
- 全員で社内(工場や事務所)を観察する。
- 観察のポイント(着眼点)は、不要物は無いか、掲示物は管理されているか(用済みのものが掲示されていないかなど)、危険な部分はないか、3Sが保たれているかなどがあります。
観察した結果は、毎月改善メンバーが集まり、今後の改善活動をどの様に進めるか意見を出し合います。
毎月の改善活動を利用して、社員が自発的に行動できるきっかけを作り、回していくイメージです。意識していないかもしれませんが、PDCAを回していることになります。
躾(しつけ)とは
5Sの最後は躾(しつけ)です。
正直なところ他の4つのSとは、趣の違う、異質さを感じる言葉です。
躾とは、決められたことを正しく守る習慣が身につくことです。
整理・整頓・清掃が習慣化し、清潔な状態が保たれることが、当たり前のこととして習慣化されているということになります。
3Sを徹底することによる躾にかんするメリットを紹介します。
前述の「清潔」のところで、「全員参加の改善活動」として全社員で取り組む例を紹介しています。「全社員で取り組む」ということの成果には、「全社員の気持ち(心)が一丸となる」ことが挙げられます。
経営理念を掲げ、品質方針や品質目標を設定し、最初は小さなことをやらせることから始まります。その後段階的に、会社の仕組みとして自発的にPDCAを回していけるように、様々な取り組みや教育・訓練を組み合わせて会社全体のレベル(力量)向上を図ります。
言葉では簡単そうに聞こえますが、「全社員が取り組む」行動は、一朝一夕にはできるようにならないというのが現実です。
全社員が取り組む様になるために役立った3S活動の例
「全社員が取り組むようになるために何をどうすればよいか?」との問いに答える1つの方法を紹介します。
それは、特別なことではありません。「一緒に行動する」ことです。
では、何を一緒にやるか、「清掃」で紹介した毎日10分間の清掃をした例です。
当初3S活動はしていたものの、社員に任せっぱなしでしたが、経営者が一緒に掃除をやってみると、次の様な興味深い変化が起きたそうです。
- それまで個人ごと様々だった3S活動への取り組み(熱意)が、一緒にやった時には全員が熱心にやるようになっていった。
- 当初は「やらされている」感じを持つ社員もいたのでしょうが、みんなが一生懸命になって掃除していれば、少なくともその場では頑張るしかなかったのかもしれません。
- 掃除を一緒にやることで、掃除を終えるときれいになったという達成感をその場の全員が味わうことになります。
これが、社員一人一人が同じ方向を向き始めるきっかけとなったそうです。
社員に経営者の思いを理解させるには、口だけの説明では何も変わりません。3S活動に一緒に取り組むことが、価値観(社長の思い)を共有するためにとても有効な手段になったそうです。
「たかが掃除、されど掃除」、経営者の思いを社員とも共有するには、一緒に行動することが有効なことは、確かなようです。
まとめ
ISOやモノづくりの現場での取り組みの中に5S活動があります。
5Sとは、モノづくりの現場で徹底すべき、整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)のことです。「5Sとは、整理・整頓・清掃を続け清潔にすることで、躾が身に着くこと」とも言えそうですが、行動に移すことは簡単ではありません。
まずは3Sの徹底から、以下の項目で説明しました。
- 5Sとは
- 5Sの前に、まず3Sの徹底から
- 整理とは
- 整頓とは
- 定位置
- 定量
- 定方向
- 表示
- 清掃とは
- 清潔とは
- 全員参加の改善活動
- 躾(しつけ)とは
- 全社員が取り組む様になるために役立った3S活動の例