業務改善に資する内部監査員の力量評価について考える

内部監査員の評価は会社により様々かと思いますが、内部監査員を各部署でローテーションできるような大きな会社ではなく、数名で毎年の内部監査を回していると、OJTを含む教育・訓練と各監査員の力量評価をどうしていくかが課題になってきます。

ここでは、内部監査員の力量評価について日頃思っていることを含め説明します。

内部監査員の教育・訓練については、以下にまとめています。

内部監査員教育:品質保証部の内部検査員の育て方
品質保証部に配属となり基本的な検査業務ができるようになった検査員の内部監査員教育・訓練を担当することになりました。検査員への内部監査教育・訓練における監査員の基礎知識、教育・訓練担当者としての着眼点、段階的なOJTについて説明しました。
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内部監査員の力量評価をどうするか

このブログでも公開している内部監査ガイドや品質マニュアルと各規定は、20名規模のモノづくりメーカーを想定して作っています。

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私は内部監査は業務改善のために積極的に利用すべきだと考えています。

各部署の業務改善に役立つような内部監査を行うためには、内部監査員には次のような力量が重要だと考えています。

  • 被監査部署(部署長や現場の方も含む)とのコミュニケーションがとれる(質疑応答というよりは、会話のキャッチボールができる)。
  • チェックリストや内部監査報告書に記載しない様な事象等についてメモを残せる。
  • 観察力(監査対応者だけでなく、現場の様子、記録等の管理状況など)
  • 見たこと、聞いたことを文字で表現できる文章作成
  • 計画した時間内で監査の目的を終わらせる時間管理
  • 不適合について説明できるISO規格や社内規定と実務の知識

どれも重要ではありますが、現実的には監査対象部署のレベル(力量)の差もありますので、バランスよく監査を行い、報告書にまとめることになります。

内部監査責任者が、すべての内部監査に同席することはできませんので、監査報告書や監査の様子を聞くことで各監査員の力量を監査ごとにまとめています。

毎年何かしら問題等は発生しますが、内部監査がある程度回り出すと各監査員の評価をどうするかが悩みの種になってきます。

内部監査員の評価について思うこと

客観的な基準で評価できればよいのですが、各人の長所・短所、やり方(進め方)、被監査部署のレベルにより監査員に求められることも違ってきます。

このため、一人一人の監査員の力量、被監査部署のレベル、チェックリストと監査報告書、監査後に内部監査員に監査の様子について聞く、必要に応じ内部監査に同席するなどして、最終的に内部監査責任者として総合的に判断して以下の基準で評価しています。

評価評価基準
内部監査員の教育ができる。
1人で内部監査の準備、実施、報告書作成、是正のフォローアップができる。
経験のある被監査部署の内部監査を担当できる。
記録の確認など具体的に指示されたことができる。
見習い(雰囲気に慣れる)

実際には、内部監査のOJTを進めるのにも段階があります。

最初に、内部監査員として必要な適性(あいまいで申し訳ありません)の有無を見る(コミュニケーション、記録を取る、文書にまとめる)。

次に、業務内容に関する知識(主として実務に関する知識、知らないことへの対応)

ここまでの様子を見て、本人のやる気というよりは、本人の意思を確認して現場経験を積む段階へと進みます。

以下、考えてはみたもののなかなか実行が難しい評価基準の考え方などについて説明します。

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内部監査員の力量評価の基準(考え方)

まず最初に考えたのが内部監査員に必要な力量と評価基準とは、具体的にどのようなものなのかということで、何とか形にしたのが以下の例になります。

内部監査員に求められる力量

品質マネジメントの7原則の様に、どれが上とか下とかいうものではなさそうです。

  • 内部監査リーダーのスキル・役割
  • ヒアリングスキル
  • 問題発見・課題形成力
  • 監査所見・報告書作成力
品質マネジメントシステムの7原則(ISO9001:2015)
品質マネジメントシステムの7原則の各々はどれが重要ということはないのですが、ビジョン(ありたい姿、イメージ)に向かって、顧客満足を高めるために継続的に改善していくことであり、取り組み方としてプロセスアプローチを使う仕組みだと考えています。

内部監査員の力量評価基準

内部監査員候補者、内部監査員、内部監査リーダーの力量評価基準です。

内部監査員候補者

  • 階層(役職など)、または、実務経験年数などを目安として候補者とする。
  • 実務(管理職)経験を通じて、内部監査の目的を達成できる。
  • 「個人の行動」についても概ね具備していると判断できる。
はかせ
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内部監査責任者として客観的に見て、実際の行動をみながら内部監査員としての適性があるか(最低限、監査を担当させることで問題おこさないか)を判断します。

内部監査員

内部監査員の資格認定基準には、つぎの様なものがあります。

  • 社外教育機関の専門講師による研修の受講
  • 規格の意図、要求事項の概要を理解している。
  • 内部監査の目的、内部監査の役割を認識している。
  • 内部監査の進め方を実感している。

なお、内部監査員候補者の中には、初め次の様な考えを持つ人もいますが、実際に同席したり体験したりすることで、被監査部署の業務改善に役立つ内部監査をする理由が分かるようです。

  • 外部講習を受ければ内部監査員ができる。
  • ISO(QMS)の知識があれば内部監査員ができる。

また、監査のパフォーマンス評価を考えた場合、次の様な基準があると考えています。

●監査基準の把握、監査証拠との比較による適合性評価できている
●不適合、改善提案を監査所見としてわかりやすく指摘、報告できている(指摘件数)
●内部監査メンバーとして、内部監査リーダーに協力して監査目的を実行できている

内部監査リーダー

内部監査員のリーダーの資格認定基準には、次の様なものがあります。

  • 内部監査員として3回以上の監査の経験がある。
  • 内部監査員レベルアップ研修の受講
  • 過去の監査活動における、適合性評価(不適合の指摘とフォローアップ実績)や改善提案(内容と件数)の実績
  • 「個人の行動」について、多くの項目を具備していると判断できる。
はかせ
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内部監査を2人で担当することから、リーダーとしての経験が始まります。

監査責任者としては、ある程度覚悟して任せることがポイントになると考えています。

また、監査のパフォーマンス評価を考えた場合、次の様な基準があると考えています。

  • 被監査部門の運用状況、課題・問題を含む適切な内部監査報告書が作成できる。
  • 被監査側の是正処置の有効性が評価できる(フォロー内容)。
  • 内部監査チームのリーダーとしてリーダーシップを発揮できる。
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内部監査員の力量チェックリストの要素

チェックリストの形にまでまとまっていないのですが、内部監査員に必要な力量について説明します。

判断基準は、次の3段階としています。

    • ◯:できる。
    • △:判断を求めることができる。
    • ×:指示待ち

内部監査員の力量チェック項目を以下に列挙します。

項目内容
規格の解釈
  • ISOの規格を説明することができる。
  • 条項を聞くと、該当する条項番号を探して示すことができる。
  • ISO9001/ISO14001/ISO27001だけではなく、ISO9004などのパフォーマンス系・技術系の指針も知っている。
内部監査員としての資質
  • 社内で見つけた不適合は、臆せず残らず報告することができる。
  • 監査途中で発生した監査側と、被監査側の見解の相違もきちんと報告することができる。
  • 監査は、経営者への自社業務の報告だ。という意識がある。
  • 監査をすることが、自社へ利益をもたらすものだと思っている。
監査技法
  • 規格と自社システムの適合性を監査することができる。
  • 業務の手順を現場で監査することができる。
  • 場合に応じたチェックリストや質問を作成することができる。
  • 監査結論を出すことができ、監査報告書を作ることができる。
  • 監査実施計画を作成することができる。
  • パフォーマンス監査・有効性の監査技法を知っている。
  • パフォーマンス監査・有効性の監査技法を使うことができる。
  • 不適合を摘出することができる。
是正処置
  • 是正処置について、「処置ができている・できていない」か判定できる。
  • 真の原因追求をすることができる。
  • ルールの変更を提案することができる。
  • 是正処置の有効性を監査することができる。
専門分野
  • 方針管理のあるべき姿を知っている。
  • システムを阻害しない、必要最低限の文書管理を知っている。
  • 自社に必要な法律の知識がある。
  • デジタルデータの取り扱いができる。
  • 自社に必要なマーケティングの知識がある。
  • 風通しの良い会議のあるべき形を知っている。
  • マネジメントレビューのあるべき形を知っている。
  • 教育システムのあるべき形を知っている。
  • 資源管理のあるべき形を知っている。
  • プロセスアプローチによる、プロセス管理を知っている。
  • 設計・開発の重要性を理解している。
  • 統計学的手法などのデータ分析のあるべき形を知っている。
  • アンケート調査だけではない、顧客満足度調査のやり方を知っている。
  • 形骸化しない内部監査のやり方のあるべき形を知っている。
  • マネジメントシステムのパフォーマンスを見ることができる。
  • もぐら叩きにならない、是正処置のあるべき形を知っている。
  • 予防処置のあるべき形を知っている。

なお、「・・・を知っている」については、その部署や会社全体の中でどのようにすればよいかが分かる、分からない場合にどうやってすすめられるか提案できることを想定しています。

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監査員の持つべき力量(個人的な能力)

監査員に必要な力量は何かという視点でまとめています。

力量補足
規格の知識ISOの規格(要求事項)、審査機関の規格解釈
監査基準の理解自社のルール、基準、規定、慣習など
的確な質問コミュニケーション能力
チェックリスト作成監査のポイント、重み付け
正確な監査報告書被監査側が理解できる、同意を得ている
親しみやすさ人間的な魅力
公平さ威張らない、卑屈にならない、私情をはさまない
言葉の分かりやすさ規格の言葉に頼らない平易な表現、実務で使っている表現
相手レベルに応じた対応臨機応変の対応
真面目な態度(信頼感につながる)

評価基準の考え方

最初から評価基準をきっちり作るのは意外に難しいものです。

次の様に、2段階で評価基準を作り上げていく方法もあります。

ステップ1(大きく、アバウトに)

評価考え方評価基準
水準を大きく上回る1段階上位職位に求められる水準に達している
水準を上回る求められる水準を明らかに超えて優れている
期待される標準的な水準求められる標準的な水準の範囲内
水準を下回る求められる水準に明らかに達しておらず、改善が必要
水準を大きく下回る求められる水準を大きく下回り、抜本的な改善が必要

ステップ2(ステップ1を回せるようになってから)

評価考え方行動評価実績評価
各評価項目について、職位に応じて求められる行動(水準)を安定してとることができていたかどうかの評価職位に応じた果たすべき役割や業務目標について、それがどの程度達成されたか(貢献できたか)についての評価
評価基準評価基準
水準を大きく上回る
求められる行動が確実にとられており、当該職位として特に優秀な能力発揮状況である。求められる水準を大きく上回る役割を果たし、当該職位として特に顕著な実績をあげた。(貢献をした。)
【1段階上位職位に求められる水準に達している】【1段階上位職位に求められる水準に達している】
水準を上回る
求められる行動が十分にとられており、当該職位として優秀な能力発揮状況である。求められる水準以上の役割を果たし、当該職位として顕著な実績をあげた。(貢献をした。)
【求められる水準を明らかに超えて優れている】【求められている水準、業務量の120%程度以上】
期待される標準的な水準
求められる行動がおおむねとられており、当該職位として求められている能力がおおむね発揮されている状況である。求められている水準の役割をおおむね果たし、当該職位として標準的な実績をあげた。(貢献をした。)
【求められる標準的な水準の範囲内】【求められている水準、業務量の120~80%程度】
水準を下回る
求められる行動が一部しかとられておらず、当該職位として十分な能力発揮状況とはいえない。求められる水準の役割を一部しか果たしておらず、当該職位としての実績(貢献)が不十分であった。
【求められる水準に明らかに達しておらず、改善が必要】【求められている水準、業務量の80~50%程度】
水準を大きく下回る
求められる行動がほとんどとられておらず、当該職位に必要な能力発揮状況ではない。求められる水準の役割をほとんど果たしておらず、当該職位としての実績(貢献)が極めて不十分であった。
【求められる水準を大きく下回り、抜本的な改善が必要】【求められている水準、業務量の50%程度以下】
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まとめ

内部監査員の評価は会社により様々かと思いますが、数名で毎年の内部監査を回していると、OJTを含む教育・訓練と各監査員の力量評価をどうしていくかが課題になってきます。

ここでは、以下の項目で内部監査員の評価について説明しました。

  • 内部監査員の力量評価をどうするか
    • 内部監査員の評価について思うこと
  • 内部監査員の力量評価の基準(考え方)
  • 内部監査員に求められる力量
  • 内部監査員の力量評価基準
    • 内部監査員候補者
    • 内部監査員
    • 内部監査リーダー
    • 内部監査員の力量チェックリストの要素
  • 監査員の持つべき力量(個人的な能力)
    • 評価基準の考え方ステップ1(大きく、アバウトに)
    • ステップ2(ステップ1を回せるようになってから)
はかせ

ISOを学ぶきっかけは、知り合いの社長さんからのISO認証取得の相談からでした。
品質マネジメントは、会社をよくするツールであり、チームやプロジェクトにも使えるよくできた仕組みです。

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