新しい環境(職場)で仕事をする場合、言い換えると、働く環境が変わる時は意外に多いもので、誰もが大なり小なり経験しているのではないでしょうか。
環境が変われば、慣れる、必要なスキルを学ぶ、経験を積むという段階を踏んでいくことになります。
今の時代、新入社員はもちろんですが、転職して新しい会社で働き始める、大企業なら転勤や異動の場合も、程度の差こそあれ新しい環境で働く際には、次の様なステップ(段階)を踏んでいきます。
- 慣れる
- 必要なスキルを身に着ける
- 経験を積む
今までの知識や経験が役に立つこともありますが、それは、慣れて、必要なスキルを身に着けて、仕事の範囲を小さいことから広げていく中で参考になることです。
もっとも、慣れて、スキルを身に着け、経験を積んでいくスピード感は、業界や会社などにより様々なのも事実です。
ここでは、新しい環境で、最終的に戦力となり、個人的にも会社にも必要な人材となっていくために必要な段階(ステップ)があることを、内部監査員教育を例に説明します。
なぜ「前の職場では・・・」が避けられるようになるのか
転職した際のアドバイスとして言われていることがあります。
- まずはその職場に慣れること
- 人間関係に注意すること
- 自分のために経験を積む前にやることがあること
最近はあまり聞かなくなりましたが、
上司から「これは、こうするように」と言ったことを言われると、「前の職場ではこうしてました。」という枕詞から、はたから見ていると「自分のやり方が正しいのだから、例え上司に言われても、このやり方でやる」と主張しているようにすら見える方もいます。
これに対し、上司は何らかの対応をするわけですが、言っていることの理由が客観的なものであり、理解できるのであれば、「そういう場合もあるけれど・・・」と対応できますが、今の職場には関係のない新入社員(中途採用含む)の前の会社のやり方が正しいと言われても、そのやり方について情報が無い以上、評価しようがありません。
私はおそらく「超」がつくマイペースなようで、仕事はしてきたと思っていますが、評価は両極端に触れていたようです。ちなみに、自己評価は自己嫌悪になってしまいがちで、いまだに難しいと思っています。
さて、なぜ「前の職場では・・・」が嫌われるのか、言われた側の言葉(心の中でのつぶやき)を列挙します。
- 前の職場がどれだけすごかったのか知らないけれど、これからここで働くのだからまずは教えられたことをやればいいのに。なぜ、やらないのだろう?
- 上司に言われたことは指示だけど、指示に反論するの?
- 新しい職場に来て、前職はこうだったというのなら、戻った方がよいのでは?
そして、周りの人は、仕事を頼むだけなのに、いちいち反論を聞いてそれでもお願いして仕事を頼むことがなくなります。
この理由は単純なものです。忙しいからできると思うことを頼んでいるのに、都度新入社員の説明を聞いていては自分の時間がなくなり、面倒になってきます。結果、新入社員採用前と同じ状態に戻り、上司が無理に両者にやらせようとしても忙しくて無理ですと避けられてしまう。
これでは、職場に慣れることも人間関係(コミュニケーション)もできるはずがないのですが・・・。
そして、職場に慣れず、コミュニケーションも取れなければ、仕事から学ぶことも当然できなくなってしまいます。
会社に慣れ、人間関係を作り、経験を積むステップ
会社に慣れ、人間関係を作り、経験を積むステップについて、内部監査員を育てた経験を踏まえて説明します。
大きく3つのステップ(段階)に分けていますが、ステップの後半と次のステップの前半が重なるようなことはあっても、このステップの順序が逆になることはありません。
ここでは、20名規模のモノづくり会社の内部監査員を例に説明します。
自分の経験を積む(キャリアを築いていく)イメージがつかんだり、学びやすい教え方(カリキュラム)を考える場合のヒントなどになれば幸いです。
会社(自分の職場)に慣れる
内部監査員になると、会社のこと会社全体の大きな業務の流れを知ることが必要になります。
会社のこと(会社の価値観、社長が求めているもの)を列挙します。
- 会社は何を実現しようとしているのか
- 社員に何を求めているのか
- 具体的には、経営理念、ビジョン、品質方針、全社品質目標など
会社のルールを列挙します。
- 社員が守らないといけないルール
- 具体的には、就業規則、労働安全に関する規則など
具体的な業務に関するルールを列挙します。
- 品質マニュアル(組織図、QMS体系図)
- 関連規定類(営業、設計・開発、外注・購買、品質管理など)
なお、他部署のルールについては、内部監査を対象とする部署の関連規定で業務内容を知ることができます。
- 組織図とQMS体系図で部署の位置づけ、役割を大まかにつかむ。
- 各規定類では、業務フローで基本的な業務内容(プロセス)をつかむ。
スキルを育てる(力量向上を図る)
内部監査員として必須のスキル(力量)は、次の通りです。
- コミュニケーション(内部監査の基本は、聴くが70%、観察20%、質問10%)
- 時間管理(内部監査の進捗を管理し、定刻内で終わらせる)
- 記録を残す(記録を特定できる情報、聴いたこと)
テキストは、内部監査ガイドです。
1人で内部監査ができるようになったら、次の様なことをできるところから知り、学び、説明できるようにしていきます。
知識と監査チームリーダーとしての力量向上が主になります。
知識には、業務知識(部署内と部署間に関する業務があります)とISOの知識です。
- 実務の中で知っている範囲を深くしていく、広げていく視点が必要になります。
- 品質マニュアルとISO要求事項との関係
- ISO9000シリーズの要求事項や用語について、被監査部署からの質問に答えられる知識。
- 内部監査員としてあるべき姿についての知識
監査チームリーダーとしては、次の視点が必要になります。
- リーダーとして監査チームをまとめる。
- 被監査部署の品質目標達成、業務改善や力量向上などに役立つ視点で、良い点と改善点を見つける。
通常業務と違い、内部監査は一般的には年1回です。
内部監査員のリーダーやメンバーとしての機会を積極的に利用して、次回の内部監査までの1年間で、内部監査員としてのレベルアップや知識を増やすことを計画するとよいと思います。
内部監査責任者としては、どこまで手を差し伸べるか、どこから自分で歩いてもらうかは個別に判断しています。
経験を積む
内部監査員としての経験を積む。
上述の「スキルを育てる(力量向上を図る)」と内容が重なりますが、内部監査員としての経験は、次の様な段階になります。
- 見習い期間:監査の一部を担当する。
- 監査メンバー:内部監査を担当する
- 監査リーダー:内部監査チームを率いる。(人を使う)
内部監査からは離れますが、
- 2者監査
- 品質監査
- クレーム(不具合品や不適合品)の対応
などは、品質管理について学ぶよい機会となります。
以下について経験する機会があれば、QMSを学んだり、経営について知る良い機会となりますので、積極的に利用するとよいと思います。
- 内部監査責任者
- ISO事務局(審査機関と調整、審査対応)
- マネジメントレビューのインプット資料の作成
まとめ
新しい環境(職場)で仕事をする場合、慣れる、必要なスキルを学ぶ、経験を積むという段階を踏んでいくことになります。
今の時代、新入社員はもちろんですが、転職して新しい会社で働き始める、大企業なら転勤や異動の場合も程度の差こそあれ同様です。
今までの知識や経験は、慣れて、必要なスキルを身に着けて、仕事の範囲を小さいことから広げていく中で参考になることです。
ここでは、新しい環境で、最終的に戦力となり、個人的にも会社にも必要な人材となっていくために必要な段階(ステップ)があることを、内部監査員教育を例に以下の項目で説明しました。
- なぜ「前の職場では・・・」が避けられるようになるのか
- 会社に慣れ、人間関係を作り、経験を積むステップ
- 会社(自分の職場)に慣れる
- スキルを育てる(力量向上を図る)
- 経験を積む